蝉はなぜ鳴くのか

　うちは、福山のビバリーヒルズと私が呼ぶ、超高級住宅地にあり、

　家の裏には森がある。朝６時になると美しい少女が

　きれいな歌声で起こしてくれる。

　これを正しい日本語で言うとこうなる。

　うちは、福山駅から北方面の坂を上った辺鄙なところにあり、

　家の裏には竹藪がある。朝６時になるとミンミンゼミの

　クソうるさい声で寝られない。

　セミにも段階がある。

　最初のころは、ツクツクボウシ。

　次は、アブラゼミ、ヒグラシ、クマゼミ。

　夏も終盤になると、真打登場だ。

　ミンミンゼミ。こいつが一番うるさい。

　ところで、鳴くセミはオスだけで、メスは鳴かない。

　オスのセミは、メスのセミに自分のいる場所を鳴き声で知らせているのだ。

　酔っ払って帰ったワシが、女房に「どこにおるん」と大声で呼んでいるようだ。

　セミの皆さんは、何年もの間、地中で過ごし、大人になって地上に出ると

　一週間くらいしか生きられないという。

　でも、ワシの耳元で鳴かんでもいいんじゃないのか。

　せめて、税務署とか違反切符を切ったＫの耳元で鳴いてくれ。