報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「連休最後の日」

2018-11-23 21:47:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日19:03.天候:晴 神奈川県横浜市中区 JR桜木町駅]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。3番線に停車中の電車は、19時3分発、各駅停車、南浦和行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は日本政府エージェントの善場さんや、BSAAの隊員さん達と共に豪華客船“正信”号の探索に同行した。
 同型の姉妹船である顕正号はバイオテロで沈没したものの、別のテロ組織において構造が全くそっくりな正信号を所有していることが分かり、BSAAがあっという間に接収した(もちろん、素人の私達には分からない、公式ゲーム並みの死闘が水面下であったのだろうが)。
 基本的にバイオハザードが発生していない船内での探索だったので、確かに顕正号よりは静かなものであったが、やはり所々にBOWや感染者が閉じ込められていた。
 その為、探索は比較的短時間に終わった。
 時間が余った為、せっかく横浜に来たのだから、少し遊んでから帰ることにした。

〔「お待たせ致しました。19時3分発、京浜東北線、横浜、川崎、蒲田方面、各駅停車の南浦和行き、まもなく発車致します」〕

 私や高橋はランドマークタワーの中で、もしもこういう所でバイオハザードが発生した場合の想定をしたイメージトレーニングを行ったが、高野君やリサは普通に観光やショッピングを楽しんでいた。

〔3番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 何度か駆け込み乗車があった為の再開閉を繰り返した後、ドアが閉まって電車が走り出した。
 私達が乗ったのは、桜木町駅始発の電車。
 その為、副線ホームに停車しており、発車の際は本線に入る為にポイントを渡り、電車がガクンと揺れた。

〔この電車は京浜東北線、各駅停車、南浦和行きです。次は、横浜です〕
〔This is the Keihin-Tohoku line train for Minami-Urawa.The next station is Yokohama.〕

 私達は先頭車の4人席に腰掛けている。
 ショッピングを楽しんだ女性陣の方が荷物が多いのは当たり前だ。
 その中において、リサは大事そうに小さなペーパーバッグを抱えていた。

 愛原:「リサ、その紙袋の中は何だい?」
 リサ:「シュシュ」
 愛原:「しゅしゅ?」
 リサ:「サイトーにあげるの。サイトー、ポニーテールだから」
 愛原:「ああ!シュシュか!」

 リサの口からポニーテールという言葉が出た瞬間、私はAKB48の歌を思い出した。

 リサ:「サイトーに似合うの見つけた。きっと喜ぶ」
 愛原:「おー、そうだな。ちょうど明日から学校だし、そこで渡せるな」
 高橋:「今のうちに担任に連絡して、没収の準備してもらいましょう」
 愛原:「おい!」

 東京中央学園はそこまで校則に厳しい所じゃなかったはずで、シュシュくらい大丈夫のはずだがな。

 高野:「このアホは置いといて、リサちゃんはいいセンスしてるから、きっと喜ぶよー」
 リサ:「むふー」

 得意げになると鼻息が荒くなるリサ。
 私には、どうしても斉藤さんが悶絶する姿しか浮かばないのだが。

[同日19:46.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 電車が都内を走る頃には、リサもウトウトしていた。
 高野君に寄り掛かるようにしていたから、リサにとってはお姉さんなのだろう。
 私も白い仕切り板に寄り掛かってウトウトしていたし、高橋はスマホでゲームに興じていた。

〔次は東京、東京。お出口は、右側です。新幹線、中央線、上野東京ライン、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです〕

 高橋:「おっと。先生、そろそろ東京駅ですよ」
 愛原:「おっ、そうか」

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 有楽町駅から東京駅までの駅間距離は短い。
 発車して、ものの1分かそこらで着いてしまう。

 愛原:「リサ、起きろ。降りるぞ」
 リサ:「ん……」

〔とうきょう〜、東京〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、神田に止まります〕

 私達は電車を降りた。
 寝ぼけ眼のリサを私は抱えるようにして降りる形になる。
 こういう駅では1分くらい停車していそうなものだが、ダイヤがギリギリなのか、すぐにアップテンポな発車メロディを鳴らし始めた。

〔「3番線から京浜東北線、各駅停車、南浦和行きの発車です」〕

 愛原:「よし。忘れ物は無いな」
 高橋:「大丈夫です」
 リサ:「ちゃんと持ってる」
 高野:「お友達へのお土産だからね、大事に持ってないとね」
 リサ:「うん」
 高橋:「ここからバスですか?」
 愛原:「そうなんだが、その前に何か腹に入れて行こう」
 高野:「そうですね。いくらお昼が遅かったからとはいえ、そろそろお腹の空く頃ですよ」
 愛原:「最後のバスまで、あと1時間くらいか。軽く食べれるものがいいな」

