報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「連休2日目の終わり」

2018-11-15 19:27:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月7日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「え、なに?あのゲームにリサが?」
 リサ:「うん……」

 夕食を囲みながら私は、リサと斉藤さんがどうして寝入っていたのか聞いていた。
 因みに斉藤さんはもう帰宅している。
 迎えが来たのはいいのだが、それが本当にメイド服を着たメイドさんなのだから驚いた。
 どうやら本当に大金持ちの御嬢様らしい。
 私立の中学校だから、そういうコが通学していてもおかしくはないが、そんな所にリサを入れて良かったのだろうか少し不安になった。

 高橋:「あのゲームをやれば、如何に『リサ・トレヴァー』がクソ化け物か分かるってものですよ、先生」
 愛原:「ふーん……」
 高橋:「おい、リサ。ガンサバイバーの方はやったのか?」
 リサ:「それはまだ……」

 ゲームの中に出て来る自分のオリジナルが、どういう経緯で化け物となったのか説明される。
 そして、その末路も……。
 それがとても可哀想で、いくら自分は派生型の完全版とはいえイメージが重なってしまい、涙が止まらなくなってしまったそうだ。
 それに斉藤さんももらい泣きして、2人で一緒に泣きじゃくり、泣き疲れて寝てしまったとのことである。

 高橋:「ガンサバイバーをやれば、こいつのオリジナルがどうなったのか分かりますよ」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「オリジナルの『リサ』は、やっとママと再会できたんだけど、飛び降りて死んじゃったんだよ?」

 オリジナルの『リサ・トレヴァー』は生き別れた母親を捜すという目的の為に、ただ洋館の敷地内を歩き回っていただけだ。
 白骨死体と化した母親を見つけ、その頭蓋骨を抱えて奈落の底へ飛び降りて『リサ・トレヴァー』戦は終了する。

 高橋:「甘い。外伝のガンサバイバーでは、それでも死に切れず、今度はアンブレラの関係者を皆殺しにしてやろうと動き回るんだ。アルバート・ウェスカーを主人公としてな。で、最後には洋館の自爆装置に巻き込まれて今度こそ死んだってことになったらしいぜ?」
 愛原:「何だか信じられないなぁ。マグナムを撃ち込んでも死ななかったのに、建物の爆発くらいで死ぬかね?」
 高橋:「さすがに体をバラバラにしてやれば死ぬでしょう」
 愛原:「うーん……」

 私が腑に落ちないでいると、リサが私の肩を叩いた。

 リサ:「愛原さん、あれ!」

 リサがテレビを指さした。
 今、ニュースを観ようと思ってテレビを点けていたのだが……。

 〔「……正信号は明日午前10時頃、横浜港に入港する予定です」〕

 愛原:「ありゃ?テレビでやってるぞ?秘密じゃなかったのか?」
 高橋:「さすがにあんなデカ物を内緒でこっそり横浜港に入港させるわけにはいかないので、ある程度の情報は流しているんでしょうね」
 愛原:「なるほど、そうか」

〔「……正信号は今年元日、太平洋沖で発生したバイオハザードの後、沈没した顕正号と同型の姉妹船で……」〕

 愛原:「あんな感じだったのかぁ?」
 高橋:「ま、あんな感じですね」

 テレビには現役時代の正信号の内部の映像が出てきた。

 高橋:「バイオハザード発生前の顕正号もあんな感じでしたよ」
 愛原:「あんまり思い出せないなぁ……」

 私は首を傾げた。

 高橋:「まあ、先生はずっと意識を無くしておいででしたから……」
 愛原:「うーん……」

〔「……尚、正信号にはBSAA関係者並びに一部の関係者しか内部に入れません。これは顕正号が如何にしてバイオテロに巻き込まれたか、その検証を行う為に同型の姉妹船である正信号を使うというのが理由であり……」〕

 高橋:「実際に乗ってみれば、きっと先生の記憶も戻りますよ」
 愛原:「そうだといいなぁ……」

[10月8日02:02.天候:曇 愛原のマンション]

 私は夜中にふと目が覚めた。

 愛原:「ん……トイレ……」

 私は寝ぼけ眼でそっと部屋を抜け出し、トイレに向かった。

 愛原:「うう……」

 明日……いや、もう日付が変わって今日か。
 いくら姉妹船とはいえ、あのバイオハザードが起きた船と全く同型の船に乗り込めるということで、少し緊張しているのかもな。

 愛原:「!?」

 その時、玄関のドアが開け閉めされる音がした。
 玄関のドアには鍵が掛かっている。
 それなのに、開閉した音がしたということは……。
 誰かが出て行った?
 高橋か?
 私はトイレから出ると、玄関の方を見た。
 すると、サンダルが無くなっている。
 で、玄関の鍵が開いていた。
 いくらエントランスがオートロックだからって、これは不用心だな。
 私は玄関の外に出た。
 そして、周りを見渡す。

