[10月16日10:30.天候:晴 長野県北部・マリアの屋敷]
エレーナ:「お届け物でーっす!」
ホウキに跨ったエレーナが、屋敷の玄関前に舞い降りた。
イリーナ:「おー、エレーナ。久しぶりだねぇ……」
エレーナ:「御無沙汰してます。えー、早速注文のアーケードゲームの筐体を持って来ました」
イリーナ:「うんうん、ご苦労さんだねぇ」
稲生:「どこにあるんだい?ホウキで持ってこれるかなぁと思ってたけど……」
エレーナ:「ゲーム機本体を持って来れるわけないじゃないのよ。もちろん、魔法で小さくしてるさ」
エレーナは肩から掛けているショルダーバッグを下ろすと、その中に入っている小箱を取り出した。
それを床に置くと箱が開いて、中からゲームセンターにあるゲーム機の筐体が現れた。
エレーナはそれをセッティングしながら、
エレーナ:「なに?イリーナ組では、これも修行の1つにするんですか?」
マリア:「いいから、黙ってセットしてくれ」
イリーナ:「んー、まあ、色々とね……。やってみようかと思うのよ」
エレーナ:「いいですねぇ……。うちの先生は宮廷魔導師になったものですから、なかなか私の修行を見てくれないんです」
イリーナ:「そう言いなさんなって。あいつはツンデレだから、必ず魔界であなたの修行ぶりを見てるよー」
マリア:「それ、ツンデレって言います?」
エレーナ:「稲生氏、ルーシー女王から呼び出し食らったんだって?御愁傷様!」
稲生:「御愁傷様なの、僕!?」
マリア:「いいから黙ってセットしろっ!」
そして、どうにかセッティングが終わる。
イリーナ:「じゃあ、伝票にはアタシがサインしておいたよ」
エレーナ:「ありがとうございます。じゃあ、私は他に配達があるんで」
エレーナは玄関の外に出ると、再びホウキに跨って飛び立って行った。
因みにホウキで空を飛ぶ能力を荷物運びに転用したアイディアは、やはり“魔女の宅急便”からの流用らしい。
案外、ダンテ一門の魔道師達は、自分達の存在ぶりを示したメディアのチェックを欠かさないようである。
イリーナ:「じゃあ、始めましょう」
稲生:「いいんですか、先生?僕、かなりこのゲーム、自信がありますよ」
イリーナ:「いいよ。勇太君が勝ったら、明日からマスター(免許皆伝)にしてあげるよ」
稲生:「本当ですか!」
一人前になれたら、晴れてマリアにプロポーズができると意気込んでいたユウタだったが……。
[10月16日13:00.天候:雨 マリアの屋敷]
イリーナ:「アタシゃ、何もランチ抜きって指示を出した覚えは無いんだけどね」
マリア:「勝負が終わってから、いきなり雨が降ってきましたよ」
イリーナ:「うーん……。そんなにショックだったかい。アタシにボロ負けしたことが……」
屋敷の東エリアにも応接室はあるのだが、そこに筐体をセッティングしてもらっていた。
で、いつまでもその筐体に座って茫然としている稲生の姿があった。
イリーナ:「あー、勇太君。お昼ご飯食べてないけど、いいの?」
稲生:「…………」
マリア:「どうしてアナスタシア師が、直接師匠に決闘を申し込まなかったか、理解してなかったのか?つまり、そういうことなんだ」
イリーナ:「まあ、1000年生きてるからねぇ……。それに、エレーナと同じく、暇さえあれば“テトリス”やっていた時期もあったからさぁ……」
稲生:「…………」
イリーナ:「別に、負けたから破門にするとかそんなことは無いから。とにかく、これで魔界行きの方は納得してほしいわけ。もちろん、あなた1人で行く必要は無いよ。アタシもそろそろ王宮に顔を出しとこうと思っていたから、ついでにアタシも行くよ」
マリア:「あ、あの、私……私も……」
イリーナ:「んー?あなたはこの屋敷の管理者なんだから、お留守番してなさい」
マリア:「ええっ!?そんなぁっ!」
稲生:「先生。マリアさんと一緒に行くなら、僕も行きます」
イリーナ:「んー、まあ、しょうがないねぇ。王宮に社会科見学に行くのもいいかねぇ……」
マリア:「師匠、バァル大帝最終決戦の際に、王宮には全員行ってますが……」
イリーナ:「そうだっけ?いや〜、最近物忘れが激しくてねぇ……」
マリア:(歳だな)
稲生:(歳か……。見た目は30代なのに……)
イリーナ:「まあいいや。じゃあ、勇太君、夕食までに一っ走りお使い行ってきてくれない?」
稲生:「お使いですか?」
イリーナ:「魔界の穴はここのじゃなくて、エレーナのホテルの方を使うから。そこまでの交通手段を確保してきて。アタシのカード使っていいから」
稲生:「分かりました」
稲生は出掛ける準備の為、一先ず自分の部屋に戻った。
いつの間にか雨は止み、雲間から太陽の光が差し込んでいた。
[同日15:00.天候:晴 屋敷の外の公道、アルピコ交通バス『峠道』バス停]
稲生:「ちょうどバスが出る頃なんで……」
屋敷を出て、森の中の小道を抜けて、ようやく公道に出る。
そこをバスが1日に3便だけ走っているような状態。
それでも、まだ交通の便は良い方なのだという。
欧州に行けば、遠くから魔女の家は見えるのにそこに辿り着けないだとか(そこに辿り着くには禅問答のような謎解きが必要)、地図上では駅前に立地しているのに、鉄道自体が廃線になっていたり、駅が廃止になっていたりと様々(冥界鉄道公社の列車のみ、その線路の上を走行し、その駅に停車する)。
本数は極僅かでも、バスに乗れば普通に辿り着けるマリアの屋敷は易しい方なのである。
もっとも、イギリスのスコットランド地方に在住する魔道師の家は、もっと交通の便が良いので、マリアの家が1番易しいわけではないとのこと。
稲生:「ダニエラさんも来てくれるとは……」
ダニエラ:「…………」(←無言で、しかしニヤリと笑う)
ダニエラはマリアの製作したメイド人形のうちの1体であるが、どうも稲生を気に入ったのか、今では稲生専属メイドとなっている。
マリア自身、稲生が1人で屋敷の外に出た際、護衛として連れて歩く分には良いと思っている。
ダニエラは金管楽器でも入っていそうなケースを手にしているが、実際に中に入っているのは銃火器だったりするので、職質を受けないようにしなければならない。
かつて、メイド人形達の武器はスピアやレイピア、サーベルだったのに、今ではショットガンやマシンガン、ライフルにバージョンアップしており、それだけマリアの魔法力が上がったとも言えるのだが、何とも物騒である。
稲生:「おっ、バス来た」
稲生達は殆ど乗客のいないバスに乗り込んだ。
これで白馬駅まで行って、そこで行きの特急券でも買うつもりである。
稲生1人やマリアと一緒なら高速バスでも良いのだが、さすがに大魔道師たるイリーナにそれは無いだろうと思い、昼間の特急のグリーン車を狙うことにした由。
バスは再び山道を走り出した。
エレーナ:「お届け物でーっす!」
ホウキに跨ったエレーナが、屋敷の玄関前に舞い降りた。
イリーナ:「おー、エレーナ。久しぶりだねぇ……」
エレーナ:「御無沙汰してます。えー、早速注文のアーケードゲームの筐体を持って来ました」
イリーナ:「うんうん、ご苦労さんだねぇ」
稲生:「どこにあるんだい?ホウキで持ってこれるかなぁと思ってたけど……」
エレーナ:「ゲーム機本体を持って来れるわけないじゃないのよ。もちろん、魔法で小さくしてるさ」
エレーナは肩から掛けているショルダーバッグを下ろすと、その中に入っている小箱を取り出した。
それを床に置くと箱が開いて、中からゲームセンターにあるゲーム機の筐体が現れた。
エレーナはそれをセッティングしながら、
エレーナ:「なに?イリーナ組では、これも修行の1つにするんですか?」
マリア:「いいから、黙ってセットしてくれ」
イリーナ:「んー、まあ、色々とね……。やってみようかと思うのよ」
エレーナ:「いいですねぇ……。うちの先生は宮廷魔導師になったものですから、なかなか私の修行を見てくれないんです」
イリーナ:「そう言いなさんなって。あいつはツンデレだから、必ず魔界であなたの修行ぶりを見てるよー」
マリア:「それ、ツンデレって言います?」
エレーナ:「稲生氏、ルーシー女王から呼び出し食らったんだって?御愁傷様!」
稲生:「御愁傷様なの、僕!?」
マリア:「いいから黙ってセットしろっ!」
そして、どうにかセッティングが終わる。
イリーナ:「じゃあ、伝票にはアタシがサインしておいたよ」
エレーナ:「ありがとうございます。じゃあ、私は他に配達があるんで」
エレーナは玄関の外に出ると、再びホウキに跨って飛び立って行った。
因みにホウキで空を飛ぶ能力を荷物運びに転用したアイディアは、やはり“魔女の宅急便”からの流用らしい。
案外、ダンテ一門の魔道師達は、自分達の存在ぶりを示したメディアのチェックを欠かさないようである。
イリーナ:「じゃあ、始めましょう」
稲生:「いいんですか、先生?僕、かなりこのゲーム、自信がありますよ」
イリーナ:「いいよ。勇太君が勝ったら、明日からマスター(免許皆伝)にしてあげるよ」