 まあ、東京駅構内なら色々あるだろう。
 私達は取りあえず、改札の外に出ることにした。
 先頭車に乗っていたということは、東京駅の北口ということになる。
 バス乗り場は丸の内北口だが、食べる所があるのは八重洲側というイメージがある。
 もっとも、実は自由通路くらいあるから、反対側に行っても大丈夫だ。

 愛原:「リサは何か食べたいものある?」
 リサ:「うーん……カレー」
 愛原:「カレーかぁ。それなら確かに手っ取り早いな」
 高橋:「そう簡単にあります?」
 高野:「あるよ。ググったら出て来た」
 愛原:「おー、さすがは高野君だ」
 高野:「八重洲北改札から比較的近いですよ」
 愛原:「それって丸の内側への連絡通路も近いってことだな。よし、そこにしよう」
 高橋:「カレーくらい俺が作りますよ」
 愛原:「それはまた後な」

 私達は高野君について行くことにした。

 高橋:「後ろ姿がエイダ・ウォン」
 高野:「あ?何だって?」
 愛原:「褒め言葉だろ?」
 高橋:「どうっスかね」

 高橋は肩を竦めた。
 エイダ・ウォンは“バイオハザード”シリーズの中でもプレイヤーキャラとして操作できる。
 つまり主人公側だから、けして悪役ではない。
 ただ、実年齢が【お察しください】。
 多分、高野君はそこがイラッと来た点だな。
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“私立探偵 愛原学” 「正信号を探索せよ」 5

2018-11-23 09:55:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日13:00.天候:晴 豪華客船“正信号”船内図書館・蔵書室]

 私はリサがある場所に見入っているのに気がついた。
 話し掛けようとすると、先に高橋が話し掛けて来た。

 高橋:「先生、これ何でしょうね?」

 それは床に落ちていた鍵。
 拾い上げてみると、それは何だか見覚えがあった。

 善場:「それは客室の鍵ですね」

 とのこと。
 それは重要ではない。
 何故ならBSAA隊員達は既にマスターキーを手に入れている為、客室の鍵なら基本的に全て開けられるからだ。
 実際、この船における顕正号では私達が泊まっていた部屋の鍵が開いていたのも、彼らがマスターキーで開けたからである。

 高野:「先生がお持ちのと同じカードキーもありますね」

 机の上にはカードキーが置いてあり、それは今まで黄色い金庫やこの部屋のドアを開ける時に必要なものと酷似していた。

 善場:「これはこちらでお預かりします」

 もし私が持っているのと同じカードキーなのだとしたら、もう私の出る幕は無いということだ。
 しかし、リサが見つめていたのは違った。

 愛原:「リサ、どうした?」
 リサ:「何だか、私に似てる……」

 それは壁に掛けられた肖像画。
 リサは自分に似ていると言ったが、パッと見、私はそう見えなかった。
 年恰好は似ているだろうが。
 黒髪の美少女がモナ・リザ風に座って微笑を浮かべている絵。
 髪はセミロングがウェーブが掛かっている。

 善場:「これはリサ・トレヴァーですよ!」

 善場さんが驚いたように言った。

 愛原:「ええっ!?」
 善場:「昔、オリジナルの『リサ・トレヴァー』がアメリカのアンブレラの施設にいた頃、これをステンドグラスにしたものが発見されました。まさか、そのオリジナルの絵画がここにあったなんて……」

 善場さんの話によると、アンブレラに捕まる前、まだ普通の少女だった頃を描いたものであるとのことだ。
 こんないたいけな少女を捕まえて実験に使うとは、何たる非道!
 しかし、私が他に気になった絵もあった。

 愛原:「他にも少女を描いた絵がありますが、あれは何でしょう?」
 善場:「ナタリア・コルダとエヴリン……!」
 愛原:「こちらも化け物か何かの化身ですか?」
 善場:「いえ。ナタリア・コルダ……今はBSAA北米支部のバリー・バートン顧問に引き取られているので、ナタリア・バートンでしょうか。こちらは特に心配ありません。ただ、エヴリンは……」

