[10月28日06:30.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷2F東側ゲストルーム]
藤谷:「……不失心者 見此良薬 色香倶好 卽便服之……」
稲生:「……不失心者 見此良薬 色香倶好 卽便服之……」
朝の勤行の2人。
どうせ2階東側にいるのは稲生と藤谷だけだから、特に気にせず大きな声で勤行をしても問題はあるまい。
そう思っていた信徒2人であったが……。
藤谷:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」
五座の御観念文まで終了し、最後に題目三唱で終了する。
藤谷:「ご苦労さま」
稲生:「いえいえ。何だか、久しぶりの勤行でした」
藤谷:「その割にはいい声出てたよ」
稲生:「ははは……。あ、そろそろ朝ご飯の時間なので、食堂に行ってみましょうか」
藤谷:「分かった」
部屋の外に出た稲生達。
稲生:「んっ!?」
藤谷:「こ、これは……!?」
部屋の外、稲生達の勤行の声を聞いたトラップが全て破壊され、近くにいたメイド人形達まで被害が及ぶという惨事が起きていた。
[同日07:00.天候:晴 マリアの屋敷1F西側 大食堂]
マリア:「半端無いなー、あんた達の勤行とやらは……」
呆れるマリア。
稲生:「ここが“魔”の巣窟であることを忘れていました」
藤谷:「“魔の者”とやらも、俺達の勤行で倒せるんじゃね?」
稲生:「いや、それは多分ムリです」
マリア:「絶対ムリ」
藤谷:「そ、そうスか……。それであの、イリーナ先生は?」
マリア:「何か知らんが、藤谷さんの部屋を水晶球で覗こうとしてた」
藤谷:「えっ!?」
マリア:「キモいムフフ顔で」
藤谷:「何ですと!?」
マリア:「覗きなんて趣味悪いし、BBAのムフフ顔はキモいから止めたんだけど、振り切られちゃってね……」
稲生:「そ、それで?」
マリア:「藤谷さん達の勤行が始まった途端、水晶球が爆発してそのままKOだよ。今、寝込んでる」
藤谷:「ええっ、マジっすか!?」
稲生:「Oh!Jesus!」
藤谷:「俺達、そんな凄いことやっちゃった???」
稲生:「普通に日蓮正宗式の朝勤行やっただけですよね???」
マリア:「コホン。とにかく、このままでは屋敷が崩壊しかねないので、勤行は禁止だ」
稲生:「思い出した。それもあって、『日蓮正宗は離檀した方がいい』ってことになったんだっけ」
マリア:「そう」
藤谷:「しかし作者と違って稲生君自体、信仰心が失せたわけでもないし、『魔道師になるから信心活動できません』なんて、下手すりゃ黄色い救急車呼ばれるレベルだから、誰も信じてくれなくてね。離檀願は今でも俺が預かってるよ」
稲生:「そういうもんですか」
藤谷:「とにかく、イリーナ先生に申し訳無いことをしました。お見舞いさせてください」
マリア:「朝食が終わったら案内するよ。勝手に男の部屋を覗いた仏罰とやらだろう。盛りのついたBBAにはいい薬だ」
本人がいないとはいえ、かなりストレートな物言いをするのは欧米人ならではか。
[同日08:00.天候:晴 マリアの屋敷2F西側 オーナーズルーム]
真下の1階はマリアが使用している。
2階の主人の部屋は、やはり豪勢な造りだ。
イリーナ:「うーん……うーん……腰が……腰がぁ……!ダルい……死ぬ〜……!」
Ω\ζ°)チーン
マリア:「別に、元気みたいだから見舞はいいみたいだ」
藤谷:「ええっ!?」
稲生:「水晶球の爆発で、どうして腰痛とダルさが???」
藤谷:「せ、先生!水晶球は弁償しますんで、どうか1つ、お慈悲を!」
イリーナ:「あ〜、そうだねぇ……。大魔道師の大事な水晶球を破壊するなんて、大したタマだねぇ……」
藤谷:「何でしたら今、ここに小切手がありますんで!」
藤谷は黒いスーツのジャケットから長財布を出した。
財布だけで数万円しそうな感じだが、その中には如何にも札束が入っていそうな感じでもある。
イリーナ:「いやいや。そんなものは必要無いよ」
藤谷:「で、では!?」
イリーナ:「この屋敷のエントランスに鍵を掛けた……!あと、屋敷の全トラップを作動させたから、永遠にこの屋敷で一緒に暮らしましょう……!フフフフフ……!」
藤谷:(゚Д゚;)
稲生:( ゚д゚)
マリア:「……私の部屋にマスターキーがあるし、トラップを全て止める装置もあるから、それで帰ってくれ」
マリアも一応、この屋敷においては管理権限のある住み込みの管理人である。
藤谷:「へ、へい」
稲生:「それじゃ先生、お大事に」
イリーナ:「あっ、待って待って!さっきの全部、ウソよ、ウソ!見捨てちゃイヤーン!
