報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「正信号を探索せよ」 3

2018-11-20 19:14:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日12:00.天候:晴 豪華客船“正信”号 客室下階廊下]

 エレベーターが客室下階フロアに到着する。

 高橋:「あの時と同じだ。あの時も、この廊下はゾンビパラダイスでしたよ」
 愛原:「そうなのか」

 もし例え今現れても、ここには武装したBSAAの兵士が5人もいる。
 恐れるに足らんとは思うがな。

 リサ:「キレイなお屋敷みたい……」
 高橋:「俺にとってはトラウマだ。危うく、連続殺人犯にさせられるところだったんだからよ」
 愛原:「あの時か」

 高橋と私が最初に出会ったのも、こういう洋館みたいな所だった。
 そこで連続殺人事件が発生し、前科数犯で少年刑務所を出所したばかりの高橋が疑われたのである。
 それをものの見事に解決し、高橋の疑いを晴らしたことで、彼は私の押し掛け弟子となった。

 BSAA隊長:「Here.」
 愛原:「ん?」

 それは廊下に掛けられた1枚の絵画。
 先ほどの会議室内の物と同じ船の絵が描かれているが、こちらの方が大きい。

 隊長:「Hey.」
 隊員A:「Yes,sir.」
 隊員B:「Yes,sir.」

 隊長の合図で2人の隊員が絵画を外した。
 するとその下にも、会議室内にあった黄色い金庫があった。

 高橋:「うわっ、ここにもあったのかよ!?」
 高野:「こんなの分かるわけ無いよね」

 分かったところでゾンビパラダイス状態なのと、沈没寸前の状態ではゆっくり探している場合ではないだろう。
 こういうことに慣れたBSAA隊員でないと分からないわけだ。

 善場:「それでは当ててみます」

 善場さんは金庫にカードキーを当てた。
 すると、やはり読取機はそれを読み取って、ロックを解除した。

 愛原:「今度は何が入ってるかな?」
 高橋:「ロケランなんか入ってたら大儲けっスね」
 愛原:「んなわけねーだろ!w」

 隊員の1人が早速開けようとした時だった。

 リサ:「! 開けちゃダメ!!」

 リサが突然叫んだ。
 だが、時既に遅し。
 隊員は金庫のドアを開けてしまった。

 愛原:「わぁっ!?」

 金庫の中からクリーチャーが飛び出してきた。
 それは真っ白の体をしており、まるで水死体のように全身がふやけていた。

 隊長:「これはウーズか!?
 隊員C:「危ないから下がって!

 私には見たことも無い化け物であったが、このBSAA隊員達は知っているようだ。
 私達が急いで下がると、隊長が『ウーズ』と呼んだ化け物に一斉射撃を行う隊員達。
 どうやらザコ敵の一種らしく、最期にはドロドロに崩れて血だまりを作り、その中に一部の骨だけを残した。

 愛原:「ウーズって何ですか?」

 私の疑問を善場さんが通訳してくれた。
 隊長の説明によると、2005年頃に起きたバイオテロで現れたゾンビの一種らしい。
 ゾンビ化するのは人間などの哺乳類であるが、どんなゾンビになるかは感染したウィルスの種類によって異なる。
 私達が霧生市で相手にしたのは、初期の“Tウィルス”というもの。
 それに対してこのウーズというゾンビは、“Tアビス”というTウィルスを改造したものに感染した人間の成れの果てだという。
 前者のゾンビが生きた人間の肉を求めて彷徨い歩くのに対し、こちらのウーズは生きた人間の血液を求めて彷徨うのだそうだ。
 しかも体の柔らかさを生かしてダクトなどを自由に出入りし、どんな小さな隙間からでも侵入できるのがこのウーズの特徴。
 固く施錠された部屋であっても、ドアの隙間やダクトから侵入して獲物を追い詰めて行くのだという。

 善場:「2005年、地中海で起きた“クイーン・ゼノビア”事件では、このウーズがBSAAの隊員達を苦しめました」
 愛原:「そうだったのか……」
 高橋:「とんでもねぇミミックが潜んでいたもんだ。こりゃ、迂闊に金庫も開けられねぇよ」
 善場:「確かに愛原さん達が相手にしたTゾンビよりも手強い相手ですが、よく訓練されたBSAAの人達の手に掛かれば何の心配もありませんよ」

