瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

天の七色、地の七色

2010年07月07日 22時30分15秒 | 旅の覚書
6/16に虹を見ました。
ビルに邪魔され半円形に見えなかったけど、綺麗でした。



↑6/19、紫陽花神社で有名な、白山神社まで出掛けて、紫陽花の写真を撮って来ました。
今回はその写真の公開。
写真が多い為、文字数少な目です。(汗)
写真がメインの場合は、かえってその方が良い気するけど。



↑参拝したのは文京区に在る白山神社。
毎年6月の2週間位、紫陽花祭を行うのです。
(→http://www.city.bunkyo.lg.jp/visitor_kanko_event_ajisai.html)



↑しかし生憎真の目的地だった紫陽花苑は、祭開催期間を過ぎたって事で、中に入れませんでした。(哀)



仕方なく金網の外から指咥えて眺めてましたが…今年は開花時期が例年より遅かった為、1番の見頃を待たずに祭を終えてしまったらしい。
そういう時は期間を延長してくれれば親切と思うのだけど、そうすると付近住民から文句が来る為難しいらしい。
紫陽花色に染まった丘を、願わくば登りたかった。



↑目当てだった紫陽花苑には入れなかったけど、神社の駐車場とその隣の白山公園も、紫陽花にぐるりと囲まれて綺麗だった♪



↑一応は目的果たせたし、まぁ良いかと。



↑紫陽花を見ると虹を連想する。



↑連なって描く、魅惑のグラデーション。



↑紫色の花が好きなんですよ。
桔梗とかホタルブクロとか藤とか菖蒲とか。



↑同じ紫でも地の質によって、淡く濃く変化するのがまた趣き深いよなと。



↑ポピュラーな紫だけでなく、他にも様々な色の紫陽花が咲いてました。



↑白~。



↑黄緑~。



↑濃いピンク~。



↑薄紫~。



↑赤紫~。



↑水色~。



↑花弁がこんな変った形をした物も在る。



↑こんな形や、



↑こんな形のも。



↑ガクアジサイと呼ばれる種類っすね。



↑白い鞠の様な。



↑ピンク~。



↑これもちょっと花弁が変ってる。



↑再び白~。



↑やっぱりこんな紫っぽい色のが1番好きですが。



↑来る前に一雨降ったらしく、葉に水滴が付いてたのが、また美しかった。



↑雨に似合う花。



↑漢字で「紫陽花」とあてた人は風流ですな。



↑境内では紫陽花の水中花を売ってました。



↑百合も見事に咲いてましたです。



↑おまけ、家の紫陽花。
もう花枯れちゃったけど。


ワンピース目次に「恋は一人上手にラブハリケーン」をUPしました。
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恋は一人上手にラブハリケーン その6

2010年07月07日 21時32分38秒 | ワンピース
前回の続き】





「んだよコレッ?チョコレート??どうせくれんなら酒とかにしてくれっつの!」
「何よその言い方!?言っとくけどそのチョコ手作りなんですからね!愛情たっぷり込めてあるんだから、有難ぁく味わいなさいよ!」
「へぇへぇ、お気持ち痛み入るよ。」

そんなそんなこれは夢幻嘘八百偽りだふぁんたじいだどりいみんぐだだってナミさんあげる人の好みに合せるのが1番だって俺に味見させてバレンタインの手作りチョコは大本命で意中の男に渡す物と相場が決められていてああああ果てしいないい夢を追いい続けえええええ(by.クリスタ○キング)

「何だぁナミィ!?ゾロに食い物やってんのかぁぁ!?」
「あ、ルフィ!・・流石に食べ物の匂いには鼻が利くわね!はい、これ、あんたの分♪」
「おほぉ!チョコレートじゃねぇか!!ナミ、サンキュー♪♪」

―んなあぁぁ!?!?ルフィにもおぉぉ!?!?!?(ガガーン)

「お、それってひょっとしてバレンタインのチョコかぁ!?」
「そうよ、ウソップ!・・・はい、愛してるわ♪」
「おう!俺も愛してるぞ!・・・だからクリマタクト製作に掛った費用早く払って下さいお願いしマス!」

―ウソップまでえぇぇぇ!?!?!?!?(ゲゲーン)

「あ!やっぱりチョコ有ったんだァ!?」
「はい♪チョッパーにも愛を込めて、バレンタインの手作りチョコレートよ♪」
「うわァ♪オレ、バレンタインチョコ初めて貰ったあァ♪・・・ロビンのチョコは?」
「御免なさい、私、バレンタインにチョコあげない主義なの。」

―チョッパアァァァァ!?!?!?!?!?(ゴゴーン)


「・・・で、サンジ君・・・って、どどどうしたのサンジ君!?いきなり総白髪化しちゃって!??」


「サンジの奴、今日、ずっとおかしかったんだ。」
「そ!俺とチョッパーがキッチンにおやつ貰いに行ったら、コイツ、1人で笑ってやがんの、わははははは♪って・・・。」
「1人で笑ってたのォ!?」
「んで、これから夜の見張り番、毎晩引き受けてやるからって言ってた。」
「夜の見張り番を?毎晩??どうして???」
「や、それがな、『俺の春がやって来たから』だっつぅんだよ。」
「私が昼、読書をしてる時も、コックさん、笑いながら近寄って来たわ、ババロアとアイスティー持って。」
「ババロアとアイスティー持って歩きながら笑ってたの・・?」
「週に1度の夜、航海士さんと自分の為に女部屋を空けて欲しいって熱っぽく頼まれたの。」
「・・・どうして私がそこに出て来る訳?」
「理由を尋ねたら、無粋な事は聞かないでくれって怒られちゃったわ。」
「便所の中でも笑い転げてやがったぜぇ、むふふふふふ♪っとかって。」
「・・・・ト、トイレの中でまで・・?」
「便器に映った自分のグル眉でも見て笑ってたんじゃねぇの?」
「近い内にナミが結婚して腹に子供が出来るから船から降ろせっつってたぞ。」
「私が誰と結婚して誰の子供をつくるってのよ!!?」
「知らねー。」
「今し方も夕陽に向かって1人笑ってやがってよぉ・・・何が楽しかったんだか知らねぇが、薄気味悪くてオチオチ眠れやしなかったぜ。」


「・・・・・・疲れてんのね、サンジ君・・・。」
「俺様が推理するにだなぁ、この暑さでフラフラになって歩いていた奴は、突然船を襲った揺れに階段から滑って転んで思っきし頭から落ちてしまった、と見たね!」
「暑かったもんな~、俺も脳味噌溶けちまうかと思ったぜ。」
「サンジの奴、頭開けて見たら脳味噌グツグツ煮えてるかもなぁ。」
「煮え過ぎちまって味噌汁になってたりしてな♪」
「ギャハハハハ♪うめぇ!うめぇよルフィ!!・・お麩を散らして『あなたぁん
♪今日、麩の味噌汁よぉん♪』、これがホントの『恐怖の味噌汁』!・・・ぬあんちゃってちゃって♪ギャハハッギャハッギャハハハハッ♪♪」
「うはははは♪ウソップうめぇ!それ凄ぇうめぇよ!!うはははははっっ♪♪」
「アホエロコックがおかしいのは元からだろ?単に覚醒しちまっただけじゃねぇの?」
「先天病だとしたら完治は難しいかもしれないな・・。」
「ひょっとして、悪霊の類に取り憑かれた可能性も有るんじゃないかしら?」
「おめぇ・・・霊なんて信じてんのかよ?」
「あら、剣士さん、この世には未だ未だ人知を超えた不可思議事象が起こりうるものよ。」
「分った!!キツネに化かされた!!」
「この船の何処にキツネが居るってのよルフィ!?」
「しししっ♪タヌキなら居るんだけどなぁ♪」
「オレはトナカイだ!!」


