[11月2日21:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
いよいよ明日は、リサの中学校で球技大会が行われる。
本当なら仕事の関係で行けない予定であったのだが……。
愛原:「リサ、明日行くよ」
私はリサの頭を撫でながら言った。
リサ:「本当に!?」
愛原:「うん、本当」
リサ:「お仕事はいいの!?」
愛原:「何とか調整した」
するとリサは私に抱きついた。
リサ:「愛原さん、大好き!」
愛原:「おわっ、とととと!」
リサの力が強くて、ソファの上に倒れ込む形となる。
高橋:「クソガキが。……まあ、今回だけは譲ってやる」
そう言いつつ、背中には右手で持ったマグナムを隠し、左手でそれを震えながら押さえていた。
高橋:「アネゴに『JCに合法的に抱きつかれた役得』とか嫌味言われますから、この辺で」
愛原:「おっ、そうだな。リサ、そろそろ放してくれないか」
リサ:「やー」
高橋:「『やー』じゃねぇ!」
少なくともリサに組み付かれたら、命は無いものとだけは分かった。
人間態でこの力なんだから。
愛原:「リサ、スカート捲れてる。みっともないから放れなさい!」
リサ:「はーい」
リサはようやく私から離れ、捲れたスカートを直した。
愛原:「この状態でも身体能力は普通の女子中学生以上にある。1つ注意として、これ以上の力は出さないこと。特に斉藤さんはリサにベッタリだから、ふとしたことで正体がバレる恐れがある」
高橋:「確かに、先生の仰る通りです」
リサ:「分かった。気をつける」
高橋:「正体がバレたら、便所か体育館裏に連れ込んで、忘れるまでボコせ」
リサ:「うん、分かった。お兄ちゃん」
愛原:「こら、高橋!変な事教えるな!」
高橋:「え?ですが、俺が学生の時はそうしてましたけど?」
愛原:「オマエの経験を幼気な少女に押し付けるな!」
高橋、段々とボケ役になってきたな。
仕事は一生懸命覚えようとしているから、根は真面目なんだろうがな。
少年鑑別所と少年院と少年刑務所をコンプリートした彼には、私の想像を絶する10代があったのだろうが……。
悪い仲間に根の真面目さを悪用されて、犯罪に誘われたか……。
それとも……。
[11月3日08:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原家→台東区上野 東京中央学園上野高校]
マンションの駐車場にロールスロイス風の車が止まる。
実際は光岡自動車のガリューという車なのだが。
ピカピカに洗車され、ワックスの効いた白いボディの目立つ高級車は私のマンションにはミスマッチだな。
新庄:「おはようございます。愛原様」
運転席からハイヤーのそれかといった感じの運転手が降りて来た。
新庄:「絵恋御嬢様のお言い付けでお迎えに上がりました。私、専属ドライバーの新庄と申します」
愛原:「ど、どうも……」
新庄:「御嬢様は御親友のリサ様を大層気に入られ、リサ様の保護者でございます愛原様方が本日の大会に御臨席を賜るということで大変喜んでおられます。そこで不肖、私めが送迎役を仰せつかったのでございます」
な、何だか話が大きくなってないか?
新庄:「旦那様も1度、愛原様に御挨拶を申し上げたいと仰せでございまして……」
愛原:「斉藤さんのお父さんが?」
高橋:「ほお……」
高橋はヤクザの組長みたいな人物を想像したらしい。
新庄:「ではどうぞ。ご乗車ください」
新庄運転手は助手席後ろのドアを開けた。
愛原:「すいませんね」
さすがは日産ティアナをベースにした車というだけのことはあるな。
元々が手軽なハイヤーとしての用途もある車種だから、なかなか広い。
高橋:「先生もナメられたものですね」
愛原:「え?何で?」
高橋:「先生は将来、一流の名探偵になられる御方です。だったら、こんなロールスロイスの紛い物じゃなく、本物のロールスロイスで来やがれって感じですよ」
愛原:「……と言った所で、今現在はポンコツ探偵だ。今現在においては、身に余る高級車だな。本物のロールスロイスは、俺が名実共にその立場になってからだよ」
高橋:「なるほど……」
新庄:「それでは出発致します」
愛原:「よろしくお願いします」
車が走り出した。
愛原:「それにしても、大会の会場が中学校ではなく、高校とは……」
新庄:「東京中央学園上野高校は、場所が都心にありながら、体育館が2つございます。2つ借り切ることにより、円滑な運営を図っているとのことです」
愛原:「2つもあるのか!凄いな!」
今日は文化の日だから、どちらというと文化祭が行われていそうなものだが、高校の文化祭は別の日に行われるらしい。
因みに中学校では行われない。
リサの学費については日本政府エージェントで面倒を見てもらえるから、こういうセレブリティな学園に通えるが、そうでなかったら絶対ムリだな。
ましてや、寄付金も出さないといけない。
愛原:「あ、そうだ。新庄さん」
新庄:「何でございましょう?」
愛原:「リサさんのお父さんも来られるんでしたよね?」
新庄:「さようでございます」
愛原:「私達の迎えなんかしてていいんですか?」
新庄:「御心配には及びません。旦那様のお車は、旦那様の会社と契約している役員車のドライバーが担当しております」
愛原:「あ、運転手さん、別にいるんだ」
新庄:「はい。私は家事使用人としての運転手です。旦那様が通勤等に御使用になられておられる役員車におきましては、タクシー会社から派遣された専属ドライバーが担当してございます。もっとも、私も昔はそこにいたのですが」
新庄運転手も、元をただせばタクシーの運転手だったか。
