[10月8日10:15.天候:曇 神奈川県横浜市中区 横浜港大さん橋]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は横浜港までやってきた。
今年の元日に、船旅を楽しんでいた私達を突然襲ったバイオテロ。
船内は化け物の巣窟となり、最後には自爆装置の作動で爆発・炎上、そして沈没した。
ところがその船には同型の姉妹船が存在しており、こちらは廃船寸前とはいえ、未だ洋上に浮かんでいたという。
こちらもとあるバイオテロ組織が隠し持っていたらしいが、BSAAの介入により殲滅し、その船は押収された。
そしてBSAAの船内捜索により、その安全が確保されると、日本に曳航されることとなった。
曳航といっても、実際は自力航行である。
今日の10時には横浜港の大さん橋に着岸するとのことで、私達は現場に向かった次第である。
善場:「皆さん、見えて来ましたよ」
大さん橋と言えば、多くの豪華客船が日本に寄港しようとする時、必ずと言って良いほどその接岸先になる港である。
私達が昨年の大晦日に顕正号に乗り込んだ時も、あの大さん橋からだった。
愛原:「おおっ!」
高橋:「正しくあれは!?」
高野:「顕正号ですね」
船内の記憶が殆ど欠落している私だが、船の外観については覚えているぞ。
うん、確かあんな感じだった。
顕正号が戦艦大和なら、正信号は戦艦武蔵とはよく言ったものだ。
リサ:「大きい……」
リサが感嘆の声を上げた。
さすがは豪華客船だ。
大和も武蔵も巨大艦船だったことで有名であり、この顕正号……もとい、正信号も同じであった。
愛原:「もう乗れるんですか?」
善場:「ちょっと待ってください。今、BSAAが船橋から出てきます。BSAAの隊員達と一緒に中に入ることになってますので」
因みに私達は、善場さんの車でやってきた。
実際は政府の公用車なのだろうが。
シルバーのアルファードなのだが、善場さんは助手席に座っているだけであり、運転席には善場さんの部下の男性職員が座っていた。
警察官:「失礼します」
善場:「今日、調査予定の善場です」
バリケードで封鎖されている所までやってくると、警察官がやってきた。
そこで善場が自分の身分証やら、書類やらを提示している。
一瞬そこで警察官が、『ナイチョウ』と口走ったのを聞いて、私はやはり善場さん達は法務省とは別の省庁に所属しているのではないかと確信した。
警察官はすぐに口を噤んだが、私の耳は誤魔化せない。
『ナイチョウ』とは内調。
つまり、内閣情報調査室ではないか。
略称はCIRO(サイロ)、日本版CIAを目指して設立されたと聞いている。
善場さんが公安調査庁の職員にしては、ちょっとなぁと思っていたが、内閣調査室の職員ならエージェントと称されても合点が行く。
てか、そんな所が民間の探偵事務所に依頼していいのだろうか?
もちろん、これ以上は政治的領域だから私達が首を突っ込んで良い話ではないだろう。
しばらくしてゲートが開けられ、車は奥に進んだ。
高橋:「先生、思い出せますか?あの船そっくりですよ」
高橋は手持ちのマグナム44を弄りながら言った。
今回だけは特別に所持が許可されたものである。
別にBSAAが既に調査した後なわけだから、今さら正信号にもゾンビがいるとは思えないのだが。
愛原:「いや……。実際に中に入ってみないと分からないだろうな」
そして車は、タラップの前で止まった。
すると船内から、フルフェイスのヘルメットを被った軍服姿の者達が5人ほど降りて来た。
顔が分からないので、日本人なのかどうかは分からない。
極東支部日本地区本部が存在することから、そこに所属していれば日本人なのだろうが。
善場:「さあ、早速乗りましょう」
善場さんは真っ先に車を降りた。
そして、自分の身分証を高く掲げた。
善場:「日本政府の善場と申します!今回、特別に船内調査を許可された者です!」
と、英語で喋ったことから、多分そこにいる特殊部隊員達は日本人ではないのだろう。
実際、ヘルメットを取った1人の兵士は白人男性だった。
善場とにこやかに握手をしながら、英語で何か言っている。
善場さんの英語はゆっくりだったので、何となく意味は分かったのだが、兵士の方は完全にネイティブなので、逆に聞き取りにくい。
愛原:「高橋、何て喋ってるんだ?」
高橋:「分かりませんねぇ。全く、ここに日本なんだから日本語で喋れってんだ」
日本人の9割方の意見(ソース無し)。
高野:「取りあえず、船内の方は異常無しみたいなことを喋ってますね」
愛原:「高野君、分かるのか?」
高野:「一応、これでもTOEICは取ってますので」
愛原:「おおっ、さすがだ」
リサ:「私も分かるー。んーとね、テロ組織が色々と船内を改造していたところは、顕正号と変わらないって言ってるよ」
愛原:「ええっ、マジで!?」
日本人離れした顔立ちだなと思っていたが、実はやはりハーフか何かなのか?