「・・・人がマジドツボに嵌ってとっぴんしゃんだってのに言いたい放題おちょくり放題しやがってぇぇぇてめぇらそんっっなに俺のドン底不幸が面白おかしいかあぁぁぁぁぁ!!!?」
「ギャ~~!!遂に発作の第2段階『暴走』にまで発展しやがった~~!!!」
「セカンドインパクトだ~~!!!」
「ちょ!ちょっと落ち着いてサンジ君!!何が有ったか知らないけど殺人は犯罪よー!!」
「離してくれナミさん!!・・こいつら!こいつら!揃いも揃って俺の繊細且つ曇一片も無いクリスタルハートを木端微塵子にしてくれやがってぇぇ!!俺の悲しい気持ちなんか誰も!!誰も~~!!!」
「良く解んないけど解ったから!!とにかく私のチョコを受け取ってからにして~!!!」

「・・・・・・え?」
「はい♪サンジ君にも愛を込めて、バレンタインチョコレート♪」

・・・それはオレンジのリボンで縛って小さな袋状にしてある白い包みで、見回せば奴らの手に持った物と寸分違わぬ同じ物・・・。

此処に来て、俺はやっと自分の勘違いに気が付いた。
そうさ、ナミさんは何時だって俺達全員に別け隔て無い愛情を注いでくれていたじゃねぇか!
そこに個人的好き嫌いとか、特別扱いだとかの感情・思考等一切有ろう筈も無く、なのに・・・なのに俺は・・・自分こそがナミさんの『特別な人』で『最愛の人』だなんて勝手に思い込んで・・・浮かれて走り回って・・・結婚して子供が出来るトコまで妄想しちまって・・・こんなドジで馬鹿な勘違い野郎なんか、ナミさんに相応しくないよネ・・。

「・・・それと、サンジ君には特別にチョコレートクッキーも♪」
「・・・・え!?」

渡された包みを解いてみれば、中から出て来たのはハート型のチョコレートクッキー・・・

「実は昨日キッチンを借りたのは、これを作る為だったのでした♪・・・サンジ君には今回チョコ作りを手伝って貰っただけじゃなく、何時も色々お世話になってるから、日頃の感謝の念を込めて特別に♪」
「うっっ!!ズッリィ!!!ナミ!!エコヒイキだぞそれ!!!俺にもクッキーよこせ~!!!」
「エコヒイキ反対~!!!オレもクッキー欲しいぞ~!!!」
『我々はぁ!!只今の航海士の行動をエコヒイキと見做しいぃ!!!断固クッキーを要求し続けるものであ~る!!!(←拡声器)』
「うっさいわねェ!!!あんた達が何時私のお世話してくれたっつぅのよ!?面倒ばっかり何時も懸けさせられてて、こっちが何か要求したい位だわよ!!!」
「聞き捨てならねぇなぁ・・・記憶を辿りゃあ、てめぇが普段世話んなってんのはアホ眉だけじゃねぇって事に気が付くと思うが?」
「何よゾロあんたまで!まさかジェラシー?」
「けっっ!・・・くだらねぇ!」
「・・・ナミさんは・・・」

「・・・は?」

「・・・ナミさんは・・・ナミさんは・・・やっぱりナミさんは俺の事を1番愛してくれていたんだねえぇぇぇぇぇ!!!!」

「・・・日頃の感謝の念を込めてだと・・・言ってるでしょうがこの、スットコドッコォォイ~~!!!!」

―カキーーーン・・!!!!!

「ギャ~~!!!サンジがナミにクリマタクトで打たれた~~!!!」
「いいい医者ァァァァァ~!!!」
「や、この場で医者呼んでどうするよ!?」
「すっげえぇ!!!ナミ、場外ホームランだぜえぇぇ!!!」
「大したもんだな、コックの奴全く放物線描いてねぇぞ。」
「時速150キロ超で飛んで来たコックさんを物ともせずに打ち抜く振り子打法・・・また腕を上げたようね、航海士さん。」




夜空を御覧、

無数の煌きが目に入って来るだろう?

中でも一際大きく輝く星・・・

そう、彼はお星様になったのサ。




【fin.】

…これはこれで読み返すのが辛い…全部そうではありますが。(汗)
以前にも書いたけど、このタイトルは仮で、結局良いのが思い付かず、そのまま投稿する事にしたという。
あんま考え込まず思い付いたタイトルは、長く気に入る良いものなんですよ。
これは考えちゃったから…タイトル付けるのって難しい。(汗)



・2004年3月7日、投稿部屋投稿作品
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恋は一人上手にラブハリケーン その5

2010年07月07日 21時25分44秒 | ワンピース
前回の続き】




まぁ、考えてみれば『妊娠』だとか『子供』だとか、流石に未だ未だ先の話だよな。
何もそんな焦って相談する必要も無いだろう・・・その時が来たらで良いさ、うん。


最後甲板に出た俺を迎えたのは、今、正に海に沈まんとする真っ赤な夕陽であった。
燃える様な赤に水平線が染まるのを目にする度、俺は航海する身に産まれてきた事を神に感謝したくなる。
日々繰り返し見ている風景、しかし1つとして同じものは無く、俺の目を厭きさせる事など更々有り得ない。
夕陽よ・・・お前は何処となくナミさんに似ている。

胸ポケットから新しい煙草を取り出し火を点ける。
昼間の熱気も冷めて来て、多少は過し易く感じられた。
・・・それにしても、ちょっと考え事をしている内にもう夕刻とは・・・『光陰矢のごとし』とは良く言ったもんだ。
嗚呼ナミさん、願わくば今この風景を君と観たい・・・明日も、明後日も、1年後も、10年後も、100年後も・・・2人寄り添い同じ風景を観られたなら、どんなに幸福か・・・。




                   《愛の妄想劇場(きりが無いんで)最終幕》
                      ― 君と観る愛の風景、何時までも ―
                  BGM:ショパン『ノクターン第2番変ホ長調作品9-2』




結婚して1年後、ナミさんの妊娠が発覚した。
俺とナミさんはルフィや皆と相談し、一時的だが船を降りる事の了承を得た。
猶予は5年・・・俺達はグランドラインに浮かぶ或る平和な小島、海を眼下に見下ろす丘の上に居を構えた。
船から離れている間も海は欠かさず目にしていたい・・・これは俺と彼女の共通の願いだった。
1LDKの小さな貸家の窓からは海に沈む夕陽を毎日眺められ、それが俺達の日課となっていた。
俺は港町の一角に在る某レストランでコックの職を見付け―最初は個人で店を開く事も考えたが、何せ5年という短い月日だ、俺としちゃ料理さえ出来ればどうだって構わねぇしな―日々の生計を立てて行く事にした。


