報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「激闘!」

2016-10-15 20:42:33 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月9日15:46.天候:晴 東北新幹線“はやぶさ”25号9号車内]

 敷島と井辺は仙台方面に向かう新幹線の中にいた。
 東京駅を出発し、上野駅にも停車したが、何も起こらない。
 窓側に座る敷島の膝の上には、現金5千万円が入っているとされるバッグが置かれていた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。大宮の次は、仙台に止まります〕
〔「“はやぶさ”25号は仙台、盛岡、いわて沼宮内、二戸、八戸、七戸十和田、新青森、奥津軽いまべつ、木古内、終点新函館北斗の順に停車致します。“こまち”25号は仙台、盛岡、雫石、田沢湖、角館、大曲、終点秋田の順に止まります」〕

 列車が敷島の現住所に最も近い大宮駅新幹線ホームに滑り込む。
 全車指定席の長距離列車ということもあって、この駅で降りる乗客はいない。
 だが、この列車の最後尾、1号車に2人の人物が乗ってきた。
 1人はとても小柄な男、もう1人は井辺以上に大柄な体の男だった。
 どちらもスーツにサングラス、そして帽子を被っている。
 列車に乗り込むと、座席には座らず、デッキに立っていた。

〔17番線から“はやぶさ”25号、新函館北斗行きと“こまち”25号、秋田行きが発車致します。次は、仙台に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 ホームに発車ベルが鳴り響く。
 列車は時間通りにドアを閉め、VVVFインバータの音を響かせて発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は1号車から10号車が“はやぶさ”号、新函館北斗行き。11号車から17号車が“こまち”号、秋田行きです。盛岡で切り離しとなりますので、お乗り間違えの無いよう、ご注意ください。次は、仙台に止まります。……〕

 列車が大宮駅を出ると、それまでの徐行区間から解放されたかのようにグングンと速度を上げていった。

 ヤス:「フランケン、そろそろ行くか。仲間の話じゃ、敷島社長は9号車のグリーン車に乗っているって話だ」
 フランケン:「アー!」
 車掌:「失礼します。お手数ですが、乗車券と特急券を拝見させて頂けますか?」
 ヤス:「くっ、しまった!フランケン、やれ!」
 フランケン:「アー!」

 フランケンは男性車掌の胸倉を掴んだ。

 車掌:「わあっ!?何をするんですか!?」

 フランケンはトイレのドアをこじ開けた。

 乗客:「な、何だ!?まだ入ってるぞ!……わあーっ!?」

 まだズボンをはいていない中年男性客を引きずり出し、フランケンは車掌を頭から便器の中に突っ込ませた。
 ご丁寧にも、その後から水を流す。

 ヤス:「フランケン、ちょっとやり過ぎだ!結局このままじゃ大騒ぎになっちまう!急ぐぞ!」
 フランケン:「アー!」

 ヤス達が2号車から先へ走って行くのを見て、トイレから引きずり出された乗客は、自分の席がある1号車に戻ると……。

 乗客:「た、大変だ!新幹線ジャックだ!車掌さんがやられた!」

 と、叫んだが、まだズボンをはいていなかった為に、別の意味で大騒ぎになったという。
 だがさすがに正体のバレたフランケンに、乗客達も静かにしているわけがなかった。
 フランケンにあっては、既に新聞やテレビ、インターネットなどで“指名手配”されていたからだ。
 そしてその騒ぎは、9号車にまでやってきた。

 井辺:「社長!」
 敷島:「うん、どうやら出たみたいだな。井辺君、早くシンディを!」
 井辺:「はい!」

 井辺は急いでデッキに行くと、そこにある荷物置き場に向かった。
 そこにはあの大きなスーツケースが置かれており、井辺はそれを引き出すと、その中身を開けた。

 井辺:「シンディさん!頼みますよ!」
 シンディ:「あいよ」

 人1人うずくまれば入れるほどの大きなスーツケースであったが、実際にシンディがその状態で入っていたというわけだ。
 人間なら長時間で辛いところだが、そこはロイド。
 全く平気である。

 敷島:「うわっ、出たっ!早く!シンディ!」
 ヤス:「敷島社長!殺されたくなかったら、その中身を寄越せ!行けっ、フランケン!」
 フランケン:「アーッ!!」

 フランケンが突進してくる。
 多くの乗客は座席の下に伏せたり、10号車に逃げたりした。
 敷島はデッキに向かう途中で、ドアの上にある非常ボタンを押した。
 ……ってか、1号車から向かってくるまでの間に誰も押してなかったのか。

 ヤス:「わあーっ!?」

 列車がつんのめるようにして、急ブレーキを掛ける。

〔「お客様にお知らせ致します。只今、車内で非常事態が発生しました。この為、この列車、緊急停車を致します。お立ちのお客様は、お近くの手すりにお掴まりください」〕

 シンディ:「やっと会えたね、フランケン!もう年貢の納め時だからねっ!!」
 敷島:「シンディ!列車が止まったら、外へ連れ出すんだ!“スーパーロボット大戦”は外でやれ!」
 シンディ:「了解!」
 敷島:「さて!フランケンを使っているKR団のメンバー……あれ!?どこ行った!?」

 ヤスはシンディのことは、もちろん知っていた。
 列車が停車すると、別のドアを開けてそこから一目散に逃げ出した。

 ヤス:「じょ、冗談じゃねぇよォ!あんなターミネーチャン、相手にできねぇよォ!」

 世間一般にはマルチタイプは、『美人過ぎるガイノイド』というよりは、『女ターミネーター現る!』の方のイメージが強かった。

 敷島:「ま、待ちやがれっ!」
 井辺:「社長!外は危険です!上り列車が!」

 敷島はヤスを追って外に飛び出そうとしたが、後ろから井辺に掴まれた。
 と、同時に上り列車がけたたましい急停車音を立てながら、それでも高速で敷島のすぐ前を通過した。
 もちろん敷島が飛び出そうとしたから急停車したのではなく、敷島達の列車が急停車したのを受けて、防護無線(俗に言う『電車を止める信号』)が発報され、それに呼応して止まったものである。

 敷島:「うおっと!……って、せっかくKR団の生き残りと会えたのに!みすみす取り逃がしてしまったってことか!」
 井辺:「シンディさんがフランケンを捕まえてくれますから、それに期待するしかありませんね!」
 敷島:「ううっ……!」

 敷島は悔しそうな顔をしながらも、シンディがフランケンを連れて行った上空を見上げた。
 いつもは取り外されている超小型ジェットエンジンを、今回は作戦の為に特別に装着し、それでもってフランケンを列車の外に引きずり出したのだ。
コメント (1)
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