 愛原:「!?」

 夜中で薄暗くなっているエレベーターホール。
 そこからエレベーターに乗り込むはリサ。
 一体、どこへ行こうというのか。
 私が後を追うと、エレベーターは意外にも上へ向かっていた。
 そして、着いたのは屋上。
 LED表示のインジゲーターに、『R』と出ているから間違いない。
 私は上のボタンを押して、エレベーターを呼び出した。
 こんな真夜中に他にエレベーターに乗ろうとしている住人や訪問者がいるはずがなく、すぐにエレベーターは下りてきて、このフロアで上行きに変わった。

 愛原:「こんな時間に、屋上に何しに行くんだ?」

 昼間に寝てしまったから、眠れないのかもしれない。
 私がそう思っていると、エレベーターはすぐに屋上に着いた。
 そして、屋上に出るドアを少し開けて私は固まった。

 愛原:「!?」

 リサが着ていた服を脱ぎだしたのだ。
 まだ体の線が硬く、胸もようやく膨らみ出したかどうか分かる程度のリサの裸体。
 あれだけ見ていると、普通のローティーンの少女という感じだが……。
 私が更に固まったのは、リサの体が見る見るうちにクリーチャーに変化していったからだ。
 背中からは巨大なサソリの尻尾のような触手が2本生え、更に黒い触手が3本程鞭のようにしなる。

 リサ:「キャハハハハッ!」

 月明かりに向かって高くジャンプしたその姿は、正に異形。
 しかも、上空に飛んでいたコウモリを2匹捕まえると、それをそのまま口に運んだ。

 愛原:「な、何という……」

 これは……どうしたらいいものだろうか?
 リサは暴走してしまったのだろうか?
 一体、どうしたらいいのだろう?

 1:高橋を呼んで来る。
 2:もうしばらく様子を見る。
 3:リサに声を掛けてみる。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「連休2日目」 2

2018-11-15 10:14:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月7日15:58.天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は臨時の呼び出しで、霞ヶ関まで行ってきた。
 やはりというべきか、善場さんは法務省に籍を置く職員だった。
 バイオテロというのは、こと日本においては国際テロの1つと認識されている。
 霧生市の場合は、表向きには『事故』ということになっている。
 今は潰れたアンブレラの日本法人が、アメリカの本社から託されたウィルスを杜撰な管理で漏洩させ、BOWを暴走させたものであると。

 法務省と言っても、実際はそれのとある外局に詰めているらしい。
 恐らく公安調査庁だとは思うのだが、それともまた違う部署のどこかの部屋に通されて話をした。
 或いは、法務省所属というのもカムフラージュなのかもしれない。
 何しろ私には扱えない政治的な領域だ。
 私のような(本来ならば)一般人の私達が立ち入って良い場所ではない。

〔まもなく菊川、菊川。お出口は、右側です〕

 私と高橋を乗せた10両編成の都営地下鉄は、無事に菊川駅のホームに滑り込んだ。
 因みにこの駅も、11月にはホームドアの設置工事が終わって稼働するという。

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ〜、菊川〜〕

 私と高橋は電車を降りた。
 改札口へ向かうエスカレーターへ、他の乗客達と一緒に向かう。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 各駅停車しか止まらない小さな駅では、電車の停車時間も短い。
 私達がホームを歩いていると、すぐに電車は走り出した。

 愛原:「ラクーン市の地下鉄も、トールオークスの地下鉄も、バイオハザードさえ無ければ普通に走っていただろうになぁ……」
 高橋:「え?ああ、アメリカの話ですか。日本だってあったそうじゃないですか。カルト宗教のバイオテロ」
 愛原:「オウムのことか?あれ、バイオテロじゃねーよ」

 さしものオウムも、サリン作れる頭はあったが、ゾンビウィルスを作る頭までは無かったようだ。

 愛原:「高橋、その時いくつ?」
 高橋:「ちょうど生まれた歳です」
 愛原:「あ、そう。……って、ええ!?」

 最近はオウムの地下鉄テロのことを知らず、後継団体の神秘性に惹かれて入信する若者が増えているとのことだが、こういうことか。
 そもそもリアルタイムで知らない世代なのか。
 高橋の場合、私に憧れてうちの事務所に押し掛け入所したわけだが、ややもするとその憧れが私じゃなくて、某教祖様だったりすると【お察しください】。

 愛原:「時代を感じるなぁ……」
 高橋:「そうですか?」

 