「ただいま、ナミさん♪」
「お帰りなさぁい、サンジ君♪」

仕事を定時で終え家に帰り着き玄関に入ると、待ちきれなかったという風なナミさんのお出迎え、そして『ただいまのキス』・・・これも日課の1つだ。

「今日の夕食はね、サンジ君の好きなビーフ・シチューにしたのよ♪」
「ビーフ・シチューって・・・駄目じゃないかナミさん!君は身重の体なんだから、料理も何も家事は全て俺に任せて休んでいなくちゃ!」
「嫌よそんなの!サンジ君は外で朝から夕まで料理して疲れて帰って来るんだし、これ位の事・・・!」
「俺は料理をするのが好きなんだよ!・・仕事と捉えて嫌々やった事なんて1度も無いんだ!」
「サンジ君、私、サンジ君のお嫁さんなのよ・・・サンジ君の為に美味しい御飯作ったげたり、お部屋のお掃除したり、洗濯したり・・・それ位して当り前だと思うの・・・体の事なら大丈夫!とうに安定期に入ってるし、むしろ軽い運動ならした方が良いんだって・・」
「ナミさん!・・・別に俺は君に何もするなって言ってる訳じゃないんだ。それに、お嫁さんだから、旦那だから、この仕事をやらなくちゃいけないって決まりは無いと思うぜ。大事なのは・・・家族を守る為に、神様から自分に与えられた仕事を精一杯やり抜く事・・・ナミさんの今の仕事は『無事に健康な赤ちゃんを産む事』・・・これだろ?」
「・・・・うん。」
「良いコだ!」
ちっとばかし照れて子供っぽい膨れっ面を見せる彼女を、俺はお腹を圧迫しない様注意しながら抱き締めた。
航海していた時より少しだけ伸ばした髪は、1つに纏めておさげに結っている。
元々スリムな彼女は、妊娠したといっても中々お腹が目立っては来ず、6ヶ月目にしてやっとポコンとして来た時、初めて俺は彼女の中に1つの命が宿っているのを認識出来た。

妊娠初期の彼女は酷い悪阻で、見る影も無く痩せ細っていった。
それでも彼女は生来の気性の強さから『辛い』の一言はたった1度しか口には出さず・・・『大好きな蜜柑が食べられないのは辛いなァ』との言葉を聞いた時、俺は不覚にも泣いてしまっていた。
彼女の苦しんでいる姿を目の前にして、何も助けてやれない自分の無力さがほとほと情けなかった。

「・・ね、サンジ君!今日カモメ郵便で船の皆から手紙が届いたのよ!」
「ええ!?あいつらから!?で、何て書いてあったの?・・・つってもどうせ俺の事には一行も触れずに『君が居なくて寂しい』とか『早く君に戻って来て欲しい』とか、そんな事ばっかりだったんじゃないの?」
上着を脱ぎネクタイを緩めながら、俺はリビングルームに向う。
ソファに腰掛け背を伸ばし、彼女に側に来るよう声を掛けようとした・・・と、彼女はリビングルーム入口で立ったまま動かない。

「ゾロが・・・『鷹の目』に逢いに船を降りたって・・・。」
「あいつ・・・遂に・・・!」
自然と、俺も立ち上がっていた。
「勝つよね・・・ゾロ・・・勝って・・・私達が船に戻った時に・・・ちゃんと笑って出迎えてくれるよね・・・?」
「ナミさん・・・。」

『ナミの事、一生宜しく頼むぜ・・・おめぇになら任せられる・・・。』

あの時・・・既に決めてたってのか・・・親友・・・?
瞬間、奴とはもう、2度と逢う事は無いだろうという確信が俺の中に芽生えた。

「ナミさん・・!泣かないでナミさん!あいつはね、自分の生涯唯一の夢を叶えに旅立ったんだ!・・俺と初めて逢った時、あいつ、『剣士として最強を目指すと決めた時から、命なんてとうに捨ててる』なんて言いやがって・・・君には到底理解出来ない生き方かもしれないけど、奴にとって『鷹の目を倒す』ってのは、君が自分の見て来た世界を形に残す為『世界地図を描く』のと同じ、夢の実現に欠かせない手段なんだよ!」

「・・・サンジ君・・・サンジ君は、私の傍にずっと居てくれるよね・・?或る日突然、1人でどっか行っちゃうなんて事、しないよね・・?」
「当り前だろ!俺の夢は『オール・ブルー』ともう1つ、『ナミさんと添い遂げる事』なんだから・・!」

案ずるな親友!てめぇの意志は確かに引き継いだ!
この先何が有ってもナミさんは俺が守り抜く!
だから・・・安心して本懐遂げて来いよ・・・!

「ナミさん、窓から見て御覧よ・・・夕陽が綺麗だ・・・。」
「本当・・・海まで真っ赤に染められたみたい・・・。」
「ナミさん・・・夕陽が赤い理由を知ってるかい?・・・それはね・・・君のあまりの美しさに頬を染めているからさ・・・。」
「・・・・プッ・・・やだっもうっサンジ君ったら・・!アハハハ・・アハッ・・!」
「そう、君はそうやって笑顔で居るのが1番だよ。」

「・・・早く船に戻って皆に会いたいなァ。」
「5年間なんてあっという間さ!俺としてはそれまで蜜月を充分満喫していたいね、船に戻りゃ煩ぇ奴らに囲まれて、ろくに2人っきりにもなれねぇんだから・・・そう考えりゃ今のこの時間は貴重だよ。」
「時々、自分達だけ取り残されて、皆どんどん先に行っちゃって追付けない夢を見るの・・・。」
「あいつらが君を置いてくもんか!嫌だっつっても引き摺って連れてこうとするよ!」

「サンジ君は、船に戻っても禁煙続けるの?」
「え?・・・あ~、ど~すっかな~・・・後2人は子供欲しいしな~。」
「えー?私は1人で充分よ!だってそのたんびにこやって陸に降りるなんて嫌だもん!」
「そ、そんな~、ナミさぁん!」
「・・・あ・・!動いた・・!今、お腹の赤ちゃんが動いたわ!」
「ほほ本当~!?」
「名前、早く考えとかないとね・・・あ、でもウソップが名付け親になるって言
ってたっけ。」
「あんなノーセンス野郎に任せておけっか!」
「うふふっっ♪それもそうね♪」




「げへ♪げへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへげへげへげへげへぇ♪」

「・・・うおぉい、『なんちゃってプリンス』がまた発作起こしてんぞぉ~~。」

「げげげぇぇっっ!!何処から涌いて出やがったマリモォォ!!?」
「おめぇが、人が気持ち良く寝ている所にノコノコ来やがったんだろが!!!・・ったく、気味の悪い笑い声立てやがって!!せっかくの安眠が覚めちまったじゃねぇか!!」
「くくくくくくくくっっ・・・何も知らん奴が気の毒に・・・知らぬが仏とはこの事だぜっっ。」
「んだぁ!?脳に虫でも涌いたのか、おめぇ!?」
「予言してやる!てめぇは後数時間の内に、頭を抱えて驚愕と悲痛に塗れた叫びを上げる事であろう!」
「ほう、なら俺も予言してやるよ、脳を虫に侵されたおめぇは後数秒の内に、将来を案じた親友の手によってバッサリ殺られちまうってな!」


「あ!やっぱり此処に居たのね!」


「ナミっすわん♪♪♪」
後光を背負い俺達の前に現れたナミさん、手に持った白く小さな包みの中身は、多分きっといや間違い無く大本命の俺へのトゥルーラブチョコレート!!
待っていたよ!ずっと待っていたんだよナミさん!!大丈夫!!もう何も心配事ナッシング!!
さあ!早く俺の胸の中へ!!カモンベイベ~~!!!・・・・・って、何故に通り越して行かれるのですか~~???

