瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

2011年、クリスマスには歌を歌おう♪その9

2011年12月29日 17時02分32秒 | クリスマス
はぁい♪ミス・メリーよ♪
今年のクリスマスを貴方は誰と過したかしら?
恋人?家族?友人?同僚?――まあ!貴方は家で独りで過したの?
きっぱりそう答える貴方の漢気に、メリー惚れちゃいそうだけど、クリスマス寒波に独りで立向かうなんて、あまりに無茶だわ。
来年のイブも休日みたいだし…来年のクリスマスこそ誰かとハッピーに過す為に、今からアクティブにいかなきゃ!
今日紹介するのは正にそんな、脱・ロンリークリスマスを果たした男に纏わるお話――ロシア人のニコライ・セミョノヴィッチ・レスコフ作「真珠の首飾り」よ。

物語の語り手は、裁判所勤めの、と或る紳士。
彼は友人達から「ちょっとファンタスティクで、何らかの迷信の打破にも役立ち、おまけにめそめそしてないハッピーエンドなクリスマス物語」をリクエストされて、自分の弟が主人公である実話を披露したの。
3年前のクリスマス休暇中、彼の弟は紳士の家に泊りに来た際、「是が非でも女房を持たせてくれ」と、そりゃもう切実に訴えたんですって。

「女房を世話してください、後生です!このやりきれない孤独地獄から、僕を救ってください!独身生活はもうつくづく厭になりました。田舎の連中の小煩い陰口や根も葉も無い取沙汰には、もう懲り懲りです。自分の家庭というものが欲しいんです。夜の一時を自分のランプのほとりで、可愛い女房と差し向いになりたいんです。女房を世話してくださいよ!」

いきなりそんな風にせがまれた紳士の兄は困ってしまった。
先ず彼が気に入るような相手の娘を探さなきゃいけない、次にはその娘の方でも弟さんを気に入ってくれなきゃいけない、「一朝一夕にはいかないよ」と紳士の兄は宥めたけど、弟さんは「クリスマス明けの洗礼祭の晩には結婚式を挙げたい」なんて、無茶を譲らない。
紳士の兄は付き合ってられないと、奥さん置いて裁判所へ出勤してしまったの。
ところが夕飯時に帰宅してみたら、それこそ一朝一夕に片が付きそうなスピードで、事がとんとん拍子に進んでると、奥さんから報告を受けた。

「あのね、マーシェンカ・ヴァシーリエヴナさんが見えましてね、晴着の寸法を取るんだから一緒について行ってくれと仰しゃるんですの。そこで私が着替えをしていますと、その暇に2人はお茶のテーブルで差向いになっていましたの。その後で弟さんは、『そら、あんな素晴らしい娘さんが居るじゃありませんか!この上何のかんのと選り好みをすることがあるもんですか、あの人を貰ってください!』って、そりゃもう大騒ぎなんですの。」

弟さんが一方的に思いを寄せてるんじゃなく、娘さんの方でも弟さんを気に入り、妻に納まる積りで居ると、奥さんは言うのね。
すっかりノリノリで縁談を進ませる奥さんに、紳士は絶句してしまった。

「いやはや君達女というものは、皆実に卑劣極まる仲人だなあ。誰かを一緒にしさえすりゃそれでいいんだ。その先がどうなろうと、後は野となれ山となれなんだ。自分の軽はずみからどんな結果になるか、ちっとは空恐ろしく思うがいいぜ。」

紳士としては自分抜きで話がハッピーに進むのが面白くなかったのかしら?
「そう上手くは行くまい」と、つい意地悪口を叩いたの。
紳士曰く「娘の父親は世間に名の知れた金持ちだが、同時にごうつくケチ野郎だからして、持参金なぞびた一文付けてくれないだろう」と、「現に上の娘達2人が結婚する際も持参金付けず、結果娘の婿達とは今でも敬遠の仲だ」とね。
それを聞いて奥さんは「持参金がなんぼの価値よ!」と怒ったわ。
「貴方は私と結婚する時も、持参金が目当てだったの!?」と詰め寄られ、紳士としては薮から蛇を突いて出した気持ち。
そんな紳士側のゴタゴタも、急速に燃上った2人の縁談に水差すものじゃなく、紳士の奥さんの計らいで滞り無く娘の父親からも婚約を取り付け、弟が要求した通りその年のクリスマスには結納を交わしたの。