」
魔法使いの師弟関係も上下関係は厳しいものがあるのだが、その弟子がマスター認定されるとその距離は一気に縮まるということか。
[同日09:00.天候:晴 マリアの屋敷 エントランス]
稲生:「忘れ物は無いですか、班長?」
藤谷:「おう、バッチリ!」
藤谷は車に乗り込んでエンジンを掛けた。
稲生:「昨日来た道を真っ直ぐ戻れば、あの県道の峠道に出れますから」
藤谷:「了解。それじゃ、今度は……」
稲生:「正証寺でお会いしましょう」
藤谷:「おっ、そっか。1度上京するって言ってたもんな。それじゃ、正証寺で会おう」
稲生:「よろしくお願いします」
藤谷:「それじゃマリアさ……あ、いや、先生。イリーナ先生によろしくお願いします」
マリア:「ああ。藤谷さんも、変なBBAに目を付けられないように」
稲生:「ええっ?」
藤谷は車を走らせて、屋敷をあとにした。
未舗装の砂利道とはいえ、そんなに走りづらくは無い。
まるで林道を走っているかのようだ。
そしてしばらく進むと、例のトンネルが見えて来た。
トンネルはそんなに長くなく、入るとすぐに出口が見えて来るほどだ。
但し、照明は無い。
そこをヘッドライトを照らして進み、何の問題も無く反対側に抜けた。
藤谷:「おや?」
藤谷はミラーでさっきのトンネルを見た。
トンネルの坑口の周りは、白いコンクリートになっていた。
まるで、最近の鉄道トンネルのようである。
確か来た時は、赤いレンガ造りだったはずだが……。
藤谷:「ヘタに調べない方がいいな。要するに、あれが魔法使いの家に出入りする為のゲートなんだろう」
藤谷は無事に県道に出ると、そのまま白馬村の中心街へ車を走らせた。
[同日同時刻 天候:晴 マリアの屋敷2F西側 オーナーズルーム]
イリーナ:「…………」
イリーナは机の前にタロットを並べていた。
そして、その占いで出た結果に対して眉を潜めていた。
マリア:「師匠、入ります」
イリーナ:「いいよ」
マリア:「まだ具合が悪いんですか?前にエレーナが押し売りしてきた薬がありますけど、使います?」
イリーナ:「いや、大丈夫大丈夫。ハーブティーでも入れてくれれば」
マリア:「分かりました。……何かあったんですか?」
イリーナ:「うん、今度の稲生君の大石寺参詣なんだけどね……」
マリア:「何か変なことが?」
イリーナ:「特に無いわ。ユウタ君と、それと私達はね。ああ、もちろん藤谷さんも」
マリア:「?」
イリーナ:「でも一応、大石寺には私達も行きましょう。本当はユウタ君達が参詣している間、私達は街中で観光でもしたいところだけど」
マリア:「はあ……」
イリーナは何も無いとは言うが、そこは長年師事してきたマリア。
やはり、イリーナが何か企んでいると踏んだのである。
藤谷:「……不失心者 見此良薬 色香倶好 卽便服之……」
稲生:「……不失心者 見此良薬 色香倶好 卽便服之……」
朝の勤行の2人。
どうせ2階東側にいるのは稲生と藤谷だけだから、特に気にせず大きな声で勤行をしても問題はあるまい。
そう思っていた信徒2人であったが……。
藤谷:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」
五座の御観念文まで終了し、最後に題目三唱で終了する。
藤谷:「ご苦労さま」
稲生:「いえいえ。何だか、久しぶりの勤行でした」
藤谷:「その割にはいい声出てたよ」