「はいゾロ♪愛を込めて、バレンタインのチョコレートよ♪」

―馬ぁぁぁぁ鹿ぁぁぁぁなぁぁぁぁーー!?!?




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恋は一人上手にラブハリケーン その4

2010年07月07日 21時24分52秒 | ワンピース
前回の続き】




食堂に戻ると既にナミさんの姿は無く、冷蔵庫の中のチョコまでもが姿を消していた。
きっと今頃ナミさんは、何処ぞに隠れて、俺への愛をたっぷり詰めたチョコに、丹精込めてラッピングしているに違いない・・ふふっっ、ナミさん、君はなんて可愛い人なんだ・・。

愛を育むメインタイムもステージも見付かった、週1位なら部屋も貸し切り、ロビンちゃんからのお墨付も頂いた・・・当面は確かにこれで凌げるだろう。
しかし、何時までも隠し通せるものでもない・・・何時かは皆にバレる時が来る。
俺は更なる思案を巡らす為、『イマジネーションルーム』、早い話が『便所(&風呂)』に篭る事にした。


『便所』、それはこの船内において、唯一プライバシーの守られた安全地帯。
便所は良い、個室となってる点がデザイン的に素晴らしい。
便所には人の想像力を増幅させて止まない、某かの力が込められているのではなかろうか。
そう、人はただ排泄しにだけ便所に来る訳ではないのだ。

便器に座り、胸ポケットから煙草を取り出し火を点ける。

壁に耳あり、障子に目あり、俺達2人がどんなに密やかに付き合ったとしても、この狭い船内、皆に知れ渡るのは時間の問題だ。
ならば時機を見定め、正々堂々披露してはどうだろうか?
いっその事・・・結婚式を挙げてしまうとか・・・。
俺達は海賊、世間一般常識や法律とは無縁な世界で生きている人種だ。
そうは言ってもナミさんは女の子、『結婚式』や『ウェディングドレス』といったものに、普通に憧れを持っている筈・・・それを叶えてあげるのも、男の甲斐性ってもんだろう。




                        《愛の妄想劇場 第三幕》
                        ― 天国まで届けと願う、愛 ―
                       BGM:メンデルスゾーン『結婚行進曲』




『結婚式は身内だけ集めて簡素にしたい』との彼女の言葉から、俺達はとある島の美しい森に囲まれた湖のほとり、屋外にて結婚式を執り行う事にした。


「汝サンジ、貴方はこの女を妻とし、生涯愛し抜く事を誓いますか?」
「誓います。」
「汝ナミ、貴女はこの男を夫とし、生涯愛し抜く事を誓いますか?」
「誓います。」
「では、誓いのキスを―」

緑萌ゆる芝生に伸びた真紅のバージンロード、その上で俺達2人は向かい合った。
襟元が広く開いた、胸と裾のみに小花が刺繍された純白のウェディングドレスは、シンプルさ故に花嫁のスタイルの良さを際立たせている。
少しウェーブが掛ったオレンジの髪に短めのベールを被り、頬や唇ピンクに染めて、潤んだ瞳は紅茶色、白く小さな蜜柑の花を集めて拵えたブーケを手に持つその姿は・・・お世辞じゃなく、童話の中から抜け出してきたお姫様そのものだった。

「ナミさん、綺麗だ・・・本当に。」
「サンジ君も・・・その白いタキシード姿、王子様みたいに素敵よ。」

誓いのキスを終えた途端、鳴り響く鐘そして降り注ぐ祝福のフラワーシャワーと拍手、色とりどりの花びら舞い散る中、ナミさんはこれ以上無いという程、幸福そうな笑みを浮かべていた。

「サンジさん、ナミさん・・・御結婚、おめでとう御座います。」
「ビビちゃん・・!?わはっ!なっつかしー!!」
「来てくれたのね、ビビ!」
髪の色に合せて、空色のフワリとしたドレスを纏ったビビちゃんは、暫く見ない内に驚く程大人びて、そして綺麗になっていた。
「・・今だから告白しちゃいますけど・・・私、ずっとサンジさんに憧れていたんですよ!・・・だから、お2人が結婚されたのには、正直ちょっとショックだったりしました♪」
「えええええ!?ビビビビビちゃん!!それって本当~!!?」
「あら、実は私もコックさんの事、密かに狙っていたわ。強くて優しくて料理の腕も一流なんて、絵に描いた様に理想的な殿方ですものね。」
紫の、深いスリットが入ったドレス姿のロビンちゃんが、妖艶な微笑を見せる・・・俺は危うく幻惑されそうになっちまった。
「何よ2人とも!サンジ君はもう私の旦那様なのよ!?手を出したりしたら唯じゃおかないんだから!!」
「うふふ♪心配しなくても、お2人の間に割って入る隙なんて有りませんよ♪」
「そうね、悔しいけど、コックさんときたら航海士さんにベタ惚れですもの、手の出し様が無いわ。」
「まままいったな~♪2人とも、どうせならもうちょっと前に告白して欲しかっ・・っっ痛ぇ~!!」
「サ・ン・ジ・く~~ん!!」
「ほへんひゃふぁひ、ひゃびひゃん!ふぁんひぇいふぃひゃふひゃらほほふぃっふぁんひゃひへ~!!」
「結婚した側から不倫に走ってんじゃねぇぞ、イカ野郎!!」
「まったく、女ったらしってぇのは結婚しても治らねぇもんだなぁ!」
「パティ!カルネ!・・・煩ぇ!未だ走ってねぇだろがクソ野郎共!!」
「サンジィ!!」

「・・・クソジジィ!!」
「そんな可愛い花嫁、泣かすんじゃねぇぞ!チビナス!!」
「・・・・泣かす訳無ぇだろ・・何時までもチビ扱いしてんじゃねぇよ!!」
「本当だな!?」
「ルフィ・・・!!」
「ナミ泣かしたら承知しねぇぞサンジ!もし泣かしたら・・・・ぶっ殺すからな♪♪」
「・・・・・・目が笑ってねぇよ、お前。」

「ナミ、早く子供つくれよ!?産まれる時はオレが必ず取上げてやるからな!!」
「チョ、チョッパー!!幾らなんでも早過ぎよ!もうっっ!!」
「何照れてんだよナミィ?らしくねぇぞぉ♪よぉし!ならば子供の名前はこのウソップ様が付けて進ぜよう!!お前ら2人に任せるとノーセンスこの上ねぇからなぁ~。」
「・・・誰がノーセンスだってのよ、ウソップ?」
「ナミ。」
「ノジコ・・・ゲンさん・・!」
「やれやれ、先を越されちゃうとはねェ・・・ま、しっかりやんなさい!」
「ノジコも・・良い男見っけたら私に相談してね!捕獲すんの手伝ったげるから!」
「我が妹ながら言ってくれるじゃないさ!・・・ほら!ゲンさんも、何時までもそんな後ろで仏頂面してないで、何か声掛けてあげなよ!」
「喧しい!・・・私は未だこの結婚を認めておらん!!」
「っとに、いい年して往生際悪いったらないねェ。」
「ナミ・・・・嫌になったら、何時でも帰って来るんだぞ・・・!」
「・・・・有難う、ゲンさん・・。」

「おい、エロコック。」
「ゾロ!」
「クソ剣士・・。」
「悪ぃが、ちょっと顔貸して貰うぜ。」
・・・何だ?この期に及んでいちゃもん付けようってのか?
クソ剣士の奴、式中って事で3本の刀と腹巻は外して、しかも似合わねぇ事夥しくも正装していやがるが・・・体中から物騒な気放ちやがって・・・上等だ、相手になってやろうじゃねぇか・・!