「交わした」とは言ったものの、件の父親は相変わらず持参金についてそ知らぬ顔、その代り自分の娘には真珠の首飾りをプレゼントしたのよ。

「その真珠は大粒で、ふっくらと円みがあって、ひどく冴え冴えした色気の物だった。首飾りの作りは如何にも昔風の好みで、背後の所は、小粒ながら1番満円なカーフィム真珠でもって始まって、段々大粒になるブルミート真珠がそれに続き、やがて下へ垂れる辺りになると大豆程の粒が連なって、最後の真ん中の部分には3粒のびっくりする程大きな黒真珠が、群を抜いて美しい輝きを放っている、という仕組みなのだった。」

非常に素晴しい贈答品なれど、紳士の奥さんはカンカンに怒ってしまった。
曰く「真珠は涙の象徴で不吉な前兆、決して新年の贈り物にしない決まりなのに、何を考えているのだ!?」と。
ところが娘の父親は「奥さん、それはただの迷信ですよ」と余裕で看破し、自分の娘には「私が何故これをおまえに贈ったか、婚礼済ました翌日に、その秘密を明かそう」と話したの。

あっという間に日が過ぎて、婚礼後の翌日――紳士とその奥様は若夫婦のご機嫌伺いに出かけたの。
そしたら弟はやけに上機嫌で居るから訳を尋ねると、彼は封の切ってある1通の手紙を差し出したの。
それは娘の父親からの物で、そこには「真珠に絡む迷信等にびくつくこと一切無用也。あの真珠は偽物なれば。」と書かれていたのね。
紳士は驚き呆れ、奥さんにいたっては娘の父親に悪態吐く始末、けれど弟は愉快そうに笑うのよ。
「自分が欲しかったのは嫁であって真珠の首飾りではない。だから偽物だろうが本物だろうがどうでもいい事だ」と、ただ贈られた真珠の首飾りが偽物だと娘に伝えるべきか悩んでたそこへ、件の父親が訪ねて来た。
彼にとっての義父になった老紳士から、偽真珠だと知りどう思ったか訊かれ、弟は「真珠についてはどうでもいいが、贈られた妻(娘)の事を考えると内緒にして欲しい」と答えたの。

「あれにがっかりさせたくないとお言いなのかい?」
「ええ、まあ、それも有るんですけど。」
「まだその他に何か有るのかい?」
「あれの胸の底に、何かお父さんに対する反感のようなものが、芽ばえては困ると思うんです――もし幸福な良人になりたければ、自分の妻を尊敬できるようでなくちゃなりません。それができる為には、妻の心から生みの両親に対する愛や尊敬を失くさせてはならないと思います。」

新郎の言い分に娘の父親はいたく感心、偽真珠を贈った件について、本当の思惑を話してくれたの。

「わしは裸一貫で今の身上を築き上げた男で、今迄決して清い生き方をして来なかった。他人というものを大して信用もしておらず、正直の話わしはいつも人間は皆お銭を欲しがるものだと考えていた。上の娘をやった2人の婿さん達に、わしは持参金を付けてやらなかったが、果せるかな、あの2人はわしを恨みに思って、いつかな細君をわしの所へ寄越したがらない。どんなもんだろうな、あの婿さん達とこのわしと、一体どっちが真人間らしいかな?わしは成る程、奴さん達に銭こそやらなかったが、奴さん達と来た日にや、親子の情合いに水を差そうというのだ。ところでわしは、あの2人にゃ一文だってやる事じゃないけれど、お前さんにゃ、財布の紐を緩めて、一奮発させて貰おうわい!」

要するに娘の父親は弟さんを試したのね、そして老紳士の試験に見事合格した彼に、5万ルーブリの手形を3枚手渡したの。
ところが弟は「それはいけない」と丁重にお断りした。
「そんな事をしたら、お姉さん達2人が羨み、姉妹の仲に亀裂が入る元になる」と。
この言葉を聞いて娘の父親は益々感心し、ならば娘の手で、2人の姉娘達に1枚ずつ渡させようと約束した。
3枚-2枚=残りの1枚は、勿論弟夫婦の分で、目出度くも大団円。

「『僕の話というのは、これでお終いだよ』と、語り手は物語を結んだ――『如何です?お聞きの通りの現代の出来事ではあり、嘘偽りの無い実話でもあるんだが、それでいて昔ながらのクリスマス物語の註文にも適い、作法にも嵌っていると、憚りながら僕は思うんだがね。』」


