旧十月二十七日。今の暦の12月13日は【正月事始め】または【煤払(すすはらい)】の日です。もちろんこれは旧暦からの風習で、仏壇や神棚の煤を払うことでしたが、正月に向けて年末の慌ただしさに拍車がかかる行事ですね。ぼちぼち年賀状の準備もしなければ、という頃です。
中国から帰国して早いものでひと月が、まさにアッという間に経ってしまいました。日本の滋味深き初冬の味覚や新酒などに舌鼓を打つ日々でもありますが、素朴ながら味わい豊かな中国の大衆料理も懐かしく感じるこの頃です。
その中の一つに【酒??子(jiu3niang4yuan2zi】というデザートがあります。
酉へんに良は「醸」という字です。お酒を醸す段階の初期にあたる、こうじをお湯に溶いて白玉のような小さい団子が入っている暖かいスープのような、甘酒のようなもの、と言えばなんとかおわかり頂けるかと思います。自然の甘みと独特の酸味が特徴的で、これが油の多い料理や、四川とか湖南省の辛い料理の後に、清涼剤のような役割を発揮してくれるのです。
街の市場の近くに、酒?の瓶と小さい団子を売っている人がいます(上の写真の左上と右下)。酒?は500gで3.5元(50円くらい)で、団子は一袋1元(13~4円)だったと思います。この女性にお願いしてもらって、酒?のこうじ菌(酒曲とか酒?と言います)を売ってもらうことにしました。一塊でもち米20kg分が作れる、というこうじ菌は柔らかい石灰岩のような物体です(上の写真の左下)。
このこうじ菌で酒?を作ってみました。もち米を一晩水に浸して(左の写真の左上)、翌日に30分ほど固めに蒸します。
温度が35℃くらいまで下がったら(左の写真の右上)、瓶に2cmくらい敷き詰めては菌を振りかけて層状にします(左の写真の右下)。瓶をタオルや毛布に包んで押し入れに入れておきました。この季節だと30℃くらいに保つのが難しいので、電子レンジで温める肩こり用の温パットを瓶に巻いて、半日ごとに温めます。二日目位から少しお酒っぽい匂いがし始めて、三日目に全体に菌が増えたようなので(左の写真の左下)、出来上がりということにして、水に溶いて温めてみたところ、ほぼ現地の味を再現することが出来ました(上の写真の右下)。
で、このこうじ菌の正体。調べてみるとリゾープス(別名クモノスカビ)というこうじ菌の一種みたいです。中国の老酒や韓国のマッコリ、インドネシアのテンペといったお酒を醸すのに使われるようです。お酒を作ると当局に怒られてしまいますので、酒?の他に、こうじを作っていろいろ料理などに応用してみようかと思っています。次回の『手前味噌仕込みの会』で成果を発表できるとおもしろそうです。醗酵食品は奥が深くて楽しいです。