報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「連休初日終了」

2018-11-05 19:17:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月6日18:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 高橋:「先生。そろそろ暗くなるというのに、リサのヤツ、帰って来ませんよ?」
 愛原:「そうだねぇ……」
 高橋:「先生の言い付けを破るとはいい度胸だ。マグナム撃ち込んでやりましょう」
 愛原:「だからリサには効かないって」

 私は部屋の窓から通りを見下ろした。
 すると待ってましたとばかりに、マンションの入口に白塗りの高級車っぽい車が止まる。
 どうやらリサが帰って来たようだ。

 愛原:「高橋、ちゃんと夜になる前にリサが帰って来たぞ?」
 高橋:「マジっスか?でも遅刻ですね」
 愛原:「何で?」
 高橋:「冬ならもう真っ暗な時間ですよ?」
 愛原:「今はまだ秋だっつの」

 それも、時々まだ暑い。

 愛原:「リサの友達の斉藤さんってコ、物凄い金持ちなんだな。運転手付きの高級車だぜ?」
 高橋:「いや、あんま大したこと無いですよ」
 愛原:「そう?何か、ロールスロイスっぽい車だぞ?」
 高橋:「ロールスっぽく造ってる、光岡のガリューですよ。ベースはティアナです」

 さすがは元暴走族。
 車にも詳しい。

 
(これなら御法主上人が乗り降りしても、『ヤクザの車みたい』というほどの威圧感は無いだろう?)

 愛原:「ティアナだって、タクシーでも使えないくらいの高級車だぞ?」

 お手頃価格のハイヤーってところかな。
 都内なら個人タクシーとか、法人タクシーでもハイグレードタイプとして走行しているのを見ることがある。

 高橋:「敵対してたVIPカーのチームに、ティアナを使ってたアホがいましたがね、俺が真っ先に……」

 と、そこへ電話が掛かってきた。
 スマホの他に、固定電話も部屋には引いている。

 高橋:「はい、愛原学探偵事務所です」
 愛原:「高橋、ここ事務所じゃない」
 高橋:「あっ……」

 まあ、北区王子時代は事務所兼住宅だったからしょうがなかったが……。

 高橋:「あっ、先生っスか?ちょっとお待ちください」

 高橋は電話を保留にした。

 高橋:「先生、善場さんからですよ」
 愛原:「善場さんか」

 私は電話に出た。

 愛原:「もしもし。お電話代わりました。愛原です」

 その間にリサが帰って来る。

 リサ:「ただいまぁ!」
 高橋:「遅ぇぞ!今何時だと思ってんだ、あぁっ!?」
 リサ:「ええ〜?まだ6時過ぎだよ〜?」
 高橋:「アホか!中坊はもっと早く帰って来るもんだ!」
 愛原:「……あ、はい。いえ、大丈夫ですよ。御用件は?」
 リサ:「まだ夜になってないもん!」
 高橋:「お前は先生の御心が分かってんのか!?あぁっ!?暗くなり始める前に帰れってことなんだよ!」
 リサ:「暗くなる前に帰れって言われたんだもん!」
 愛原:「……あ、すいません。ちょっとよく聞こえないんで、もう少し大きな声で……」
 高橋:「先生が御心配なさったんだぞ!?そういうのを察して、暗くなり始める前に帰るって考えりゃ分かんだろうが、あぁっ!?」
 リサ:「わたしは言われた通りにしただけだもん!!」
 愛原:「あー、もう!うるせぇな!何やってんだ!?」
 高橋:「はっ、先生!申し訳ありません!こいつが先生に御心配をお掛けしたというのに、全く反省の態度を見せないので息の根を止め……いえ、強く注意してやろうと……」
 リサ:「わたしは言われた通りにしたよ!?」
 愛原:「後でお前らの言い分は聞くからね、今俺は大事な電話をしているんだから、うるさくしないように!……あ、もしもし。すいません」
 高橋:「けっ、テメーのせいで怒られただろうが」
 リサ:「お兄ちゃんのせいでしょ」
 高橋:「『ごめんなさい』だろ?テメ、コラ」
 リサ:「何よ!?」
 愛原:「あ、えーと……明後日ですか?ええ、大丈夫ですよ。明日の何時頃……」

 ピーーーーーーーー!

 愛原:「……ぉぉうぁっ!?何なんだ、一体!?」
 高橋:「ああ、すいません。ヤカンの音です」

 高橋はガスコンロに掛けていたヤカンの火を止めた。

 リサ:「うるさいね、全く」
 高橋:「あぁっ!?」
 愛原:「ピーピーピーピーうるさいんだっての、高橋!」
 高橋:「いや、俺じゃないですよ。ピーピー言ってたの、ヤカンですよ?」
 愛原:「俺は今電話中なんだから、静かにしろ!……あ、もしもし。何度もすいません。どこまで話しましたっけ?……ああ、えーと、明後日の……はい」
 リサ:「どうしてヤカンをコンロに掛けてたの?」
 高橋:「電気ポットがぶっ壊れたんだよ。確かあれもリサイクルショップで買った中古品だったからよ」
 リサ:「新品を買わないの?」
 高橋:「今よりも貧乏事務所で買えなかったんだよ」