車は一路、球技大会の行われる上野高校へと向かった。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
いよいよ明日は、リサの中学校で球技大会が行われる。
本当なら仕事の関係で行けない予定であったのだが……。
愛原:「リサ、明日行くよ」
私はリサの頭を撫でながら言った。
リサ:「本当に!?」
愛原:「うん、本当」
リサ:「お仕事はいいの!?」
愛原:「何とか調整した」
するとリサは私に抱きついた。
リサ:「愛原さん、大好き!」
愛原:「おわっ、とととと!」
リサの力が強くて、ソファの上に倒れ込む形となる。
高橋:「クソガキが。……まあ、今回だけは譲ってやる」
そう言いつつ、背中には右手で持ったマグナムを隠し、左手でそれを震えながら押さえていた。
高橋:「アネゴに『JCに合法的に抱きつかれた役得』とか嫌味言われますから、この辺で」
愛原:「おっ、そうだな。リサ、そろそろ放してくれないか」
リサ:「やー」
高橋:「『やー』じゃねぇ!」
少なくともリサに組み付かれたら、命は無いものとだけは分かった。
人間態でこの力なんだから。
愛原:「リサ、スカート捲れてる。みっともないから放れなさい!」
リサ:「はーい」
リサはようやく私から離れ、捲れたスカートを直した。
愛原:「この状態でも身体能力は普通の女子中学生以上にある。1つ注意として、これ以上の力は出さないこと。特に斉藤さんはリサにベッタリだから、ふとしたことで正体がバレる恐れがある」
高橋:「確かに、先生の仰る通りです」
リサ:「分かった。気をつける」
高橋:「正体がバレたら、便所か体育館裏に連れ込んで、忘れるまでボコせ」
リサ:「うん、分かった。お兄ちゃん」
愛原:「こら、高橋!変な事教えるな!」
高橋:「え?ですが、俺が学生の時はそうしてましたけど?」
愛原:「オマエの経験を幼気な少女に押し付けるな!」
高橋、段々とボケ役になってきたな。
仕事は一生懸命覚えようとしているから、根は真面目なんだろうがな。
少年鑑別所と少年院と少年刑務所をコンプリートした彼には、私の想像を絶する10代があったのだろうが……。
悪い仲間に根の真面目さを悪用されて、犯罪に誘われたか……。
それとも……。
[11月3日08:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原家→台東区上野 東京中央学園上野高校]
マンションの駐車場にロールスロイス風の車が止まる。
実際は光岡自動車のガリューという車なのだが。
ピカピカに洗車され、ワックスの効いた白いボディの目立つ高級車は私のマンションにはミスマッチだな。
新庄:「おはようございます。愛原様」
運転席からハイヤーのそれかといった感じの運転手が降りて来た。
新庄:「絵恋御嬢様のお言い付けでお迎えに上がりました。私、専属ドライバーの新庄と申します」
愛原:「ど、どうも……」
新庄:「御嬢様は御親友のリサ様を大層気に入られ、リサ様の保護者でございます愛原様方が本日の大会に御臨席を賜るということで大変喜んでおられます。そこで不肖、私めが送迎役を仰せつかったのでございます」
な、何だか話が大きくなってないか?
新庄:「旦那様も1度、愛原様に御挨拶を申し上げたいと仰せでございまして……」
愛原:「斉藤さんのお父さんが?」
高橋:「ほお……」
高橋はヤクザの組長みたいな人物を想像したらしい。
新庄:「ではどうぞ。ご乗車ください」
新庄運転手は助手席後ろのドアを開けた。
愛原:「すいませんね」
さすがは日産ティアナをベースにした車というだけのことはあるな。
元々が手軽なハイヤーとしての用途もある車種だから、なかなか広い。
高橋:「先生もナメられたものですね」
愛原:「え?何で?」
高橋:「先生は将来、一流の名探偵になられる御方です。だったら、こんなロールスロイスの紛い物じゃなく、本物のロールスロイスで来やがれって感じですよ」
愛原:「……と言った所で、今現在はポンコツ探偵だ。今現在においては、身に余る高級車だな。本物のロールスロイスは、俺が名実共にその立場になってからだよ」
高橋:「なるほど……」
新庄:「それでは出発致します」
愛原:「よろしくお願いします」
車が走り出した。
愛原:「それにしても、大会の会場が中学校ではなく、高校とは……」
新庄:「東京中央学園上野高校は、場所が都心にありながら、体育館が2つございます。2つ借り切ることにより、円滑な運営を図っているとのことです」
愛原:「2つもあるのか!凄いな!」
今日は文化の日だから、どちらというと文化祭が行われていそうなものだが、高校の文化祭は別の日に行われるらしい。
因みに中学校では行われない。
リサの学費については日本政府エージェントで面倒を見てもらえるから、こういうセレブリティな学園に通えるが、そうでなかったら絶対ムリだな。
ましてや、寄付金も出さないといけない。
愛原:「あ、そうだ。新庄さん」
新庄:「何でございましょう?」
愛原:「リサさんのお父さんも来られるんでしたよね?」
新庄:「さようでございます」
愛原:「私達の迎えなんかしてていいんですか?」
新庄:「御心配には及びません。旦那様のお車は、旦那様の会社と契約している役員車のドライバーが担当しております」
愛原:「あ、運転手さん、別にいるんだ」
新庄:「はい。私は家事使用人としての運転手です。旦那様が通勤等に御使用になられておられる役員車におきましては、タクシー会社から派遣された専属ドライバーが担当してございます。もっとも、私も昔はそこにいたのですが」
新庄運転手も、元をただせばタクシーの運転手だったか。
車は一路、球技大会の行われる上野高校へと向かった。