 そういう善場さんもさすがにびっくりしたのか、少し汗をかいているように見えた。

 善場:「とにかく、愛原さん達の部屋に行きましょう。愛原さん達の部屋はどこでしたか?」
 高野:「上のフロアですね」
 善場:「さっきのエレベーターで行きましょう」

 私達はエレベーターに向かった。
 その間、BSAAの隊員達は無線で今の戦いのやり取りをしていた。
 『αチームよりHQ、船内でウーズと遭遇した』とか『鎮圧に成功』とか報告しているのだろう。
 エレベーターに乗り込むと、善場さんが言った。

 善場:「実は午後から報道陣を中に入れて取材させる予定だったんです。ですが、こんな罠が仕掛けられてるとなると、中止せざるを得ないですね」
 愛原:「バイオテロ組織から押収した船でしょう?1番いいのは、顕正号みたいに沈没させることだと思いますよ」
 善場:「そうですね」

 客室上階に着いた。

 高野:「船長の居室はこの奥にあったみたいで、船長室にあったクレセントをはめ込んでショットガンを手に入れることができたんですよ」
 愛原:「そうなのか。さっき見た時は無かったな」

 或いはこのBSAA隊員達が先に探索していたわけだから、その時にこの人達が取ったか。

 高橋:「あったぞ。この部屋だ。311号室」
 愛原:「あ、うん。確かこんな感じのドアだった」

 しかしこのドアの鍵は普通の鍵だ。
 一体、どうやって開けるのだろう?

 隊員D:「No problem.」

 隊員が取り出したのはキーピック。
 それを鍵穴に入れてガチャガチャとやる。
 すると、カチッと開いた。

 愛原:「マジかよ」

 私が呆れていると、まるで敵のアジトに突入するかのように隊員達が部屋の中に入って行った。
 そして、『Clear!』という声が聞こえてきた。

 善場:「どうやら中は安全のようです」
 愛原:「はい」

 私達は部屋の中に入った。

 高橋:「あー、あの時と同じだ」
 高野:「本当に同じ造りですね」
 愛原:「そうなのか」

 やっぱり思い出せないなぁ……。
 いや、確かにこんな部屋だったと言われればそんな気もするのだが。

 善場:「あった!この金庫です!」

 善場さんは室内の金庫を指さした。
 確かにそれは、会議室や客室下階の廊下にあったものと同じ装飾が施されていた。

 善場:「早く開けてください」
 愛原:「は、はい」

 私は早速カードキーを当ててロックを外した。
 しかしさっきのこともある。
 開けるのはBSAAの軍人さん達にお任せすることにした。

 隊長:「OK.Open!」

 隊長の合図で隊員の1人が金庫を開けた。
 中には何が入っていたと思う?

 1:ウーズが現れた。
 2:鍵が入っていた。
 3:死体が入っていた。
 4:カードが入っていた。
 5:手紙が入っていた。
 6:何も無かった。
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“私立探偵 愛原学” 「正信号を探索せよ」 2

2018-11-20 10:16:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日11:00.天候:曇 神奈川県横浜市中区横浜港大さん橋 正信号船橋]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は沈没した豪華客船“顕正”号とは同型の姉妹船である“正信”号を探索していた。
 高野君達曰く、『言われないと分からないくらい、そっくりな造り』とのこと。
 こうして今歩いている間、正信号は静かなものだったが、顕正号はゾンビパラダイスだったわけだ。
 これだけの大型客船なのだから、船内にはエレベーターがある。
 それで客室フロアから船橋フロアまで上がった。

 高野:「船橋に出たわ!」
 高橋:「あの時と同じセリフ言いやがって」

 さすがは豪華客船の船橋。
 船員のロッカールームにはずらりとロッカーが並び、それを過ぎると操舵室に出た。

 高橋:「先生、ここまでの記憶は?」
 愛原:「いや、無いな……」

 私は首を傾げた。
 顕正号の船橋エリアには、早いうちに訪れていたという。
 私が倒れて意識を失う前の話だ。
 だからここでは、私も元気に船橋を訪れていたはずなのだが……。

 高野:「私達が到着した時、既に船橋は蛻の殻でした。この操舵室も、操縦の為の機器が全て壊されていたのです」

 と、高野君は説明した。
 もちろん、正信号の方は無事である。
 後ろにいるBSAAの軍人さん達が、自力で航行してきたわけだからね。

 愛原:「船員達がいなかったって、一体どうしたんだ?航海士達は?」
 高橋:「要はそいつらがテロリスト達だったというわけですよ。まんまと騙されたというわけです」
 愛原:「んん?船長も?」
 高野:「船長は……」