善場:「お待たせしました。それでは彼らが船内を案内してくれますので、付いて行きましょう」
愛原:「よ、よろしくお願いします」
BSAA隊長:「オーッ、ヨロシクー!」
ヘルメットを取った白人の隊長は、にこやかな笑顔で私と握手した。
これで銃とか持って無ければ、爽やかな好青年なのになぁ……。
あ、いや、年齢は私と大して変わらないだろうが……。
高橋:「まだ10ヶ月しか経って無いのに、まるで昨日のことのようです」
高野:「ホントにねぇ……」
タラップを上がって船内に入る。
廃船寸前の状態だったせいか、船内はあちこち老朽化している。
しかしそれさえ無ければ、往時はVIPやセレブ客で賑わっていたことを偲ばせる何かが節々に現れていた。
ただの廊下にも天井からぶら下げられているシャンデリアとか……。
高橋:「そこからゾンビが2体ほど、ドアをドンドン叩いていたんですよ」
高橋はとある木製の客室のドアを指さした。
もちろん、今は静かなものである。
愛原:「ダメだ。全然思い出せない……」
高野:「慌てなくても大丈夫ですよ。でも確かに、同型の姉妹船というだけあって、ほぼ顕正号と同じ造りですね」
善場:「ですよね」
愛原:「それで、この船内のどこを探索するのです?」
できれば全部見てみたいところだが、さすがにそこは時間が許さないだろう。
善場:「それは……」
1:船橋エリア(操舵室や船長室)
2:カジノ(VIPルーム含む)
3:プロムナード(レストラン街や免税店街)
4:大ホール(各エリアに通じるホテルの吹き抜けロビーみたいな所)
5:顕正号で愛原達が宿泊していた部屋
6:船内プール
7:それ以外
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は横浜港までやってきた。
今年の元日に、船旅を楽しんでいた私達を突然襲ったバイオテロ。
船内は化け物の巣窟となり、最後には自爆装置の作動で爆発・炎上、そして沈没した。
ところがその船には同型の姉妹船が存在しており、こちらは廃船寸前とはいえ、未だ洋上に浮かんでいたという。
こちらもとあるバイオテロ組織が隠し持っていたらしいが、BSAAの介入により殲滅し、その船は押収された。
そしてBSAAの船内捜索により、その安全が確保されると、日本に曳航されることとなった。
曳航といっても、実際は自力航行である。
今日の10時には横浜港の大さん橋に着岸するとのことで、私達は現場に向かった次第である。
善場:「皆さん、見えて来ましたよ」
大さん橋と言えば、多くの豪華客船が日本に寄港しようとする時、必ずと言って良いほどその接岸先になる港である。
私達が昨年の大晦日に顕正号に乗り込んだ時も、あの大さん橋からだった。
愛原:「おおっ!」
高橋:「正しくあれは!?」
高野:「顕正号ですね」
船内の記憶が殆ど欠落している私だが、船の外観については覚えているぞ。
うん、確かあんな感じだった。
顕正号が戦艦大和なら、正信号は戦艦武蔵とはよく言ったものだ。
リサ:「大きい……」
リサが感嘆の声を上げた。
さすがは豪華客船だ。
大和も武蔵も巨大艦船だったことで有名であり、この顕正号……もとい、正信号も同じであった。
愛原:「もう乗れるんですか?」
善場:「ちょっと待ってください。今、BSAAが船橋から出てきます。BSAAの隊員達と一緒に中に入ることになってますので」
因みに私達は、善場さんの車でやってきた。
実際は政府の公用車なのだろうが。
シルバーのアルファードなのだが、善場さんは助手席に座っているだけであり、運転席には善場さんの部下の男性職員が座っていた。
警察官:「失礼します」
善場:「今日、調査予定の善場です」
バリケードで封鎖されている所までやってくると、警察官がやってきた。
そこで善場が自分の身分証やら、書類やらを提示している。
一瞬そこで警察官が、『ナイチョウ』と口走ったのを聞いて、私はやはり善場さん達は法務省とは別の省庁に所属しているのではないかと確信した。
警察官はすぐに口を噤んだが、私の耳は誤魔化せない。
『ナイチョウ』とは内調。
つまり、内閣情報調査室ではないか。
略称はCIRO(サイロ)、日本版CIAを目指して設立されたと聞いている。
善場さんが公安調査庁の職員にしては、ちょっとなぁと思っていたが、内閣調査室の職員ならエージェントと称されても合点が行く。
てか、そんな所が民間の探偵事務所に依頼していいのだろうか?
もちろん、これ以上は政治的領域だから私達が首を突っ込んで良い話ではないだろう。
しばらくしてゲートが開けられ、車は奥に進んだ。
高橋:「先生、思い出せますか?あの船そっくりですよ」
高橋は手持ちのマグナム44を弄りながら言った。
今回だけは特別に所持が許可されたものである。
別にBSAAが既に調査した後なわけだから、今さら正信号にもゾンビがいるとは思えないのだが。
愛原:「いや……。実際に中に入ってみないと分からないだろうな」
そして車は、タラップの前で止まった。
すると船内から、フルフェイスのヘルメットを被った軍服姿の者達が5人ほど降りて来た。
顔が分からないので、日本人なのかどうかは分からない。
極東支部日本地区本部が存在することから、そこに所属していれば日本人なのだろうが。
善場:「さあ、早速乗りましょう」
善場さんは真っ先に車を降りた。
そして、自分の身分証を高く掲げた。
善場:「日本政府の善場と申します!今回、特別に船内調査を許可された者です!」
と、英語で喋ったことから、多分そこにいる特殊部隊員達は日本人ではないのだろう。
実際、ヘルメットを取った1人の兵士は白人男性だった。
善場とにこやかに握手をしながら、英語で何か言っている。
善場さんの英語はゆっくりだったので、何となく意味は分かったのだが、兵士の方は完全にネイティブなので、逆に聞き取りにくい。
愛原:「高橋、何て喋ってるんだ?」
高橋:「分かりませんねぇ。全く、ここに日本なんだから日本語で喋れってんだ」
日本人の9割方の意見(ソース無し)。
高野:「取りあえず、船内の方は異常無しみたいなことを喋ってますね」
愛原:「高野君、分かるのか?」
高野:「一応、これでもTOEICは取ってますので」
愛原:「おおっ、さすがだ」
リサ:「私も分かるー。んーとね、テロ組織が色々と船内を改造していたところは、顕正号と変わらないって言ってるよ」
愛原:「ええっ、マジで!?」
日本人離れした顔立ちだなと思っていたが、実はやはりハーフか何かなのか?
善場:「お待たせしました。それでは彼らが船内を案内してくれますので、付いて行きましょう」
愛原:「よ、よろしくお願いします」
BSAA隊長:「オーッ、ヨロシクー!」
ヘルメットを取った白人の隊長は、にこやかな笑顔で私と握手した。
これで銃とか持って無ければ、爽やかな好青年なのになぁ……。
あ、いや、年齢は私と大して変わらないだろうが……。
高橋:「まだ10ヶ月しか経って無いのに、まるで昨日のことのようです」
高野:「ホントにねぇ……」
タラップを上がって船内に入る。
廃船寸前の状態だったせいか、船内はあちこち老朽化している。
しかしそれさえ無ければ、往時はVIPやセレブ客で賑わっていたことを偲ばせる何かが節々に現れていた。
ただの廊下にも天井からぶら下げられているシャンデリアとか……。
高橋:「そこからゾンビが2体ほど、ドアをドンドン叩いていたんですよ」
高橋はとある木製の客室のドアを指さした。
もちろん、今は静かなものである。
愛原:「ダメだ。全然思い出せない……」
高野:「慌てなくても大丈夫ですよ。でも確かに、同型の姉妹船というだけあって、ほぼ顕正号と同じ造りですね」
善場:「ですよね」
愛原:「それで、この船内のどこを探索するのです?」
できれば全部見てみたいところだが、さすがにそこは時間が許さないだろう。
善場:「それは……」
1:船橋エリア(操舵室や船長室)
2:カジノ(VIPルーム含む)
3:プロムナード(レストラン街や免税店街)
4:大ホール(各エリアに通じるホテルの吹き抜けロビーみたいな所)
5:顕正号で愛原達が宿泊していた部屋
6:船内プール
7:それ以外