 コンコースに上がって、改札口を出る。

 愛原:「それにしても参ったなぁ……。話長くて」
 高橋:「全くですね。先生の貴重なヒマな時間を無駄に使いやがるなんて、いくら政府高官でもナメてますよ」
 愛原:「いやいや、善場さんはその政府高官の代理人(エージェント)だから。……あ、てことはいいのか?」
 高橋:「ですよね。ちょっと法務省にサリン蒔いて来ます」
 愛原:「オマエ知ってんじゃねーかよ、オウム事件!てか、やめなさい!」

 私は高橋の肩を掴んで、何とか地下鉄の駅から引きずり出した。
 午前中はシトシトと降っていた雨も、ようやく止んでくれたようだ。
 しかし、まだどんよりと曇っている。
 心なしか、少しは肌寒いと感じる。
 秋は段々と深まっているようだな。

 愛原:「斉藤さんは帰ったかな」
 高橋:「もし何でしたら、俺が追い出してやりますよ」
 愛原:「しなくていい!」

 私達は同じ地区内にある賃貸マンションに帰った。

 愛原:「ただいまァ」
 高橋:「オラッ、御主人様のお帰りだぞー?ちゃんと出迎えろー!『お帰りなさいませ、御主人様』ってよー!」
 愛原:「どこのメイドカフェだ!?」

 私達がリビングに行った時だった。

 愛原:「ん!?」

 リビングのソファには仲良く座って寝込んでいるリサと斉藤さんの姿があった。
 手にはゲーム機のコントローラーを持ったままである。

 愛原:「ゲームに夢中になって疲れて寝ちゃったのか?」
 高橋:「ったく、俺のゲーム、勝手に使いやがって……」
 愛原:「いいじゃないか、別に。データ消しちゃったわけじゃないだろー?てか、もうそろそろ飽きたから売りに出すとか言ってたじゃないか」
 高橋:「ま、そりゃそうっスけど……。どうします、起こしますか?」
 愛原:「いや、いいだろう。毛布を掛けておこう。いざとなったら、斉藤さんの家に連絡して……」
 高橋:「え?連絡先分かんないっスよ?」
 愛原:「あ、そうか。じゃあ、いいや。まだ明るい時間だし、暗くなる前に起こせばいいだろう。取りあえず、寝かせといてやれ」
 高橋:「分かりました。取りあえず、ゲームだけ先に片付けておきます」
 愛原:「ああ、分かった。俺は毛布取ってくる」

 私は納戸に行こうとした。
 あそこには、まだ使っていない冬用の毛布があったはずだ。
 と、そこへ……。

 高橋:「ぷっ!くっ……たはははははははは!」

 高橋の笑い声が聞こえてきた。
 何だ何だ?
 普段はポーカーフェイス、笑ってもせいぜい口元に笑みを浮かべるだけの高橋があれだけ大笑いするのは珍しいことだぞ。
 私は野次馬根性丸出しで、リビングに踵を返した。

 愛原:「どうした、高橋!?」
 高橋:「いえね、先生。これを見てくださいよ」
 愛原:「ん?」

 高橋が持っていたのは、“バイオハザード”だった。
 それも初期のリメイク版だ。

 愛原:「オマエ、いくらPS4のリメイク版とはいえ、“バイオハザード1”まだ持ってたんだな?で、それの何がおかしかったんだ?」
 高橋:「この作品、『リサ・トレヴァー』が出て来るんですよ」
 愛原:「えっ?」
 高橋:「いえ、ですから、『リサ・トレヴァー、リサ・トレヴァーを倒すの図』を……ぷっ、くはははははははは!」

 意外と笑いの沸点低いんだな、コイツ。
 というか……。

 愛原:「ゲームのオリジナル版と、ここにいるリサは似て非なるものだと思っていいって善場さんに言われただろ。リサも自分のことだとは思ってないって……」
 リサ:「ううん……」

 そこへリサが目を覚ました。

 リサ:「……あれ?」
 愛原:「よお、おはよう。もう朝だぞ?w」
 リサ:「ええっ!?」
 愛原:「はは、冗談冗談。どうしたんだ?疲れて寝るくらい夢中になったのか?」
 リサ:「う、うん。まあね……」

 リサは隣に寝ている斉藤さんを揺り起こした。

 リサ:「サイトー、サイトー。起きて」
 斉藤:「んん……」
 愛原:「おはよう。随分と夢中になったみたいだね?」
 斉藤:「あっ、あっ!リサさんのお父さん!」

 やっぱり私、老けて見えるかなぁ……。

 愛原:「もうそろそろ帰った方がいいんじゃない?」
 斉藤:「あっ、はい!」

 時計を見た斉藤さんは驚いて帰り支度を始めた。

 愛原:「俺が小学生の時、疲れて寝落ちするまでスーファミやりまくって親に怒られた記憶があるが、今は中学生でもやるんだな」
 高橋:「そりゃ先生、今の中坊なんてまだまだガキですから」

 高橋は笑っていたが、真相は実は意外とシュールなものだったようだ。
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする