報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「敷島達の逆襲」

2016-10-14 19:14:24 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月8日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 敷島:「すまないな、アリス。休日返上でルカを修理してくれて……」
 アリス:「後で休日料金は頂くからね」
 敷島:「そこはKR団に請求してくれよ」
 アリス:「ところで例のフランケンだけど、チェーンソーでも装備しているの?」
 敷島:「えっ、何で?」
 アリス:「まるで刃物で切ったかのように、スッパリ切れていたよ」
 敷島:「フランケンがバカ力で引きちぎったんじゃないのか!?」
 アリス:「切り口がきれいだもの。刃物で切ったとしか思えない。ルカにそんなことができるのは、チェーンソーとか油圧カッターとか……」
 敷島:「うーむ……。元々は人型の工作機械ロボットとして開発されたヤツだって話だからな、もしかしたらそんなものが付いていたのかも……。ルカのメモリーはどうだ?チップは警察に提供してしまったが、大元のサーバーには残ってるだろ?」
 アリス:「ダメだね。フランケンに組み付かれた時に、バッテリーが破壊されたせいで、そこで映像が止まってる」
 敷島:「そうか……」
 アリス:「それに、ルカの体の使用期限があと1年になっていたでしょう?このまま修理するより、まだ製造途中の新しいボディを急いで完成させて、そのままその体に移行させるっていう方が安くて早いかもしれない」
 敷島:「おっ、その手があったか。じゃあ、それで行こう」

 敷島とシンディは、研究室の中で上半身だけの状態になっているルカと面会した。

 ルカ:「社長。ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません……」
 敷島:「お前は悪くない。悪いのはフランケンと、それを使っている人間達だ。お前は何も気に病むことは無いぞ」
 ルカ:「私の体はどうなるのでしょうか?」
 敷島:「アリス達が今、新しい体を作っている最中だ。それを使えるようにしてやるぞ」

 もちろん、設計は今までと全く同じ。
 部品交換だけでは追いつかなくなる為、ロイドにはそれぞれボディの使用期限が決められている。

 ルカ:「ありがとうございます。また私、皆さんに歌を聴いてもらいたいです」
 敷島:「うん。仕事の方は心配しなくていいぞ。怒りの矛先は全て、フランケンとその一味に向けられている。俺達も手をこまねいていないで、早いとこ捕まえてやるさ」
 シンディ:「手土産にフランケンの部品をここに持ってきてやるから安心しな」
 ルカ:「は、はあ……。(いらなーい……)」

[10月9日15:05.天候:晴 JR東京駅]

 敷島と井辺はJR東京駅にいた。

 敷島:「いいのかい?キミまで巻き込まれる必要は無いんだよ?」
 井辺:「いえ、社長。私も敷島エージェンシーの社員として、ルカさんを破壊された憤りがありますので。ご協力致します」
 敷島:「そうか」

 井辺は大きなキャリーケースを引いていた。
 まるで海外に長期出張で行くような感じの大きさだ。

 記者:「敷島社長!今から仙台へ向かわれるのですか?」
 敷島:「ええ、そうですよ。一刻も早く、ルカをファンの皆さんの前に復活させたいですからね。その為には平賀先生の協力無しには叶いません」
 記者:「その鞄の中に、昨日仰っていたモノが入ってるんですね?」
 敷島:「ええ。何しろ平賀先生は私の旧友とはいえ、今や世界的なロボット科学者です。その彼に頼むわけですから、安い金額にするわけにはいきませんよ」

 敷島は得意げに語った。

 井辺:「申し訳ありませんが、そろそろ新幹線の時間ですので……」
 敷島:「おっ、そうだな。じゃあ、すいませんけど、この辺で」
 記者:「防犯対策とかは大丈夫なんですか、そんな大金を……」
 敷島:「大丈夫、大丈夫です」

 一体、何なのだろうか。
 敷島達は改札口を通って、東北新幹線乗り場に向かった。
 途中でスポーツ新聞を購入する。

〔21番線に停車中の電車は、15時20分発、“はやぶさ”25号、新函館北斗行きと“こまち”25号、秋田行きです。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。……〕

 敷島達は9号車のグリーン車の列に並んだ。
 そして、買った新聞を広げる。
 そこにはまたもやフランケンが宝石店を襲撃し、宝石を根こそぎ奪い取っていった事件が報道されていた。
 そして、それ絡みとして、敷島がバッグを持って得意げに語る写真と記事が掲載されている。
『巡音ルカの修理に5千万円?!』『敷島社長、自ら現金を携え東北工科大へ!』『平賀太一教授へ修理依頼か?』

 井辺:「大丈夫ですか、社長?こんなに大々的に宣伝してしまって……」
 敷島:「ああ。大丈夫だ。これだけ宣伝しておけば、KR団がフランケンを派遣してくるだろう」
 井辺:「周りの人達が巻き込まれる恐れが……」
 敷島:「いや、それが意外と大丈夫っぽい。今までのフランケンが起こした事件を見ると、ルカみたいなロイドやロボットは壊されているが、意外と人間には危害が加えられていない。もしかしたら、純粋にただ命令を守っているだけなのかもしれないな」
 井辺:「そういうものですかね」
 敷島:「もっとも、今回はどうかは分からない。もしヤツが現れたら、キミは真っ先に避難するんだ。いいな?」
 井辺:「その時は社長も御一緒に。敷島エージェンシーは社長がいないと動かせません」
 敷島:「シンディに任せてからだな。平賀先生には『エミリーを無償で貸す』とか言ってくれてるが、もしかしたら、フランケンは東北工科大に現れるかもしれない。その時、エミリーがいた方がいいから断った」
 井辺:「なるほど……」

[同日同時刻 天候:晴 都内のとあるイベント会場]

 KAITO:「僕の腕と足は♪ジェットで空を飛べる♪アストロボーイ♪アストロボーイ♪マイティ・アトム♪」
 鏡音レン:「僕の腰の中は♪マシンガンの光♪アストロボーイ♪アストロボーイ♪マイテイ・アトム♪」

 KAITOと鏡音レンがアニメ“鉄腕アトム”第2期のEDを歌っている中、ステージの後ろでMEIKOが自分の担当マネージャーに話し掛ける。

 MEIKO:「マネージャー、私達は“鉄腕アトム”関係の歌歌っていいの?」
 マネージャー:「社長の話では初音ミクだけがダメらしい。それも、全部の歌がダメってわけじゃない。例のあの歌だけがダメらしいんだ」
 MEIKO:「そうなの」
 鏡音リン:「リンも10万馬力欲しいなー」
 MEIKO:「ボーカロイドには必要無いでしょ」
 マネージャー:「関係各所との取り決めで、ボーカロイドには一切の武力を持たせないことになっているからな。それより、そろそろ社長達を乗せた新幹線が動く頃だ」
 初音ミク:「そうですね。たかお社長達……心配です」
 MEIKO:「大丈夫だよ。社長とプロデューサーは絶対に成功してくるさ。必ずルカの仇を取ってくれるよ」
 マネージャー:「あのー、ルカさんは生きてますけど……」

 KAITO&鏡音レン:「……未来の為に♪戦うぞ♪さあ♪皆で行こうよォ〜♪」

 歓声が沸き起こる会場。
 ボーカロイド達は着実にファンを増やし続けている。
 その性能を最大限に生かし、また、それを売り上げに繋げている敷島エージェンシーであった。
 まもなく、戦いの火ぶたが切って落とされようとしている。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「フランケンの暗躍」

2016-10-14 10:18:41 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月8日05:30.天候:晴 東京都千代田区霞ヶ関・警視庁]

 敷島:「私ゃ、シンディに宝石泥棒を命じた記憶はありませんがね?“身元引受人”として来たのに、どうして私まで取り調べを受けなきゃならんのです?だいたい……」
 鷲田:「ああ、分かってる!おおかたその後に続く言葉は、『タクシーをかっ飛ばして来たんだ。冗談じゃない!』とか何とかだろ?」
 敷島:「何言ってるんですか。『始発の有楽町線で来た』ですよ」
 鷲田:「お前もそこそこの会社の社長なんだから、タクシーくらい乗れよ。……まあいい。シンディの確保用件は、不法侵入だ。宝石の窃盗ではない」

 敷島はシンディの夜中の行動に対するメモリーを確認した。

 敷島:「確かに勝手に入ってるから、これはシンディの行き過ぎですね。分かりました。よく叩き聞かせておきますので……」
 鷲田:「その前に言い聞かせるという段階が無いのかね、キミには……。それより、動画の提供を受けたことで、新たなことが分かったぞ」
 敷島:「何でしょう?」

 鷲田は数枚の写真を机の上に置いた。
 それはシンディのメモリー画像を印刷したもの。
 その1枚は警備服を着たヤスのものだった。

 鷲田:「こいつは偽警備員だ。あの美術館の警備員の制服じゃない。それに、本物の警備員は催眠スプレーで眠されていやがった」
 敷島:「催眠スプレー?どこかで聞いたような手口ですな?」
 鷲田:「多摩地区の工場の事件だよ。あのフランケンを脱走させた野郎、工場に侵入する際に警備員を催眠スプレーで眠らせやがったからな」
 敷島:「では、やはり一連の事件はKR団の生き残りのしわざ!?」
 鷲田:「ようやく見えてきたって感じだな。……悔しいがシンディは返してやる。メモリーの提供も受けたことだしな」
 敷島:「もしかして、最初からそれが目的だったのでは?」
 鷲田:「なワケないだろう!もしあの時シンディが抵抗でもしやがったら、ヤツは破壊処分、お前も使用者責任でしょっ引くところだったんだからな!」
 敷島:「怖い怖い。日本の警察も、なかなかの謀略集団ですなぁ……」

