[9月30日18:00.天候:晴 東京都中央区銀座 とある高級レストラン]
敷島(伯父):「本日は我が四季エンタープライズ、創業100周年記念のセレモニーにお越し頂き、真にありがたい限りであります。本来は10月1日が創業日なのですが、明日は土曜日ですので、今年にあっては本日開催させて頂きました。我が社は今でこそ、芸能界切っての規模を誇るまでに成長しましたが……」
敷島孝夫:「おい、アリス。伯父さんの挨拶が終わるまで食うなよ」
アリス:「分かってるよー。それにしても、日本人って、どうしてこう同じような挨拶の連発が好きなの?あんたの伯父さんが挨拶するまで、似たような肩書きのオッさん達が挨拶しまくってたじゃない」
敷島孝夫:「それが日本企業ってもんだ」
アリスは子会社の社長夫人よろしく、ドレスを着ていたし、平賀も呼ばれていた。
シンディとエミリーは社長秘書とか教授護衛というよりは、会場の接待役で来ているようなもので、やはりイブニングドレスを着させられている。
ようやく懇親会が始まった時、アリスは早速料理を皿盛りにしていた。
四季エンタープライズの懇親会は、昔から立食形式と決まっている。
余興に四季エンタープライズのアイドルのライブがあり、もちろん、その中に敷島エージェンシーのボーカロイドも入っている。
敷島孝夫:「まさか自分がこういう所に来られるとは思いませんでしたよ」
敷島(伯父):「そうかい?かなり絶好調じゃないか。お前の抱えるボーカロイド達は……」
敷島孝夫:「おかげさまで」
敷島(伯父):「まだ、例の……『もう1つの仕事』は続けているのか?」
敷島孝夫:「ロボットを使ったテロが撲滅されない限りは、終わらないです」
敷島(伯父):「いくらお前が『不死身の敷島』と呼ばれてるからって、あんまり危険なことはやめてくれよ?もうお前の体はお前1人のものではないんだからな?」
敷島孝夫:「ええ、気をつけます」
アリス:「んー、これは美味しい」
シンディ:「マスター。あの料理も結構、人気があるみたいです」
アリス:「ローストビーフかぁ!シンディ、持って来て!」
シンディ:「かしこまりました」
シンディは空になった皿を手に、ローストビーフの置かれた場所へと向かった。
そこには1人のタキシード姿の男の後ろ姿があり、最初はレストランの従業員かと思ったのだが……。
シンディ:「ああっ!?」
さっきまでそこそこあったはずのローストビーフがごっそり無くなっていた。
見ると、さっきのタキシードの男が皿に山盛りにして持って行っている。
スキャンしてみると、人間ではなく、ロイドと出た。
どうやら、誰かが連れて来た執事ロイドのようである。
シンディ:「ちょっと!そこのあんた!」
執事ロイド:「はい、何でしょうか?」
シンディ:「私もマスターにその料理を持って行かなければならないの。譲ってくれる?」
執事ロイド:「あいにくですが、私もマスターの御命令ですので、できかねます」
シンディ:「あんた、私が誰だか知っててその答えを言ってるんだろうね?」
執事ロイド:「はい。マルチタイプ3号機のシンディ・サードですね?」
シンディ:「分かってるなら、私の方が格上なんだから寄越しなさいよ」
執事ロイド:「マスターからの御命令に、格上も格下もございません。あなたがマスターの命令に忠実なように、私もまたマスターの御命令には忠実でありたいと思っているからです」
シンディ:「ナメてんのか、テメェ!?」
シンディは右手をマグナムに変形させた。
このままだと、シンディは執事ロイドにマグナムを撃ち込んでしまうだろう。
そんなことが許されるのか。
ヘタしたら、懇親会を台無しにしてしまう。
エミリー:「シンディ、何を・している?」
だがそこへ、異変をいち早く感じ取ってエミリーが駆け付けてきた。
険しい顔をした姉機に、シンディは慌てて右手を引っ込めた。
シンディ:「ね、姉さん!こ、こいつがマスターの料理を根こそぎ持って行くからよ!」
執事ロイド:「こいつ、ではございません。私は越州大学工学部教授、村上大治郎博士をマスターとさせて頂いております、ロイ・ホワイトと申します。どうぞ、お見知り置きを……」
エミリー:「マルチタイプ1号機の・エミリー・ファースト・だ。妹の・無礼、姉として・詫びを・入れる」
シンディ:「姉さん!?」
エミリー:「お前が・悪い。明らかに・ロイが・先だ。それに・少し・待てば、すぐに・追加の・料理が・来る」
確かに見ると、ウェイターがローストビーフの追加分を入れていた。
シンディ:「くっ……!」