稲生:「ははは……。あ、そろそろ朝ご飯の時間なので、食堂に行ってみましょうか」
藤谷:「分かった」
部屋の外に出た稲生達。
稲生:「んっ!?」
藤谷:「こ、これは……!?」
部屋の外、稲生達の勤行の声を聞いたトラップが全て破壊され、近くにいたメイド人形達まで被害が及ぶという惨事が起きていた。
[同日07:00.天候:晴 マリアの屋敷1F西側 大食堂]
マリア:「半端無いなー、あんた達の勤行とやらは……」
呆れるマリア。
稲生:「ここが“魔”の巣窟であることを忘れていました」
藤谷:「“魔の者”とやらも、俺達の勤行で倒せるんじゃね?」
稲生:「いや、それは多分ムリです」
マリア:「絶対ムリ」
藤谷:「そ、そうスか……。それであの、イリーナ先生は?」
マリア:「何か知らんが、藤谷さんの部屋を水晶球で覗こうとしてた」
藤谷:「えっ!?」
マリア:「キモいムフフ顔で」
藤谷:「何ですと!?」
マリア:「覗きなんて趣味悪いし、BBAのムフフ顔はキモいから止めたんだけど、振り切られちゃってね……」
稲生:「そ、それで?」
マリア:「藤谷さん達の勤行が始まった途端、水晶球が爆発してそのままKOだよ。今、寝込んでる」
藤谷:「ええっ、マジっすか!?」
稲生:「Oh!Jesus!」
藤谷:「俺達、そんな凄いことやっちゃった???」
稲生:「普通に日蓮正宗式の朝勤行やっただけですよね???」
マリア:「コホン。とにかく、このままでは屋敷が崩壊しかねないので、勤行は禁止だ」
稲生:「思い出した。それもあって、『日蓮正宗は離檀した方がいい』ってことになったんだっけ」
マリア:「そう」
藤谷:「しかし作者と違って稲生君自体、信仰心が失せたわけでもないし、『魔道師になるから信心活動できません』なんて、下手すりゃ黄色い救急車呼ばれるレベルだから、誰も信じてくれなくてね。離檀願は今でも俺が預かってるよ」
稲生:「そういうもんですか」
藤谷:「とにかく、イリーナ先生に申し訳無いことをしました。お見舞いさせてください」
マリア:「朝食が終わったら案内するよ。勝手に男の部屋を覗いた仏罰とやらだろう。盛りのついたBBAにはいい薬だ」
本人がいないとはいえ、かなりストレートな物言いをするのは欧米人ならではか。
[同日08:00.天候:晴 マリアの屋敷2F西側 オーナーズルーム]
真下の1階はマリアが使用している。
2階の主人の部屋は、やはり豪勢な造りだ。
イリーナ:「うーん……うーん……腰が……腰がぁ……!ダルい……死ぬ〜……!」
Ω\ζ°)チーン
マリア:「別に、元気みたいだから見舞はいいみたいだ」
藤谷:「ええっ!?」
稲生:「水晶球の爆発で、どうして腰痛とダルさが???」
藤谷:「せ、先生!水晶球は弁償しますんで、どうか1つ、お慈悲を!」
イリーナ:「あ〜、そうだねぇ……。大魔道師の大事な水晶球を破壊するなんて、大したタマだねぇ……」
藤谷:「何でしたら今、ここに小切手がありますんで!」
藤谷は黒いスーツのジャケットから長財布を出した。
財布だけで数万円しそうな感じだが、その中には如何にも札束が入っていそうな感じでもある。
イリーナ:「いやいや。そんなものは必要無いよ」
藤谷:「で、では!?」
イリーナ:「この屋敷のエントランスに鍵を掛けた……!あと、屋敷の全トラップを作動させたから、永遠にこの屋敷で一緒に暮らしましょう……!フフフフフ……!」
藤谷:(゚Д゚;)