 更に別の写真を見ると、ほんの僅かだが、大男の姿があった。

 敷島:「これがフランケンですか。なるほど。確かに完成予想図の通り、大きな体だ。バージョン4.0よりも大きいけど、400よりは小さいかな」
 鷲田:「日生劇場の監視カメラに映っていたのを見たが、かなりの化け物だぞ。いいか?不法侵入のシンディを釈放してやる以上、失敗は許されないからな?」
 敷島:「分かりました。例え図体のデカいヤツでも、シンディらマルチタイプの手に掛かれば、あっという間に鉄塊となるでしょう」

[同日06:30.天候:晴 東京都千代田区内 タクシー車内]

 しかし帰りはタクシーに乗る敷島。
 もちろん、隣にはシンディを連れている。

 シンディ:「社長、とんだご迷惑を……」
 敷島:「何度も聞いたよ。もういいから。むしろ、鷲田さん達にヘタに抵抗しなかったその判断を褒めてやるよ。それより、ルカを真っ二つにしたヤツとガチ勝負して勝てるか?」
 シンディ:「御命令頂ければ勝ちます」
 敷島:「場所が都内に集中しているだけに、エミリーを呼ぶのもなぁ……。かといって、アルエットを使うのも気が引けるし……」
 シンディ:「大丈夫です、社長。私、絶対に勝ちますから」
 敷島:「まあ、頼んだぞ」

[同日09:30.天候:晴 都内某所]

 ボス:「ガッハハハハハハ!よくやった!これで俺達はモノホンの大金持ちだ!あー?早速これを用意していた密売ルートに流すんだ。奥日光の御隠居さんも、まさか俺がここまで稼ぐたぁ思わなかっただろう。今頃、叫喚地獄の底で文字通り喚いているだろうよ。ウッハハハハハハハハハ!!」
 手下A:「親分、アッシらも分け前に預かりたいもんで」
 手下B:「異議なーし!」
 手下C:「異議なーし!」
 手下D:「異議なーし!」
 ボス:「バカヤロウ!欲張りな奴らめ!慌てなくても、ちゃんと平等に分けてやる。まず、これが俺の分。で、これが私の分。で、これがワシの分。で、これが僕の分。で、これが小生の分。で、これが拙者の分。で、これが某の分。で、これが手前の分。【中略】で、これがお前の分。で、これがキミの分。で、これが貴様の分。で、これがテメェの分。これが、お前の分。【中略】というわけで、これで平等だ。文句あっか?あー?」
 手下A:「親分、それでは分け前が少な過ぎませんで」
 ボス:「そうか。オメェは反対か。それじゃ、もう少し出してやる」

 パーンッ!(←ボスから手下Aに放たれた一発の弾)

 ボス:「俺から愛の鉛弾だ。これ以上の報酬があるか?あ?他に欲しいヤツぁいるか?」

 残った手下一同、無言で首を横にブンブン振る。

 ボス:「よーし。これで決まりだな。誰か1人忘れてるような気がするが、まあ、細けぇこたぁどうでもいい。次の仕事の準備に取り掛かるぞ」

 その忘れられているような1人がヤスであったが、彼はフランケンの相手に夢中であった。
 ヤスはまるで車を洗うかのように、毛先の柔らかいブラシでフランケンの体を洗ってやっている。

 ヤス:「いやあ、オメェのおかげで俺は幸せモンだ。おかげで俺はボスから目を掛けてくれるようになったし、お前自身もなかなか話せるヤツじゃねーか、え?段々俺はオメェを気に入って来たぜ」

 ヤスは脚立を登って、フランケンの口元に近づく。

 ヤス:「よし。口開けな。歯ぁ磨いてやる」

 フランケンは口を開けた。
 シャカシャカとブラシで洗うヤス。
 そして、辺りをキョロキョロと見回し、誰もいないのを確認した。

 ヤス:「ところで、俺の分は確保しててくれたか?」

 と、小声でフランケンに問いかける。

 フランケン:「アー」

 フランケンは奥歯に隠していたダイヤモンドを1個、ヤスに手渡した。
 状態からして1カラット、2カラットどころの数字では無さそうだ。
 それ以上は間違いなくある。

 ヤス:「サンキュ!こりゃ役得だぁ!」

 ヤスは大喜びで自分の服のポケットに、ダイヤモンドをしまい込んだのだった。

 ヤス:「次の仕事も一緒に頑張ろうな!」
 フランケン:「アー!」
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