エミリー:「とはいえ・ロイも・このように・直情的な・者を・相手に・するには、少し・対応を・間違えた。正論だけを・言い伏せれば・良いという・ものでもない」
ロイ:「なるほど。それは“学習”になります。それでは……」
ロイは2人の鋼鉄姉妹にお辞儀をして去って行った。
シンディ:「何よ、アイツ……!」
エミリー:「だからって・マグナムを・発砲する・その判断を・疑う」
シンディ:「まだ撃ってないし!ちょっと脅かすつもりだけだったし!」
エミリー:「いいから・早く・お料理を・ドクター・アリスの・所へ・お持ちしろ」
シンディ:「おっと、そうだった!」
シンディは急いでローストビーフの所に向かった。
それからしばらくして……。
エミリーは空になったワイングラスを手に、ワインの所へ向かった。
もちろん、グラスは平賀の物であるからだ。
エミリーがどのワインにするか考えていたが、
ロイ:「平賀教授は今、肉料理を召しあがっておられるようです。赤もよろしいですが、ちょうどここにある白の……」
エミリー:「そうか。なら・そうしよう。先ほどは・妹が・失礼した」
ロイ:「いいえ。おかげで助かりました。あなたが来て頂けなければ、私は頭部を撃ち抜かれていたことでしょう」
エミリー:「もし……良かったら・私と・ID交換を……」
エミリーはスルッと右手の手袋を取る。
掌の中央には赤外線通信があり、これで互いの個人情報を交換することができるのである。
言わば、ロイド同士の名刺交換だ。
動物で言うなら、犬が互いの尻を嗅ぎ合うようなもの。
ロイ:「それは光栄です」
銀髪の短髪で、かつてのキール・ブルーと比べれば身長も体格もガッチリしているロイ。
これも、エミリーのタイプなのだろうか。
ロイもまた右手を差し出した。
シンディ:「ちょおっと待ったぁぁぁぁっ!」
そこへシンディが割って入る。
シンディ:「姉さん!あんたはまたオトコにほだされて!何回泣かされれば気が済むの!」
エミリー:「……まだ、キールにしか・泣かされて・いない」
とはいえ、キールに騙されて最後に泣かされたことは負い目でもある。
シンディはロイの方に向き直った。
シンディ:「姉さんを誑かそうったって、そうはいかないからねっ!」
ロイ:「いえ、私は何も……」
シンディ:「ほらっ、姉さん!とっとと行くよ!」
エミリー:「シンディ、ゴメン……」
シンディは姉の手を引っ張って、会場の別の場所へと向かった。
敷島(伯父):「本日は我が四季エンタープライズ、創業100周年記念のセレモニーにお越し頂き、真にありがたい限りであります。本来は10月1日が創業日なのですが、明日は土曜日ですので、今年にあっては本日開催させて頂きました。我が社は今でこそ、芸能界切っての規模を誇るまでに成長しましたが……」
敷島孝夫:「おい、アリス。伯父さんの挨拶が終わるまで食うなよ」
アリス:「分かってるよー。それにしても、日本人って、どうしてこう同じような挨拶の連発が好きなの?あんたの伯父さんが挨拶するまで、似たような肩書きのオッさん達が挨拶しまくってたじゃない」
敷島孝夫:「それが日本企業ってもんだ」
アリスは子会社の社長夫人よろしく、ドレスを着ていたし、平賀も呼ばれていた。
シンディとエミリーは社長秘書とか教授護衛というよりは、会場の接待役で来ているようなもので、やはりイブニングドレスを着させられている。
ようやく懇親会が始まった時、アリスは早速料理を皿盛りにしていた。
四季エンタープライズの懇親会は、昔から立食形式と決まっている。
余興に四季エンタープライズのアイドルのライブがあり、もちろん、その中に敷島エージェンシーのボーカロイドも入っている。
敷島孝夫:「まさか自分がこういう所に来られるとは思いませんでしたよ」
敷島(伯父):「そうかい?かなり絶好調じゃないか。お前の抱えるボーカロイド達は……」
敷島孝夫:「おかげさまで」
敷島(伯父):「まだ、例の……『もう1つの仕事』は続けているのか?」
敷島孝夫:「ロボットを使ったテロが撲滅されない限りは、終わらないです」
敷島(伯父):「いくらお前が『不死身の敷島』と呼ばれてるからって、あんまり危険なことはやめてくれよ?もうお前の体はお前1人のものではないんだからな?」
敷島孝夫:「ええ、気をつけます」
アリス:「んー、これは美味しい」
シンディ:「マスター。あの料理も結構、人気があるみたいです」
アリス:「ローストビーフかぁ!シンディ、持って来て!」
シンディ:「かしこまりました」
シンディは空になった皿を手に、ローストビーフの置かれた場所へと向かった。
そこには1人のタキシード姿の男の後ろ姿があり、最初はレストランの従業員かと思ったのだが……。
シンディ:「ああっ!?」
さっきまでそこそこあったはずのローストビーフがごっそり無くなっていた。
見ると、さっきのタキシードの男が皿に山盛りにして持って行っている。
スキャンしてみると、人間ではなく、ロイドと出た。
どうやら、誰かが連れて来た執事ロイドのようである。
シンディ:「ちょっと!そこのあんた!」
執事ロイド:「はい、何でしょうか?」
シンディ:「私もマスターにその料理を持って行かなければならないの。譲ってくれる?」
執事ロイド:「あいにくですが、私もマスターの御命令ですので、できかねます」
シンディ:「あんた、私が誰だか知っててその答えを言ってるんだろうね?」
執事ロイド:「はい。マルチタイプ3号機のシンディ・サードですね?」
シンディ:「分かってるなら、私の方が格上なんだから寄越しなさいよ」
執事ロイド:「マスターからの御命令に、格上も格下もございません。あなたがマスターの命令に忠実なように、私もまたマスターの御命令には忠実でありたいと思っているからです」
シンディ:「ナメてんのか、テメェ!?」
シンディは右手をマグナムに変形させた。
このままだと、シンディは執事ロイドにマグナムを撃ち込んでしまうだろう。
そんなことが許されるのか。
ヘタしたら、懇親会を台無しにしてしまう。
エミリー:「シンディ、何を・している?」
だがそこへ、異変をいち早く感じ取ってエミリーが駆け付けてきた。
険しい顔をした姉機に、シンディは慌てて右手を引っ込めた。
シンディ:「ね、姉さん!こ、こいつがマスターの料理を根こそぎ持って行くからよ!」
執事ロイド:「こいつ、ではございません。私は越州大学工学部教授、村上大治郎博士をマスターとさせて頂いております、ロイ・ホワイトと申します。どうぞ、お見知り置きを……」
エミリー:「マルチタイプ1号機の・エミリー・ファースト・だ。妹の・無礼、姉として・詫びを・入れる」
シンディ:「姉さん!?」
エミリー:「お前が・悪い。明らかに・ロイが・先だ。それに・少し・待てば、すぐに・追加の・料理が・来る」
確かに見ると、ウェイターがローストビーフの追加分を入れていた。
シンディ:「くっ……!」
エミリー:「とはいえ・ロイも・このように・直情的な・者を・相手に・するには、少し・対応を・間違えた。正論だけを・言い伏せれば・良いという・ものでもない」
ロイ:「なるほど。それは“学習”になります。それでは……」
ロイは2人の鋼鉄姉妹にお辞儀をして去って行った。
シンディ:「何よ、アイツ……!」
エミリー:「だからって・マグナムを・発砲する・その判断を・疑う」
シンディ:「まだ撃ってないし!ちょっと脅かすつもりだけだったし!」
エミリー:「いいから・早く・お料理を・ドクター・アリスの・所へ・お持ちしろ」
シンディ:「おっと、そうだった!」
シンディは急いでローストビーフの所に向かった。
それからしばらくして……。
エミリーは空になったワイングラスを手に、ワインの所へ向かった。
もちろん、グラスは平賀の物であるからだ。
エミリーがどのワインにするか考えていたが、
ロイ:「平賀教授は今、肉料理を召しあがっておられるようです。赤もよろしいですが、ちょうどここにある白の……」
エミリー:「そうか。なら・そうしよう。先ほどは・妹が・失礼した」
ロイ:「いいえ。おかげで助かりました。あなたが来て頂けなければ、私は頭部を撃ち抜かれていたことでしょう」
エミリー:「もし……良かったら・私と・ID交換を……」
エミリーはスルッと右手の手袋を取る。
掌の中央には赤外線通信があり、これで互いの個人情報を交換することができるのである。
言わば、ロイド同士の名刺交換だ。
動物で言うなら、犬が互いの尻を嗅ぎ合うようなもの。
ロイ:「それは光栄です」
銀髪の短髪で、かつてのキール・ブルーと比べれば身長も体格もガッチリしているロイ。
これも、エミリーのタイプなのだろうか。
ロイもまた右手を差し出した。
シンディ:「ちょおっと待ったぁぁぁぁっ!」
そこへシンディが割って入る。
シンディ:「姉さん!あんたはまたオトコにほだされて!何回泣かされれば気が済むの!」
エミリー:「……まだ、キールにしか・泣かされて・いない」
とはいえ、キールに騙されて最後に泣かされたことは負い目でもある。
シンディはロイの方に向き直った。
シンディ:「姉さんを誑かそうったって、そうはいかないからねっ!」
ロイ:「いえ、私は何も……」
シンディ:「ほらっ、姉さん!とっとと行くよ!」
エミリー:「シンディ、ゴメン……」
シンディは姉の手を引っ張って、会場の別の場所へと向かった。