「実を言えばな・・・俺もナミの奴に惚れてた。」
「・・・・・てめぇ、やっぱり。」

「昔から、欲しい物は自力で手に入れて来て・・・手に入らねぇ物なんか何も無ぇと思ってたんだがな・・・よりによって1番欲しい物を掻っ攫われちまうとは・・・まったく、おめぇには完敗だよ。」

「ナミの事、一生宜しく頼むぜ・・・おめぇになら任せられる・・・じゃあな!」

・・・ロロノア・・・今まで俺はてめぇの事、クソ剣士だとかクソ腹巻だとかクソマリモだとかマリモヘッドだとかマリモマンだとかマリモだとかマリモだとかヘナチョコだとかマリモだとかその他諸々散々悪口雑言の限りを吐いて来たが・・・根は正直で潔い、良い奴だったんだな・・・誤解していて済まなかった・・。



親友の立ち去る後姿を見届け戻ると、ナミさんは、澄み切った青空のただ1点のみを見詰めていた。

「お待たせ、ナミさん!・・・どうしたの?空に何か・・・?」
「・・・サンジ君。」
「!!どどどうしたのナミさん!!?そそそんないきなり涙流しちゃったりして!!?・・・何処か痛くしたのかい??それとも・・」
・・・まさか・・・俺との結婚が嫌になっちゃった、とか・・・?

「・・・ベルメールさんにも、今日のこの晴れ姿、見て欲しかったな・・・。」
「・・・・ナミさん。」
「天国からでも・・・ちゃんと、見えたかな・・。」
「見えたさ!こんな可愛い花嫁さん、俺だったら成層圏より上からでも、バッチリ見つけてみせるよ!」
「サンジ君・・。」
「ナミさん、好きな人の声や姿はね、どんなに離れた場所からでも判るもんなんだよ!天国のベルメールさんだって・・・きっと君の事、何時でも見守ってるさ!」

「サンジ君・・私、貴方と結ばれる為に今日まで生きてきた気がするわ・・。」
「俺もだよ、ナミさん・・・俺は君が居なくちゃ、この世界にたった独りぼっちの寂しい男なんだ・・。」





「むふ♪むふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふむふむふむふむふむふぅ♪」

―ドドドドドン!!!!ドドドンドドドドン!!!!

『おい!!サンジ!!お前何時まで便所で笑い転げてるんだよ!?さっさと出ねぇとクソがもれるだろ!!おいっっ!!・・うあっっも・・もれる!!クソッ!!も、もれる!!・・・は、早くしろ~~!!!』

・・・・・・・人がマジでナミさんとの『明るい未来計画』練ってるってのにどいつもこいつもぉぉぉ・・!!

―ガチャッッ!!・・バターン!!!

「ひょっとして狙ってやってんのか!てめぇら!!?」
「何訳解んねぇ事言ってんだよ!?1時間も便所篭りやがってぇぇ!!」

・・・はっっ、待てよ・・・『結婚』、『夫婦』と来たら次は・・・

「待てルフィ!・・・てめぇを男と見込んで話がしたい。」

「・・・その手を離せよ、サンジ・・・俺は早く便所でクソしなきゃなんねぇんだ。」
「便所なんて何時だって行けるだろ、俺の話は一刻を争うんだよ。」
「いや、俺のクソも一刻を争う事態なんだが。」
「近い将来、ナミさんは結婚し、子供が出来るだろう・・・その日が来たら、一時、俺とナミさんをこの船から降ろして欲しい。」

「・・・・・・・何言ってんだおめぇ??話全っ然解んねぇぞ???」
「だから!!ナミさんの腹ん中に子供が出来んだよ!!つまり妊娠だ!!そしたら航海なんて無理させらんねぇだろ!?一時的で良いから船から降ろしてって・・・おい・・・何、人のデコに手ぇ当ててやがんだよっっ!?」

「・・・サンジ・・・お前、今日、頭の具合悪かったんだなぁ・・・なのに朝飯やら昼飯やらおやつやら無理に作らせちまって・・・済まなかったな・・・今日の夕飯は簡単なもんで構わねぇから、ゆっくり休んでろよ。」
「な、何、人を憐れむ様な顔して優しい言葉掛けてやがるんだよてめぇ!?言っとくが俺は正常で・・!」
「・・まぁ、お前の頭の具合については後で皆とも相談するとして・・・今は便所でクソすんのが優先なんだようおおおおおっっ!!!」

―バターン・・!!!

「・・・・クソ野郎がっっ!・・・話にならねぇよ。」





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恋は一人上手にラブハリケーン その3

2010年07月07日 21時24分06秒 | ワンピース
前回の続き】





甲板に出るとビーチパラソルの下、ナミさんとロビンちゃんが読書している姿が見えた。
今日の様な猛暑でも、蒸し風呂サウナ状態の船内に居るよりかは、外の方が風が有る分だけ幾分過し易いのだろう。
待っててくれナミさん!(&ロビンちゃん)今、貴女のサンジが冷たいアイスティーとチョコレートババロアを届けに参ります!
そして共に喜ぼう!2人が愛を育める絶好の時と場所が見付かった事を!

・・・待てよ、確かに『見張り台』は2人っきりで過すには絶好の場所と言えよう。
しかし、だからと言って『初めての場所』までそれで良いものだろうか・・?
満天の星空の下抱き合うというのは中々そそられるもといロマンティックなシチュエーションで俺は大推奨いや一向に構わないのだが・・・。
やはり女の子は『初めての夜はベッドで』と考えるものではなかろうか?
・・・なのに初っ端から『青○』とゆうのは・・マズイよなぁ。

さりとてベッドの有るナミさんの部屋にはロビンちゃんも居るし・・・いっそ気にせず目の前でイチャつくか・・んでもって『ロビンちゃん、宜しかったら貴女も混ざりませんか♪』って何考えとんじゃ俺はぁっっ!

此処はロビンちゃんに訳を話して相談してみよう。
幸い彼女は奴らと違い大人だ、きっと理解してくれる筈。
どうせなら週に1回、夜、部屋を使わせて貰えるよう頼んでみるか。
彼女を邪魔者扱いするのは正直忍びないのだが、ナミさんが俺を選んでくれた以上、俺もその気持ちに応えてけじめを付けるべきだろう。
ロビンちゃん、俺は君の事も充分愛している。
でも今日、気付いてしまったんだ・・俺が本当に愛していたのは・・・ナミさんだったという事に。
どうか解ってくれ、ロビンちゃん・・・!