 高橋はそう言うと、ヤカンで熱したお湯をポットの中に入れた。

 リサ:「ポットは壊れたんでしょ?」
 高橋:「いや、取りあえずボタンを押せばお湯は出る。湯が沸かなくなっただけだ」

 普通のポットとしては使えるというわけだ。

 愛原:「……分かりました。じゃあ、明後日お伺いします。……はい。すいません、騒がしくて……はい。それじゃ、失礼します」

 私は電話を切った。

 愛原:「お前らなぁ……」
 高橋:「サーセン」
 リサ:「サーセン」
 高橋:「お前は『ごめんなさい』だろ?」
 リサ:「何でよ?」
 愛原:「兄妹ゲンカみたいでいいね」
 高橋:「はあ!?何言ってるんスか!?」
 愛原:「で、ヤカンがどうしたんだ?」
 高橋:「あ、いえ。電気ポットが壊れたんで、ヤカンで湯を沸かしてたんですよ」
 愛原:「電気ポット壊れたら、言ってくれたら良かったのに」
 高橋:「サーセン」
 愛原:「今ならドンキやヨドバシで新品買えるくらいの金はあるぞ?ぶっちゃけ、電気ポットってここで使うか?」
 高橋:「使う時は使いますけどね……」
 リサ:「私は使わないなぁ……」
 高橋:「事務所では使います」
 愛原:「事務所用は事務所用で新しいの買ったからな、アスクルで。来客のお茶出しとかにも使うし」
 高橋:「アスクルで売ってるもんなんですねぇ……。それじゃ、ここ用のもアスクルで買いますか」
 愛原:「いや、だからここで電気ポット導入してもあんまり必要無いような気がする。電気ケトルでいいんじゃないか?」
 高橋:「あ、それなら安くていいですね。それこそドンキで買える代物です」
 愛原:「だろ?明日、ちょっと行って来よう」
 高橋:「うッス」
 愛原:「それより、夕飯にしようぜ」
 高橋:「今日はトンカツ定食です」
 愛原:「いいね〜!リサはどうする?取りあえず俺と高橋、亀戸駅前のドンキまで行って来る」

 ここから都営バス一本で行けるからな。
 都営新宿線で岩本町駅まで行って、そこからアキバへ向かってもいいのだが、少し歩くので、特に電気街に行こうとすると不便である。

 リサ:「今度はサイトーが遊びに来るの」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「宿題も一緒にやる」
 愛原:「そりゃいい」
 高橋:「中学からのダチは、一生モンだ」
 愛原:「お、いいこと言うねぇ」
 高橋:「俺が今付き合ってる連中も、半分以上は中学ん時のダチですから」
 愛原:「なるほど」
 高橋:「ところで先生、さっきの電話何だったんスか?」
 愛原:「ああ、あれねぇ……」

 私は電話の内容を高橋達に話した。
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“愛原リサの日常” 「斉藤家へようこそ」 2

2018-11-05 10:31:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月6日12:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]

 私の名前は愛原リサ。
 名字は私の保護者である探偵の愛原学先生から、名前は私を無理やり改造した日本アンブレラの研究員が付けた。
 人間だった頃の名前は憶えていない。
 今日は私が転入した中学校で、1番仲良くしてくれてるサイトーの家に遊びに行った。
 サイトーは元々埼玉県に住んでいて、中学受験を機に学校の近くのマンションにメイドさんと2人で暮らしているらしい。
 たまの休みでは、こうやって帰っているみたいだけど。
 私とサイトーはサイトーの部屋でゲームをやっていた。

 メイド:「失礼致します。御昼食をお持ちしました」

 私はメイドさんにパスタをお願いしたけど、何のパスタがいいかまでは考え付かなかった。
 とにかく、今はパスタなら何でも食べたい感じ。
 そこで私は、メイドさんにお任せすることにした。

 斉藤:「ありがとう。何のパスタにしたの?」
 メイド:「ボロネーゼでございます」
 リサ:「ボロネーゼ?」

 私がお皿に盛られたパスタを見ると、それは……。

 リサ:「ミートソース……だよね?」

 高橋兄ちゃんが、昼食に時々作ってくれるミートソースとは少し見た目が違うけど、匂いとか見た目全体はそんな感じ。
 愛原さんはこれが好きらしく、私も一緒に食べることが多かった。

 斉藤:「そうとも言うかしら」
 メイド:「ですが、ミートソースとは少し違うんですよ」
 斉藤:「そうなの?」
 メイド:「はい。このボロネーゼは主としてトマトを殆ど使わずにワインで煮込むのに対し、ミートソースはトマトで煮込むのです。それ故に、ボロネーゼはワインの渋みを利用した肉ベースの味に対しまして、ミートソースはケチャップや砂糖などを加えることが多く、トマトベースの甘い味付けとなります」

