旧十一月二十九日。日本列島は猛烈な寒波に覆われているのだそうです。九州や四国の南部でも雪に見舞われています。青空が戻った東京も肌を刺すような乾いた強風が身にしみます。この寒気はまだ数日居座るそうです。こんな時は体を中から温める美味しいものをたくさん食べたいものですね。
このところ食べ物の話ばかりになってしまっていますが、日本は美味しいものが溢れています。今日ご紹介する「すんき」もその一つ。
厳しい寒さに包まれる長野県木曽地方の風土が生んだ冬の味覚です。年末に味噌仕込みの師匠からお裾分けをいただき、この冬いろいろ大活躍をしています。
京都で柴漬け・千枚漬けと並んで代表的な漬け物に「すぐき」があります。酸茎菜(すぐきな)というその名の通り「すぐき」のための京野菜を、塩を使わず乳酸醗酵させる漬け物です。古漬けのような独特の酸味と旨味がクセになるのですが、やはり京漬け物ならではの上品さがあります。
木曽の「すんき」はこの「すぐき」が流れ着いたものなのでしょう。漬ける蕪は木曽御嶽山の山麓に広がる地域に因んで「開田蕪」と総称される土地土地の在来品種。冷え込む冬の気候と、「米は貸しても塩は貸せるな」という海から遠く塩が貴重だったお土地柄が生んだ名産品です。この蕪と葉を粗く刻んで、10秒ほど熱湯にくぐらせて殺菌し、漬けて行くのだそうです。京都では今や室で醗酵させるのが主な製法だそうですが、冷え込み厳しい木曽では家々で普通に漬けられています。新たに漬けた時、前年のすんきを乾燥や冷凍で保存しておいたものから乳酸菌を接種するというから、これはもうヨーグルトのような漬け物なのですね。確かに食べた後しばらくして胃腸が活発に動いているような気がします。
味は、確かにすぐきをルーツにしていることが感じられるのですが、もっと素朴でワイルドな印象です。野沢菜のふる漬けを塩抜きしすぎた感じ、と言ってはすんきに失礼でしょうか。でもその感覚がとても美味しいのです。
もっともシンプルですんきそのものの味を楽しめるのが、そのまま鰹節と醤油を掛けて頂く方法。ご飯が進むということは、お酒も進みます。木曽では冬、暖かい蕎麦にすんきが欠かせないそうです。これも独特の酸味が美味しいですね。年越し蕎麦はこれでした。あとはもっと細かく刻んで納豆と併せたり、炒めたりと、塩分が無いのでいろいろ楽しめます。
郷土の家庭の味ということで、なかなか都会ではお目にかかる機会もありませんが、中山道信濃の国木曽を冬に通る折にでもぜひ「すんきそば」をご賞味下さい。
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