 私達は今度は船長室に移動した。
 豪華客船の船長室は、まるでどこかの大企業の役員室並みに豪勢な造りになっている。

 高橋:「この椅子に座って死んでました。ゾンビ化するまでもなく」
 愛原:「なるほど……」

 表向きは船員達の暴動ということになっていたか。

 善場:「皆さん、そろそろいいでしょうか?」
 愛原:「はい?」
 善場:「そろそろ客室の方に移動しましょう。愛原さん達が顕正号で宿泊していた部屋に行きませんと」
 愛原:「おっ、そうでした」

 それがそもそもの目的で来たのだ。

 BSAA隊長:「Hey.Ms.Toshiba.」

 その時、BSAA隊長が善場さんに話し掛けた。

 善場:「Huh?」

 隊長と善場さんが英語でやり取りをしている。
 そして……。

 善場:「あ、すいません。その前に、せっかくこの船橋エリアに来たのですから、もう一部屋探索したい部屋があるそうです」
 愛原:「え?」

 私達はBSAA隊長に付いて行った。
 それは船長室前の廊下を進んだ先にある部屋。

 高橋:「この廊下に船員のゾンビが1人いたもんで、俺がボコしてやりました」
 愛原:「ボコす?銃は?」
 高橋:「この時はまだ無かったんですよ。取りあえず足掛けて転ばせた後、そこにある消火器で頭叩き割ってやりました」
 愛原:「やるなぁ……」
 高橋:「『流血の惨を見る事、必至であります!』」
 愛原:「……だな」

 顕正号ではボッチの船員ゾンビが徘徊していたという廊下を進み、奥の部屋のドアを開けた。
 因みに船員全員がテロリストというわけではなく、一部に裏切り者がいて、そういうテロ組織と内通していた者がいたということ。
 その部屋は会議室になっていた。
 正信号では机と椅子とホワイトボードくらいしか無いが、顕正号は色々な物があって散らかっていたという。

 高橋:「ここで俺はようやくハンドガンを手に入れることができました」
 愛原:「あったんだ!」
 高橋:「因みに船橋エリアの鍵もここにありましたよ。これで船長室のドアの鍵を開けたりしたんです」
 愛原:「へえ……。この会議室の中にはゾンビとかいたかい?」
 高橋:「いなかったですね。さっきも言った通り、そこの廊下に1匹いただけです」
 高野:「あ、でも、さっきのロッカールームも後から行ったら、ダクトの金網ブチ破ってリッカーが出てきましたけどね」
 愛原:「そうか。リッカーいたなぁ……」

 大山寺の大本堂でそいつらと、そいつらのボスである逆さ女……もとい、サスペンデッドと無双したのを思い出した。
 私達がそんなことを話していると、隊長は会議室内に掛かっている絵画を外した。
 その絵画の裏には、黄色の金庫が出てきた。

 高野:「あっ、そうだ!顕正号にもあったわ、それ!」
 高橋:「何か違和感あったんだけど、顕正号じゃ絵なんか掛かってなかったな」
 善場:「そうですか。ここにもあったんですね」

 善場さんは私が先日渡したカードキーを金庫の前に翳した。
 すると、ピーッという音と共に、ガチャとロックの外れる音がした。
 開けてみると、中にはコルトパイソンが入っていた。

 高橋:「マジかよ、ここにあったのかよ!くそっ!」
 愛原:「顕正号では何が入ってた?」
 高野:「それどころじゃなかったんですよ。先生は倒れてましたし、後で気づいた時には船は沈没し掛かってましたし……」
 愛原:「これは顕正号と生き写しの船だろ?てことは、向こうにもコルトパイソンが入っていたのかもな」
 高橋:「だからですよ。最初のうちに手に入っていたら、先生も倒れずに済んだかもしれないのに!」

 しかし、最初から強い武器が手に入らないのが“バイオハザード”というものだからな。
 この日本で、早めのうちにハンドガンが手に入っただけでもマシというものだぞ。

 善場:「隊長、他にもこういう金庫があるんですか?」

 と、善場さんは英語で聞いたらしい。
 すると隊長は……。

 隊長:「That’s right.Follow me.」

 『その通りだ。ついてきてくれ』という意味で言ったのは何となく分かった。
 まあ、欧米人は身振り手振りも大きいからな……。
 私達は船橋エリアを後にし、客室エリアへと向かうエレベーターに乗り込んだ。
コメント (1)
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