 ということは、ボロネーゼの方が高級ってこと?
 何か、却って高そうなの注文しちゃったなぁ……。

 メイド:「もちろん、ワインのアルコール成分は煮込む時に蒸発してしまいますので、御嬢様方がお食べになられても大丈夫です」
 斉藤:「美味しそうね。早速頂きましょう。ゲームは一旦止めて、アニメでも観る?」
 リサ:「観る!」

 家にあるDVDは、何だか難しいのばかりだもんね。
 愛原さんの部屋にあるのは、何だか大人びた制服のお姉さんがオジさんと何かしているヤツとか、後は『堕ちた女スパイ』とか何か色々あったし。
 高橋兄ちゃんの部屋は、何だか男の人同士が色々やってるヤツばかりだし。

 リサ:「本当にサイトーは何でも持ってるんだね」
 斉藤:「そ、そんな……大したことないよ……」

 私達はアニメのDVDを観ながら昼食を取った。

 リサ:「このパスタ、美味しい」
 斉藤:「うちのメイド、ハウスメイドからキッチンメイドから何でもできるのよ」
 リサ:「スゴいね」
 斉藤:「リサさんと比べたら、私なんて大したことない……」
 リサ:「え?」
 斉藤:「リサさんだけだもの。こうして、私と分け隔てなく付き合ってくれるの」
 リサ:「そう?」
 斉藤:「きっとリサさん、私のこと、もっと知ったら怖くて逃げちゃうかもしれない……」
 リサ:「それなら私も似たようなものだけど……」

 ん?サイトーもBOW?そんなわけないか。
 もしそうなら、臭いで分かるもんね。

 リサ:「人には誰でも秘密の1つや2つあるからね、私にもあるもの」
 斉藤:「リサさんにも?」
 リサ:「霧生市で色々なことがあったからね」
 斉藤:「でも、そんなの秘密でも無いでしょう。霧生市で流行った伝染病のことについてなら、もうテレビでやってたし……」

 今やTウィルス以上の物がこの世界に存在している。
 霧生市で漏れた初期のウィルスは、アメリカから移されたものに過ぎない。

 リサ:「そういうことじゃないの」

 私もまたそのウィルスをばら撒いた側だって知ったら、きっとサイトーも……。

 リサ:「色々とね、あったの……」
 斉藤:「わ、私も色々あったよ!だから、お互い秘密を持ってる人同士、仲良くしてくれる?」
 リサ:「もちろん」

 私はサイトーをハグした。

 斉藤:「も、萌ぇぇぇぇぇぇっ!!」
 リサ:「アニメ観たらどうする?」
 斉藤:「しょ、食後に軽く運動しましょ」
 リサ:「運動できる所なんてあるの?」

[同日13:00.天候:晴 斉藤家B1F]

 斉藤家にはエレベーターがある。
 といっても扉はクローゼットのドアみたいな感じだし、定員も3人くらい乗れれば御の字って感じ。
 トイレくらいの広さかもしれない。
 それで地下室に下りてみると、そこにはランニングマシーンとか卓球台とか置いてあった。
 また、狭いながらもプールもあるらしい。

 リサ:「プールもあるの!」
 斉藤:「10メートル四方しか無いけどね。ああ、今は水を張って無いから、プールはまた今度ね」
 リサ:「プール!入ってみたい!」
 斉藤:「プールの授業9月で終わりだから、水泳部以外はもうプールに入らないものね。今度、水着持ってきて」
 リサ:「学校のしか持ってない」
 斉藤:「それでいいのよ!(リサさんの水着姿……)それより、何して運動する?」
 リサ:「んー……あれやりたい」

 私はランニングマシーンを指さした。

 リサ:「いいよ。走り込みね」

 ベルトコンベアの速度を調節できるらしい。
 まずは時速10キロ。

 リサ:「ん!」

 ダッダッダッと走る私。

 斉藤:「リサさん、足速いね!」
 リサ:「そう?」

 時速20キロ、30キロ、40キロ……。

 斉藤:「え?え?え?」

 50キロ、そして60キロ……。
 久しぶりに力を解放……あ゛っ!

 リサ:「い、今のはほんのパフォーマンス!ぱ、パフォーマンスだから!」

 余裕で走り切った私を見て、斉藤はムンクの叫びを上げていた。
 ま、まずい。正体がバレた!?
 アメリカのオリジナル版は怪力で不死身ながらも、動きが遅いらしいけど、派生版の私はこの通り……。
 愛原さんとかは私のことを『完成版』なんて呼ぶけど……。

 斉藤:「リサさん、今度の体育祭、リレーで出たら!?それとも、陸上部入る!?」

 サイトーは鼻息を荒くして言った。
 私は今のところ部活には入っていない。
 担任の先生からは、どこに入るか考えておけって言われたけど……。
 ていうか、私が時速60キロを余裕で走ったことには何のツッコミも無いのだろうか?

 リサ:「い、いや、いいよ。こ、これは止めとく。え、えーと……今度はあれがいい」

 私はエアホッケーの台を指さした。

 斉藤:「いいよ。あれで勝負しましょう!」

 サイトーはエアホッケーの台の電源を入れた。 
コメント (3)
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