稲生:( ゚д゚)
マリア:「……私の部屋にマスターキーがあるし、トラップを全て止める装置もあるから、それで帰ってくれ」
マリアも一応、この屋敷においては管理権限のある住み込みの管理人である。
藤谷:「へ、へい」
稲生:「それじゃ先生、お大事に」
イリーナ:「あっ、待って待って!さっきの全部、ウソよ、ウソ!見捨てちゃイヤーン!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/heart.gif)
魔法使いの師弟関係も上下関係は厳しいものがあるのだが、その弟子がマスター認定されるとその距離は一気に縮まるということか。
[同日09:00.天候:晴 マリアの屋敷 エントランス]
稲生:「忘れ物は無いですか、班長?」
藤谷:「おう、バッチリ!」
藤谷は車に乗り込んでエンジンを掛けた。
稲生:「昨日来た道を真っ直ぐ戻れば、あの県道の峠道に出れますから」
藤谷:「了解。それじゃ、今度は……」
稲生:「正証寺でお会いしましょう」
藤谷:「おっ、そっか。1度上京するって言ってたもんな。それじゃ、正証寺で会おう」
稲生:「よろしくお願いします」
藤谷:「それじゃマリアさ……あ、いや、先生。イリーナ先生によろしくお願いします」
マリア:「ああ。藤谷さんも、変なBBAに目を付けられないように」
稲生:「ええっ?」
藤谷は車を走らせて、屋敷をあとにした。
未舗装の砂利道とはいえ、そんなに走りづらくは無い。
まるで林道を走っているかのようだ。
そしてしばらく進むと、例のトンネルが見えて来た。
トンネルはそんなに長くなく、入るとすぐに出口が見えて来るほどだ。
但し、照明は無い。
そこをヘッドライトを照らして進み、何の問題も無く反対側に抜けた。
藤谷:「おや?」
藤谷はミラーでさっきのトンネルを見た。
トンネルの坑口の周りは、白いコンクリートになっていた。
まるで、最近の鉄道トンネルのようである。
確か来た時は、赤いレンガ造りだったはずだが……。
藤谷:「ヘタに調べない方がいいな。要するに、あれが魔法使いの家に出入りする為のゲートなんだろう」
藤谷は無事に県道に出ると、そのまま白馬村の中心街へ車を走らせた。
[同日同時刻 天候:晴 マリアの屋敷2F西側 オーナーズルーム]
イリーナ:「…………」
イリーナは机の前にタロットを並べていた。
そして、その占いで出た結果に対して眉を潜めていた。
マリア:「師匠、入ります」
イリーナ:「いいよ」
マリア:「まだ具合が悪いんですか?前にエレーナが押し売りしてきた薬がありますけど、使います?」
イリーナ:「いや、大丈夫大丈夫。ハーブティーでも入れてくれれば」
マリア:「分かりました。……何かあったんですか?」
イリーナ:「うん、今度の稲生君の大石寺参詣なんだけどね……」
マリア:「何か変なことが?」
イリーナ:「特に無いわ。ユウタ君と、それと私達はね。ああ、もちろん藤谷さんも」
マリア:「?」
イリーナ:「でも一応、大石寺には私達も行きましょう。本当はユウタ君達が参詣している間、私達は街中で観光でもしたいところだけど」
マリア:「はあ……」
イリーナは何も無いとは言うが、そこは長年師事してきたマリア。
やはり、イリーナが何か企んでいると踏んだのである。
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