                         《愛の妄想劇場 第二幕》
                           ― 瞳の中に映る、愛 ―
                     BGM:ショパン『幻想即興曲嬰ハ短調作品66』





2人分の紅茶とケーキの載った盆を頭に載せ足元の扉を叩くと、中から少し緊張気味の声が返って来た。
入室の了承を得て扉を開き見れば、ベッドの上にやや顔を強張らせて座るナミさんの姿。
怖がらせない様、俺はなるたけ柔和な笑みを浮かべつつ階段梯子をゆっくり降りてっ・・・って・・・う、うああっっ!!

「うわっっ!!」
「サンジ君!!」

―ガラガラガッシャーン!!!

「・・・・・っっ痛っっ・・・てて・・・!」
「・・だ・・大丈夫?サンジ君・・?」
「・・や、俺は大丈夫なんだけど・・・せっかくの紅茶とケーキが・・・。」
足場を踏み外しちまった俺は、見事にすってんころりん、床一面に紅茶とケーキをぶちまけちまった・・・嗚呼、俺ってばなんてドジ・・・。
「勿体無ぇなぁ・・・。」
見る見る床に染み込んで行く紅茶を眺めて溜息1つ。

「あの・・サンジ君。」
「え?」
「右手、そろそろ退かして下さらない?」
「み、右手??」
・・・見ると、俺の右手はふっくら柔らかくも弾力の有る胸の上にしっかりと置かれていた・・ってうわあっっやべぇっっ!!そそそういや俺駆け寄ったナミさんに被さる様転んでどどどうりでさっきから右手が気持ち良いな~って思っててああこれはもう暫く右手は使えねぇし洗えねぇなんてコックに有るまじき事考えたり悩んだりしてって違うだろ俺ぇぇぇ!!
「ゴゴゴメン!!でででもこれは決して故意ではなくじゅじゅ純粋に幸福な事故あいや不幸な事故というものでつまりっっ!!」
「フフッ・・・そんなに焦んなくても解ってるわよ♪」
そう言って、菩薩の様な笑顔を見せるナミさん・・・にしても、嗚呼、俺ってば本当になんてドジ・・。
「片付けは後で良いから、ベッドに座ったら?」

ベッドに並んで腰掛けた俺達は、暫し無言で居た。
こここんな時何話したもんだかっっ・・ああクソッ、話題が全然思い付かねぇ!
ええと、ええと、『今日は良い天気でしたね♪』って天気の良し悪しからいったら如何にも話題に困ってますと言わんばかりだろがっっ馬鹿か俺はぁっっ!?
『ナミさん蟹座だったよね?俺は魚座!蟹座と魚座って相性良いんだよね♪』っつって占いなんて信じてるのあんた?案外女々しい男ねなんてイメージ持たせるよな事言ってどうする気だよ俺ぇ!?
『進む環境破壊、今俺達に出来る事は何でしょう?』、そんなもん自分1人の頭ん中で考えとけぇっっ!!
『今度向う予定の島で卵の特売してるスーパーが在るらしいんだけど何パック位買っといたら良いかな?』って何でそんな所帯染みた事寝室で話さなきゃならねぇんだよ俺の阿呆っっ!!
『あなたは神を信じますか?』・・そんなんどうでもいいわぁ!!ボケェ!!!

「・・・サンジ君ってさ、何で『ナミさん』って呼ぶの?」
「はははははいぃぃぃ!!??」
「ロビンやビビの事は『ちゃん』付けで呼ぶくせに、私だけ『ナミさん』・・・ね、どうして?」
「え・・?い、いや、そんな特に意味は・・そ、それを言うなら、何でナミさんは俺の事だけ『サンジ君』って呼ぶのさ?」
「そ、それは・・・!えっと・・・サンジ君が『ナミさん』って呼ぶからよ!」
「何だよ、それ~?だったら俺だって、ナミさんが『サンジ君』って呼ぶから『ナミさん』って呼ぶんだよ!」
「そっちこそ何よ!?じゃ、じゃあ私だってサンジ君が『ナミさん』って呼ぶ限り、一生『サンジ君』って呼んじゃうから!」
「真似すんなよなぁ!呼びたきゃ勝手に『サンジ』って呼びゃいいだろ!?」
「サンジ君こそ!そんなに呼びたけりゃ『ナミ』って呼べばいいじゃない!!」
「そっちから先に呼べよ!」
「そっちが先よ!」

「・・・・・一緒に・・呼ぼうか?」
「・・・・そだね。」


「サンジ」  「ナミ」


「アハハハハ・・・やっぱり、照れるね。」
「ヘヘヘ・・・すっげぇ、照れる。」

「・・自分でも子供っぽい事に拘ってるなって思うんだけど・・呼び方なんて本当、どうでもいいのにね。」
「呼ぶタイミングを外しちまったんだよなぁ・・・最初にそう呼んじまって・・・1度言っちまうと中々変更利かねぇもんさ。」
「特別扱いされるのって・・結構考えちゃうものなんだから・・『自分を特別に好いてくれるから』なのかな、それとも『自分が1番気に食わないから』なのかなって・・・サンジ君、それでなくても女の子皆に優しいし・・・正直、不安でしょうがなかった。」
「お、俺だって・・!君はあいつらを気さくに呼び捨てだし、何で俺だけ他人行儀に『君』付けで呼ばれてんのか・・・不安でしょうがなかったよ・・!」
「・・・サンジ君。」
そっと、俺の膝に手を置き、見詰め返してくるナミさん・・・そんなナミさんを俺は強く抱き締め、そのままベッドに倒れ込んだ。

「今夜・・・全ての不安を消したい・・・。」
「・・・灯りは消して、サンジ君・・・でないと恥かしいよ・・・。」
「点けたままでいいよ・・・君の瞳の中に映る、俺を見ていたいから・・・。」
「サンジ君の瞳の中にも、私しか映ってないわ・・・。」
「・・・愛してる。」
「・・・私も。」





「いひいひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひいひいひいひ♪いひぃ♪」

「とても愉快な笑い声ね、何か楽しい事でも有ったのかしら、コックさん?」
「いひいぃっっ!!・・ロ、ロビンちゃん!?何故此処にぃぃぃ!??」
「貴方が笑いながら私の所まで近寄って来たのよ。」

・・・そうだった、俺は本日のお茶とデザートをナミさんとロビンちゃんに届けに来たんだっけ。
しかし・・妄想しながらでも、無意識に給仕しに来れるとは流石にプロフェッショナルな俺だぜっつかひょっとして職業病か??

「ん?あ、あれ?ナミさんは?さっきまで此処に居た筈だけど・・・。」
「航海士さんなら今し方チョコにラッピングすると言って、キッチンに向かって行ったわよ。」
しまった擦違いか!・・・にしても、全くそれに気付かない程妄想に耽ってた俺って一体・・・。
「宜しければコックさん、そろそろお盆に載ってるお茶とデザート、戴けないかしら?この暑さで喉が渇いて仕方ないの。」
「ロビンちゃん、単刀直入に君にお願いする!これから週に1度、夜、俺とナミさんの為に部屋を空けて貰えないだろうか!?」
「・・・えらく突然な申し出ね、週に1度の夜、部屋で航海士さんと2人、何かするというの?」
「無粋な事は聞かないでくれよ、ロビンちゃん!・・・男と女が2人、夜、部屋に篭ってやる事なんて、1つしかないだろう?」
「・・・それは失礼な事聞いて御免なさい。週に1度の夜、部屋を空ける位の事、別に私は構わないけど?」
「有難う!!有難う!!ロビンちゃん!!君なら必ず解ってくれると信じてたよ!!」

ああナミさん!これでもう大丈夫だ!君の愛・・俺は何時でも受け止める用意が出来ている!!

