"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

夏仕舞い

2012年09月09日 04時28分08秒 | まち歩き

 旧七月二十三日。一昨日から二十四節気の【白露(はくろ)】に入りました。

陰気ようやく重りて、露にごりて白色となれば也
           『暦便覧』(天明八年/1788年発行)

 確かに厳しい残暑はまだ続いていますが、本当に暑さを実感するのは日中の数時間に限られて来たように思います。 蝉の鳴き声も心なしか弱々しく、少なくなってきたようで、去り往く夏への寂しさを感じてしまうこの頃です。
B0908yukeisumidagawa 秋が少しずつ深まってゆくと、特に夕景が叙情的で印象深くなるように感じるのですが、いかがでしょうか。この頃になると、夕焼けと灯された街並を映し、舟が行き交う隅田川の光景が絶妙です。家々では夕食のしたくも始まっているようで、秋刀魚の焼け匂いが漂って来たりすると、それもう秋を彩る完璧な演出と言っていいでしょう。秋はやっぱり食べ物がぐっと美味しくなる頃、楽しみであります。

 夏の間お世話になった浴衣や履物をきれいにして仕舞う頃になりました。五年前の夏にあつらえた下駄は時々左右を入れ替え気を配って履いていたつもりが、どうしても歯が片減りしてしまいました。まだまだ付き合って行きたい下駄です。どうしたものかと考えていたのですが、ちょうど友人が下駄を新調するというので、五年前にこの下駄を誂えた旧東海道品川宿にある丸屋を訪ねました。
(その時の模様は2007年7月30日のblog「念願のMy下駄を誂えました」をご覧ください)
 このお店で下駄を買う、ということは、まず好みの台を選び、膨大な種類の中から好みの鼻緒を選び、足のサイズに合わせて挿げてもらい、さらに実際に履いてみて微調整をしてもらって自分だけの下駄ができる、という過程が当たり前です。その間五代目の主、榎本準一さんは下駄、草履、雪駄といった履物から和装や和文化にまつわる話をたくさん聞かせてくれます。すべてが知らない話ばかりで驚かされるばかりです。中でも「○○でもいいんですが、□□のある方が粋なんです」という話にはいつもイチコロになってしまいます。
 久しぶりに訪れた店には、三年前の平成21年に店主・榎本さんが監修・執筆された『下駄本~下駄の買い方・履き方~』が置かれていました。
B0908getahon手に取って開いてみると、1ページにひとつ、下駄の種類、鼻緒、その他の履物が写真と共に紹介されていて、買い方、履き方を丁寧に解説してあります。とてもシンプルなデザインとページ構成ながら、内容は充実していて、いつもお店で榎本さんが話して聞かせて下さることが書いてあります。
 日常の中で下駄を履く、ということは今やほとんどなく、むしろ特別なことになってきています。それだけに既製品ではない自分だけの下駄を持っている、ということは心が豊かになるように思います。暮らしに関わるモノとの付き合い方、をまたひとつ考えさせられました。

下駄が欲しいなと思ったら、まず丸屋をお訪ねになることをおすすめします。

丸屋
東京都品川区北品川2-3-7 最寄り駅:京浜急行 新馬場
日曜日定休 午前9時~午後7時
http://getaya.org
twitter= @shinagawamaruya