稲生:「本当ですか!」
一人前になれたら、晴れてマリアにプロポーズができると意気込んでいたユウタだったが……。
[10月16日13:00.天候:雨 マリアの屋敷]
イリーナ:「アタシゃ、何もランチ抜きって指示を出した覚えは無いんだけどね」
マリア:「勝負が終わってから、いきなり雨が降ってきましたよ」
イリーナ:「うーん……。そんなにショックだったかい。アタシにボロ負けしたことが……」
屋敷の東エリアにも応接室はあるのだが、そこに筐体をセッティングしてもらっていた。
で、いつまでもその筐体に座って茫然としている稲生の姿があった。
イリーナ:「あー、勇太君。お昼ご飯食べてないけど、いいの?」
稲生:「…………」
マリア:「どうしてアナスタシア師が、直接師匠に決闘を申し込まなかったか、理解してなかったのか?つまり、そういうことなんだ」
イリーナ:「まあ、1000年生きてるからねぇ……。それに、エレーナと同じく、暇さえあれば“テトリス”やっていた時期もあったからさぁ……」
稲生:「…………」
イリーナ:「別に、負けたから破門にするとかそんなことは無いから。とにかく、これで魔界行きの方は納得してほしいわけ。もちろん、あなた1人で行く必要は無いよ。アタシもそろそろ王宮に顔を出しとこうと思っていたから、ついでにアタシも行くよ」
マリア:「あ、あの、私……私も……」
イリーナ:「んー?あなたはこの屋敷の管理者なんだから、お留守番してなさい」
マリア:「ええっ!?そんなぁっ!」
稲生:「先生。マリアさんと一緒に行くなら、僕も行きます」
イリーナ:「んー、まあ、しょうがないねぇ。王宮に社会科見学に行くのもいいかねぇ……」
マリア:「師匠、バァル大帝最終決戦の際に、王宮には全員行ってますが……」
イリーナ:「そうだっけ?いや〜、最近物忘れが激しくてねぇ……」
マリア:(歳だな)
稲生:(歳か……。見た目は30代なのに……)
イリーナ:「まあいいや。じゃあ、勇太君、夕食までに一っ走りお使い行ってきてくれない?」
稲生:「お使いですか?」
イリーナ:「魔界の穴はここのじゃなくて、エレーナのホテルの方を使うから。そこまでの交通手段を確保してきて。アタシのカード使っていいから」
稲生:「分かりました」
稲生は出掛ける準備の為、一先ず自分の部屋に戻った。
いつの間にか雨は止み、雲間から太陽の光が差し込んでいた。
[同日15:00.天候:晴 屋敷の外の公道、アルピコ交通バス『峠道』バス停]
稲生:「ちょうどバスが出る頃なんで……」
屋敷を出て、森の中の小道を抜けて、ようやく公道に出る。
そこをバスが1日に3便だけ走っているような状態。
それでも、まだ交通の便は良い方なのだという。
欧州に行けば、遠くから魔女の家は見えるのにそこに辿り着けないだとか(そこに辿り着くには禅問答のような謎解きが必要)、地図上では駅前に立地しているのに、鉄道自体が廃線になっていたり、駅が廃止になっていたりと様々(冥界鉄道公社の列車のみ、その線路の上を走行し、その駅に停車する)。
本数は極僅かでも、バスに乗れば普通に辿り着けるマリアの屋敷は易しい方なのである。
もっとも、イギリスのスコットランド地方に在住する魔道師の家は、もっと交通の便が良いので、マリアの家が1番易しいわけではないとのこと。
稲生:「ダニエラさんも来てくれるとは……」
ダニエラ:「…………」(←無言で、しかしニヤリと笑う)
ダニエラはマリアの製作したメイド人形のうちの1体であるが、どうも稲生を気に入ったのか、今では稲生専属メイドとなっている。
マリア自身、稲生が1人で屋敷の外に出た際、護衛として連れて歩く分には良いと思っている。
ダニエラは金管楽器でも入っていそうなケースを手にしているが、実際に中に入っているのは銃火器だったりするので、職質を受けないようにしなければならない。
かつて、メイド人形達の武器はスピアやレイピア、サーベルだったのに、今ではショットガンやマシンガン、ライフルにバージョンアップしており、それだけマリアの魔法力が上がったとも言えるのだが、何とも物騒である。
稲生:「おっ、バス来た」
稲生達は殆ど乗客のいないバスに乗り込んだ。
これで白馬駅まで行って、そこで行きの特急券でも買うつもりである。
稲生1人やマリアと一緒なら高速バスでも良いのだが、さすがに大魔道師たるイリーナにそれは無いだろうと思い、昼間の特急のグリーン車を狙うことにした由。
バスは再び山道を走り出した。