「・・・ロビンちゃん・・・今までの君の親切と愛、俺は一生忘れない・・・さよならっっ!!(涙)」



『・・・・・そういえばコックさん、ノース・ブルー出身って言ってたわね・・・可哀想に、暑さには頗る弱かったのね。』





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恋は一人上手にラブハリケーン その2

2010年07月07日 21時23分17秒 | ワンピース
前回の続き】





待て俺!早まるな俺!浮かれてる場合じゃないだろ俺!
激しくリズムを刻む鼓動に合せて、1人コサックダンスを踊り出してしまいそうな自分を叱咤する俺。
そう・・今第一に考えるべき事は・・・『晴れて恋人同士となったナミさんと俺が、如何にして愛を深め合うか?』、だ!

この船にレディは2人、対して野郎は俺を含めて5人・・・非常にバランスの悪い数字と言えよう。
そこへもってきて俺とナミさんが付き合うとする、と、残るはレディ1人にあぶれた野郎共が4人。
これは非常に危険且つ由々しき事態、場合によっちゃ残されたロビンちゃん1人を巡って戦争となるやもしれぬ・・ルフィ海賊団旗揚げ以来の最大的危機一髪だ。
そもそも俺とナミさんが付き合う事を、あいつら快く祝福してくれるだろうか?

・・・・・やはり此処は暫く内緒にしておくが吉と見た。

となると、次に考えるべき事は・・・『ナミさんと俺が密会する時と場所』・・・これだ!
先ずは『時』・・俺の基本的1日を追って考えると・・・

午前5時頃起床~厨房で朝食準備~午前7時朝食~終えて厨房で後片付け~合間に恋の蜜柑警備~厨房で昼食準備~午後12時昼食~終えて厨房で後片付け~合間に恋の蜜柑警備~厨房でお茶とデザート準備~午後3時デザートタイム~終えて厨房で後片付け~合間に恋の蜜柑警備~厨房で夕食準備~午後7時夕食~終えて厨房で後片付け、食材の下拵え、調理用具・キッチン台の掃除~合間に恋の蜜柑警備~風呂~午前2時頃就寝・・・

・・・・・ひょっとして何時もほぼ厨房と蜜柑畑に篭り切りなんじゃねぇの俺・・・?

よ、よし!今度はナミさんの基本的1日を追ってみよう!

午前5時頃起床~気象・航路の確認~合間に蜜柑の世話~午前7時朝食~気象・航路の確認~合間に蜜柑の世話~午後12時昼食~気象・航路の確認~合間に蜜柑の世話~午後3時デザートタイム~甲板で読書とロビンちゃんとの語らい~午後7時夕食~気象・航路の確認~入浴~部屋に戻って海図作成、航海日誌執筆~就寝・・・

・・・ううむ・・・どうやら俺とナミさんが交差する場所は食堂の在る『厨房』そして『蜜柑畑』といった所だろうか・・。

しかし『蜜柑畑』付近は猿やトナカイ、鼻やマリモといった生物が常時徘徊している・・・密会するに都合良い場所とはとても思えねぇ。

ならばいっそ『厨房』はどうだ?・・・いや、あそこも猿やトナカイ、鼻の出没多発地帯、おちおちキスもしてらんねぇだろう。

『風呂』・・・場所として悪くねぇがっつか想像するだに興奮の坩堝だが、長時間篭っていれば必ず誰かに怪しまれる・・便所目的の邪魔も入るだろうしな。

『格納庫』&『倉庫』・・・偶に鼻の奴が店開いてるしな~、いい年して、かくれんぼして遊ぶ奴まで居やがるし・・・やはり安全とは言い難い区域だ。

『甲板』・・・密会にならねぇだろが。
『ナミさん達の部屋』・・・ロビンちゃんが居る。
『男部屋』・・・・・論外。

・・・・・・・・・・。

―ダンッッ!!

・・・クソッ!なんてプライバシー侵害も甚だしい船なんだ!!
苛立ちをテーブルに力一杯叩き付け、煙草を食い千切らんばかりに噛締める。
・・情け無ぇ事に涙まで浮かんで来やがった。
せっかく・・せっかく相思相愛になれたってぇのにっっ・・ろくすっぽ2人っきりにもなれねぇなんて、なんて可哀想な俺とナミさん・・!
他に場所は無ぇのか!?・・未だ何処か在る筈だろっ!?

「・・そうだ・・!メインマスト上の『見張り台』・・・あそこだぁっっ!!」

―ガターン!!

勢い良く立ち上がった俺の後ろで、派手に椅子の倒れる音が響いた、が、今はそんな事構っちゃいられねぇ!

週1位のローテーションで回って来る『夜の見張り番』、時間にして皆が寝静まった深夜~早朝までいちゃつき放題やり放題、邪魔者が近付いて来たとしても事前に察知が可能、万が一現場を押えられたとしても『今、差し入れしに来てくれたんだ♪』との言い訳も立つ・・・これだぜっ!!




                       《愛の妄想劇場 第一幕》
                        ― 声を潜めて呟く、愛 ―
              BGM:ベートーヴェン『ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 月光』




晧々とした満月に照らされている海上を、船は波穏やかに進んで行く。
見張り台に上って観る月や星は、驚く位近くに見えて、手を伸ばせば楽に掴めそうな気さえする・・でもそれは錯覚で、本当は気の遠くなるよな遥か先に在って、手に入れたいと伸ばした腕は唯虚しく宙を彷徨うそれだけで。
・・・俺にとってナミさんとは、そんな存在だったのだ・・・今までは。

「サンジ君。」
「うわっっ・・ナ、ナミさん。」
振り返ればポットとバスケットを抱えて立つナミさんの姿・・星月夜に見惚れていた俺は、ロープを伝い上って来るナミさんの気配にも気付かなかったらしい。
「なぁに、その驚き様?せっかく深夜の見張り番御苦労様って事で、あったか~い珈琲とホットサンドの差し入れしに来てあげたのに。」
「ホットサンドって・・・ナミさん・・・俺の為に作ってくれたの?」
「ま、サンジ君のお口にはとてもとても合いませんでしょうが!」
「そそそんな事絶っっ対無い!ナミさんの作ってくれた物なら、たとえ塩と砂糖間違えてようが、酢とみりん間違えてようが、俺は美味しく食べられる自信が有るよ!」
「・・・あんたそれ、何気に失礼な物言いよ。」
あああああ感動だ・・!ナミさんが俺の為だけに作ってくれた料理!・・い、いかん、嬉し過ぎて顔面が崩壊しそうだ・・・。

「夜になって冷えて来たね・・・そうだ!ね、サンジ君の被ってる毛布ん中に入れてよ!」
「・・・・え?おお俺の被ってる毛布の中って・・・そそそそれってつまりいいい一緒にぃぃ!??」
「だってこのまま居たら風邪引いちゃうもの!」
そう言って強引にナミさんは俺の被る毛布の中へ飛び込み包り擦り寄ってくる。
「うふふ♪あったかーい♪男の人って体温が高くて冬は大好きよ♪」
肩に乗せられた頭から漂う蜜柑の香・・腕に当るふにふにと柔らかい感触・・・悪戯な子猫の様に目を細めて笑う表情・・・
やばいやばいやばいぞこの状況っっ手を伸ばしても届かなかったお月様でお星様が、いきなり至近距離にまで近付いて来ちまった!