…まったく、大岡裁きにでも在りそうな、気持ちの良い話ね。
かなり割愛したけれど、この物語は会話のテンポが良くて、特に紳士と奥さんとのそれは、読んでて吹き出してしまうわ。
仲良き事は美しき哉――ねv
まだ寄り添う人が居ないと言う人、来年のクリスマスには、貴方も脱・ロンリークリスマスを目指して頑張って!
それじゃあクリスマスソングを紹介して、今夜はお終いにしましょ。
賛美歌第二編217番――「The Holly And Ivy(柊と蔦は)」!
イギリスに古くから伝わってるけど、キリスト教伝来以前から、ケルトの祭礼で歌われてきたと云われてるわ。
ケルトで柊は男性、蔦は女性を象徴するもの、だとすれば歌詞は夫婦を暗示してる…かもしれないわね。

じゃあ皆、明日も一緒に楽しく歌いましょ♪





                 【柊と蔦は ― The Holly And Ivy ―】




歌詞

The holly and the ivy♪
When they are both full grown♪
Of all the trees that are in the wood♪
The holly bears the crown♪

O the rising of the sun♪
And the running of the deer♪
The playing of the merry organ♪
Sweet singing in the choir♪

The holly bears a blossom♪
As white as lily flower♪
And Mary bore sweet Jesus Christ♪
To be our sweet Savior♪

O the rising of the sun♪
And the running of the deer♪
The playing of the merry organ♪
Sweet singing in the choir♪

The holly bears a prickle♪
As sharp as any thorn♪
And Mary bore sweet Jesus Christ♪
On Christmas day in the morn♪

O the rising of the sun♪
And the running of the deer♪
The playing of the merry organ♪
Sweet singing in the choir♪

The holly bears a berry♪
As red as any blood♪
Any Mary bore sweet Jesus Christ♪
To do poor sinners good♪

The holly bears a bark♪
As bitter as any gall♪
And Mary bore sweet Jesus Christ♪
For to redeem us all♪

O the rising of the sun♪
And the running of the deer♪
The playing of the merry organ♪
Sweet singing in the choir♪

The holly and the ivy♪
When they are both full grown♪
Of all the trees that are in the wood♪
The holly bears the crown♪

O the rising of the sun♪
And the running of the deer♪
The playing of the merry organ♪
Sweet singing in the choir♪


(訳)

柊と蔦は 生い茂りて
共々に主を崇め 冠作る

(コーラス)
朝日は昇り 小鹿は走り
オルガンは鳴り響き 歌声楽し

柊の花は 白く清し
マリヤより生まれたる 嬰児に似て

(コーラス)
朝日は昇り 小鹿は走り
オルガンは鳴り響き 歌声楽し

柊の結ぶ 赤きその実
マリヤの子イェス君の 御(み)救い示す

(コーラス)
朝日は昇り 小鹿は走り
オルガンは鳴り響き 歌声楽し

柊の棘は 青く光り
マリヤより生まれたる 嬰児守る

(コーラス)
朝日は昇り 小鹿は走り
オルガンは鳴り響き 歌声楽し

柊の樹皮は 苦い良薬
救い主の身を 回復せし為に

(コーラス)
朝日は昇り 小鹿は走り
オルガンは鳴り響き 歌声楽し

柊と蔦は 生い茂りて
共々に主を崇め 冠作る

(コーラス)
朝日は昇り 小鹿は走り
オルガンは鳴り響き 歌声楽し


(↓から、びょり記)
歌詞の翻訳、自分が適当にした部分も有るので、あてにしないでください。(汗)
つか歌詞読むと、柊ばかり讃えてて、蔦が可哀想になるくらい、影薄いんだが…。
写真は柊と蔦でもなく、真珠の首飾りでもなく、そうしたかったんだけど、見付からなかったんで、真珠っぽく見えなくもない、ツリーのオーナメントを代用に。(汗)

                       

                   池袋メトロポリタンホテルのクリスマスツリー。

    

池袋東武デパート側は毎年クリスマスディスプレイが凝ってて楽しい♪
窓硝子に白いボカシが入ってるおかげで、良い写真が撮れましたv(↑)

    

この近くに「皇琲亭」という、オールドスタイルの珈琲専門喫茶店が有る。
2階には喫茶経営者を目指す人の為の学校が有るらしく、珈琲好きには結構有名な店かもしれない。
店の佇まいやアンティークなインテリアが、とっても素敵なのです。
何より珈琲が本格的で美味しい。(紅茶は普通、つかここで頼むなら珈琲一択だろって雰囲気)

                   

           そしてパンナコッタを頼むと、季節に合せた絵をシナモンで描いて、出してくださるのだv


参考「真珠の首飾り――クリスマスの物語――(ニコライ・セミョノヴィッチ・レスコフ、作 神西清、訳 電子図書館:青空文庫)」

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