 善場さんが言い終わらぬうちに、また電話が掛かって来た。

 善場:「すいません」
 愛原:「いえ……」

 善場さんが電話に出ている間、リサが言った。

 リサ:「エヴリンは家族が欲しくて暴走したコだよ」
 愛原:「えっ?」
 高橋:「正確には最初からラスボスとして作られた、人型クリーチャーですよ」
 愛原:「そうなのか。詳しいな」
 高橋:「ゲームに出てきましたから」
 愛原:「ゲームって……」

 もはや何が何だか分からん。

 善場:「失礼しました。上司命令で、愛原さん達は速やかにここを離れるようにとのことです。御協力ありがとうございました」
 愛原:「一体何が?」
 善場:「安全の為です。この船には、まだ他にもBOWが潜んでいる恐れがあります」
 高橋:「一応、こっちには『BOW発見機』があるけどな」

 高橋はリサを見て言った。

 善場:「そういう問題ではありません」
 愛原:「そりゃそうだ。さすがに霧生市のバイオハザードの再来は勘弁さ。さっきのウーズみたいな新種のクリーチャーがやってこられたら、さすがにかなわんよ」
 高橋:「はあ……」
 高野:「『1匹出たら30匹』って言うしね」

 と、高野君は高野君で某害虫みたいなことを言う。

 善場:「それでは引き上げましょう」

 私達は船の外へと向かった。

 愛原:「それにしても、オリジナルのリサ・トレヴァーの肖像画がどうしてあの部屋にあったんだろうな?」
 高野:「アンブレラと何らかの関わりのある船なんでしょうね」
 善場:「現在、アンブレラは『悪の製薬会社』ではなく、『民間軍事会社』として再スタートしています」
 愛原:「存在してんの!?」
 善場:「はい。但し、日本に支部はございません。国民感情もありますので」
 高橋:「民間軍事会社かよ。そりゃまた何でだ?」
 善場:「生き残りの有志が、『製薬企業時代に犯した罪を償う為、バイオテロに立ち向かう』という目的で設立したそうです」
 高野:「自分達の蒔いた種を、自分達で摘みに行くってことか」
 善場:「アンブレラが開発したウィルスやBOW、或いはそれらの製造方法が世界各地のテロ組織に渡ってしまったので、その罪滅ぼしの為ということです」
 高橋:「その割にゲームん中じゃ、クリスにケツ拭かせてたけどな」
 リサ:「私もやったー」
 高橋:「お前、そこまで行ったのかよ!?」

 BOW、BOWを倒すゲームに興じるの図を想像して、私は吹いてしまった。

 善場:「今回ご協力頂きました件について、後ほど報酬の話をさせて頂きます」
 愛原:「了解しました」

 まあ、口止め料も含まれているだろうな、その中に。
 ゲームや映画だと外に出られず、そこでまた何か非常事態でも発生して、それに対処させられるような展開が予想されるところだが、実際はそんなことは無かった。

[同日13:30.天候:曇 神奈川県横浜市中区 横浜港大さん橋]

 船を降りると、私達はすぐに迎えの車に乗り込んだ。

 愛原:「このまま事務所まで送ってくれるんですか?」
 善場:「そうですねぇ……。それもいいんですけど、どこか寄りたい所があればそこで降ろしますよ?」
 高野:「それじゃ、桜木町駅付近で降ろしてもらうのはどうかしら?」
 愛原:「えっ?」
 高野:「せっかく横浜まで来たんだし、少し遊んでから帰りましょうよ。なかなか滅多に来ない所じゃないですか」
 愛原:「まあ、そうだな。もうお昼時も過ぎたし、どこかでランチでもしたい」
 善場:「了解しました。それなら、ランドマークタワーの前にしましょうか。テナントで、色々とお店も入っていることですし」
 愛原:「すいません。じゃあ、そこでお願いします」

 私達を乗せた車は桜木町の横浜ランドマークタワーへと出発した。
 立入禁止のゲートを過ぎると、マスコミ達が一斉に車に向かってシャッターを切ってくる。

 愛原:「マスコミが……」
 善場:「船内での取材が中止されたので、唯一民間人で調査が許された愛原さん達をせめて……ということみたいですね」
 愛原:「後でうちの事務所とかに来るかなぁ……?」
 高橋:「俺がこれで追い払いますよ?」

 

 愛原:「やめなさい。別の意味で取材される」
 善場:「愛原さん達への銃の所持許可は、もう少し先になりそうです。取りあえず高橋さんのそれは黙認ということで。ですので、あまり他人に見せびらかしませんように」
 愛原:「ええ、ええ。分かってますよ。高橋には私からよく言っておきますので」
 高野:「バカだねぇ……」
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