報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「デイライト会議」

2024-08-04 11:56:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月24日16時07分 天候:晴 東京都港区新橋2丁目 東京メトロ銀座線1521電車・最後尾車内→東京メトロ新橋駅]

〔まもなく、新橋です。出口は、右側です〕

 リサと愛原を乗せた銀座線の電車は、浅い地下トンネルを走行していた。
 アジア一古い地下鉄ということもあり、トンネルは全体的に浅い所を通っている。
 その為、戦時中は大阪の御堂筋線と違い、防空壕の代わりや避難電車の運行は行われていない。

〔お客様に、お願い致します。お降りの際は、お近くのドアから、前のお客様に続いて、お降りください。また、ドア付近のお客様は、一旦ホームに降りて、お待ちください。御協力を、お願い致します〕

 夕方ラッシュはまだ始まっていないが、それでも東京の賑わう場所のみを走る地下鉄ということもあり、車内はだいぶ賑わって来た。

〔しんばし、新橋です。電車とホームの間に、広く空いている所があります。足元に、ご注意ください。1番線の、電車は、渋谷行きです〕

 ドアが開いたので、電車を降りた。
 今のリサは人間の姿に化けているが、それでも鬼型BOWということもあり、五感は普通の人間より優れている。
 鼻に、黴臭い臭いがついた。

 

 ホームを歩いていると、アップテンポな発車メロディが鳴り響く。
 塩塚博氏作曲の“スタートライン”という曲名である。

〔ドアが閉まります。手荷物を、お引きください。無理なご乗車は、おやめください〕

 すぐに電車が発車していく。
 丸ノ内線ではワンマン運転が行われているが、銀座線ではまだ車掌が乗務している。

〔都営浅草線、JR線、ゆりかもめは、お乗り換えです〕

 愛原「まだ、頭がボーッとしてる?」
 リサ「さっきよりは……」
 愛原「そうか。まあ、デイライトでコーヒーくらい出してくれるだろう。それ飲んで目を覚ませ」
 リサ「うん……」

 リサ自身は、そんなにお茶やコーヒーが好きというわけではない。
 もちろん嫌いというわけではなく、出されたら飲むといった感じ。
 目が覚めるというのは分かっているので、愛原の言う通り、向こうでコーヒー出されたら飲もうかくらいには思っていた。
 あと、事務所で愛原が飲んでいるのをマネして飲むというのもある。

[同日16時15分 天候:晴 同地区内 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場「本日は御足労頂き、ありがとうございます」

 事務所に行くと、善場が待っていた。
 すぐに会議室に通される。

 善場「コーヒーで宜しいですか?」
 愛原「私は『お構いなく』なんですが、リサがまだ頭が覚めてないらしくて……」
 リサ「変な夢見るくらい、中途半端に意識が飛んでからね」
 善場「ほお……。変な夢ですか……」

 善場は意外そうな顔をした。

 善場「興味がありますね。その話も聞かせてください」
 リサ「そうなの?別にいいけど……」
 善場「リサのようなBOWが見る夢というのは、体内に有しているGウィルスが特異菌が見せる夢という可能性も多々ありますから」
 愛原「なるほど……。イーサン・ウィンターズ氏も、意識不明だった時に、倒したはずのジャック・ベイカーが人間の姿で現れた夢を見たと手記に書いていましたね」
 善場「その通りです」
 リサ「ふーん……。その場合、目が覚めると元の姿に戻ってたりするんだけど、今回は無かったなぁ……」
 善場「必ずしも、第1形態に戻るというわけでもないでしょう?」
 リサ「まあ……。とにかく、お持ちしますので、少々お待ちください」

 善場はリサだけでなく、愛原のコーヒーも持って来た。

 愛原「ああ、これはどうも恐れ入ります」
 リサ「サンブラ茶じゃないよね?」
 善場「違いますよw」

 リサの指摘に、普段はポーカーフェイスの善場も、一瞬だけ顔を崩した。

 愛原「サンブラ茶?」
 リサ「学校の七不思議に出て来るの。確か、90年代半ばくらいの回の時の記録にあるよ」
 愛原「何だい?東京中央学園じゃ、そんな怪しげな名前のお茶の栽培もしてるのかい?」
 リサ「違う違う」
 善場「正体は、寄生植物の1つ……って、今はそういう話をしてる場合ではありません」
 リサ「そうだった。で、なに?」

 リサはコーヒーをズズズと啜りながら聞いた。
 尚、愛原同様、ブラック加糖である。
 これはリサの好みではなく、愛原がそういう飲み方をしているので真似しているだけである。
 コーヒーの飲み方だけでなく、その他の食べ物も、愛原の食べ方を真似している。

 善場「皆さんが旧校舎の女子トイレで見つけた金庫についてです」
 愛原「調べがついたんですね?」
 善場「おおよそは。まず、あの金庫は、傘森倉庫から盗まれたものでした」
 愛原「傘森倉庫。確か、日本アンブレラ100%出資の子会社、アンブレラ・ロジスティックスが解散してできた倉庫会社ですね」
 善場「そうです」

 日本アンブレラ解散後、その運送部門だった件の会社は、今はUL運送として再スタートしている。
 一部の元社員達はそこから独立し、『ユー・ライン』とか『傘森倉庫』を設立している。

 善場「アンブラ・ロジスティックス時代から使用されていた物で、古くなったので廃棄処分寸前だったそうです。ですので、傘森倉庫としては被害届を出すつもりは無いそうですが」
 愛原「確かに、古い金庫でしたね。でも、中身は……」
 善場「中身についても、廃棄処分寸前だったので、使用していなかったそうです。学習塾のパンフレットについても、全く知らないそうです」
 愛原「すると、誰かが傘森倉庫から金庫を盗んで、旧校舎の女子トイレに置いて、その中に塾のパンフレットを入れたってことですか?」
 善場「その可能性が高いです」
 リサ「誰が何の為に?」
 善場「それをこれから推理してみようではありませんか」
 愛原「可能性が高い物から順に、ホワイトボードに書き出してみましょう。まず、学習塾のパンフレットですが、これは適当に入れた可能性は低いです。入れた者が、何らかのメッセージ性を込めていると見て間違い無いでしょう」
 善場「そうですね。因みにこの学習塾ですが、特にアンブレラとの関係性は見当たりませんでした。それだけでなく、アンブレラ以外のバイオテロ組織もです」
 リサ「鍵を持っていたのは、城ヶ崎だよね?城ヶ崎と関係があるんじゃない?」
 善場「いい所に気がつきました。自殺した城ヶ崎さんは、ここの塾生だったそうです」
 リサ「やっぱり!」
 善場「それと、モールデッド化した弟の方もです」
 愛原「何かありそうですね。私達の前に現れた仮面のコについては?」
 善場「警視庁が追っていますが、未だ特定には至っておりません。何しろ、学校の監視カメラにも、『突然映った』といった感じなので」
 リサ「モールデッドの特徴だ……」

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