「今夜は晴れてるから、満月も星も綺麗に見えるね。」
「あ、あ、ああ、そそそだねっっ。」
「あはは・・!何その上擦った声?ひょっとして緊張してるとか?」
「だだだって或る日突然麗しの月の女神が飛び込んで来るなんて、夢でも見ている気分だよっっ。」
「『麗しの月の女神』って・・・私が?・・プッ・・アハハハハ・・・!ほんっとサンジ君って面白ォい♪一緒に居てちっとも厭きないわァ♪」
「あははははは♪そそそんなに俺って面白い??まままいっちゃったな~♪あははははははあはあはあはは・・♪♪」

「・・・・サンジ君、月の女神はただ麗しいだけじゃないのよ。」


ギリシャ神話の中に『オリオン』っていう狩の名人、けれども女ったらしな若者が出て来てね。

或る日オリオンは、月の女神『アルテミス』御付きの娘にちょっかいを出したの。

その事は女神の逆鱗に触れて・・・オリオンは、女神の差し向けた巨大蠍の毒針に刺されて死んでしまった・・。

死んでオリオンは天上に上げられ・・・ほら、あそこに3つ星が並んで見えるでしょ?あれをこうこうこう繋いで『オリオン座』。

女神の怒りは彼の死後も尚解けなくて、同じく天上に上げた蠍に今でも追い駆けさせている・・・。


「気を付けてね、女ったらしさん・・・おイタが過ぎると麗しの女神も恐ろしい魔女に変ってしまうかもよ。」
「ははは・・・ナミさんに殺されるなら俺は本望だなー。」
「あら、良い度胸。」
「だって俺の命は、初めて逢った時から、とっくにナミさんに捧げてんだから!」
そう言って俺はナミさんを抱き締め、マシュマロの様なその頬を手の平で包み込む・・。

「・・・せっかくホットサンド作って来たのに・・冷めちゃうから。」
「冷めやしないよ・・・俺の愛は。」





「わは♪わはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははわはわはわはわはぁ♪」

「ギャ~~!!サンジが狂った~~!!」
「いいい医者ァ~~!!!」

「わはぁっっ!!ウソップ!チョッパー!何だよお前ら!?何時此処に入って来やがった!?」
「あああいやそのそろそろ3時だし宜しければおやつを戴けませんでしょうかねぇなんて考えてお邪魔しちゃったりなんかしちゃったりして~♪なななぁ?チョッパー??」
「うううん!!今日は暑いから冷たいおやつがイイナ~なんて♪ねねえ?ウソップ??」
・・・3時・・・?しまった!俺とした事がデザートタイムをうっかり忘れてしまうとは何たる失態っっ・・・
こうしちゃ居られねぇ!すぐさま本日のお茶とデザート片手に愛しのレディ達の元へ参上仕らなければっっ!!
光の速さでアイスティーを用意し、冷蔵庫から昨晩の内に冷やし固めといたチョコレートババロアを取り出し、盆にアイスティー2つチョコレートババロア2つを載せて、残りは適当に食って飲めと奴らに言い残し食堂を出て行こうとした、と―

「・・・そういやウソップ、今日夜番だったよな?」
「え?あああそそそうですがそれが何か・・??」
「俺が代ってやる。」
「えええ??ななな何故にいきなりぃぃ???」
「遠慮すんなって♪チョッパー、お前も当番来たら俺に言えよ!何ならこれから毎晩夜番引き受けてやるぜ!!」
「どどどうしたのさサンジ?何か有ったの・・??」
「・・・今は詳しい事は言えねぇ・・・が、敢えて言うなら・・・」
「「言うなら??」」

「遂に『俺の春』がやって来た・・・ってトコかな!(きらりーん!)」

「「・・・・・・・・・・・・・。」」

「今行くよ~♪ナッミすわぁぁぁぁん♪♪」

―バタン・・・!!


「・・・・どうしようウソップ・・・精神病とかならオレ、専門外だよ・・・。」
「・・・馬鹿野郎、てめぇが匙投げたら、誰がアイツを治すってんだよ・・・。」




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恋は一人上手にラブハリケーン その1

2010年07月07日 21時22分29秒 | ワンピース
暦上では2月の14日だってぇのに、水仕事が心地良い事この上ねぇ。
室温只今43度、近くに在る夏島の影響をモロに受け、GM号船内はちょっとしたミストサウナ状態に陥っていた。
ただ立っているだけでも体中から噴出しだくだくだくだく流れ落ちる汗・・ああいっそ頭を流しん中ダイレクトに突っ込んでしまいてぇ。
灼熱地獄の中での昼飯用意そして後片付けをし終えた俺が、キッチン台にもたれて骨休みの一服を取っていた時だ。
扉がきいと開き中に入って来たのは・・・我が麗しのナミすわんだった。
「どうしましたナミっすわん♪お茶のご所望ですか?紅茶ですか?煎茶ですか?番茶ですか?ほうじ茶ですか?抹茶ですか?昆布茶?烏龍茶?ジャスミン茶?甜茶?減肥茶?ギャバロン茶?十六種類の十六茶?その他諸々何なりとリクエストのお申し付けを~♪」
何時もの如く小躍りしながら近付きハイテンションで問い掛ける俺・・・が、どうにもナミさんの様子がおかしい・・。
閉めた扉にもたれ俯き何だかモジモジ、顔ははにかむ様にぽっと頬染めそのまま沈黙・・・な、何だ・・?何か
俺に言いたいのかナミさん・・?

「・・・あのね・・・サンジ君・・ちょっと、言い難いんだけど・・私に、教えてくれるかな・・?」

瞬間、咥えていた煙草がポトリと床に落ちる。

・・・お、俺に教えて欲しいって・・ナミさん、まさかー??




                        【恋は一人上手にラブハリケーン】 





「最初は自分1人で作るつもりだったのよ、ほら、昨日の夜サンジ君にキッチン借りたでしょ?実はあの時こっそり作ってたりしたんだけど、でもチョコなんて年に1度作るか作らないかの物じゃない、作り方うろ覚えで1人じゃ二進も三進も行かなくなっちゃってー、んで本日諦めてサンジ君にお願いしに来たってワケ。」
俺の隣、キッチン台の前に立ち包丁で板チョコを細かく刻みながら、ナミさんは話し掛けて来る。
「あはははははーそうですよねー、こんなちっと作るだけで即1千ベリー飛んでっちまうような、七面倒臭い製作手順は必要だわな代物なんて、普段そうそう作らないですよねー。」
「でしょでしょ?バレンタインチョコなんて結局はお菓子屋さんの営業戦略陰謀策略から生れたモノであって、この日チョコを渡す事に何の根拠も伝統も無い事なんか自分も重々承知のすけなんだけどやっぱり女の子としては素通り出来ないイベントというかねー、本当はロビンも一緒にって誘ったんだけど『私はもう女の子なトシじゃないから~』なんて付き合い悪いったら!」
「あはははははーロビンちゃんらしいなー、でもロビンちゃんだって未だ28歳、充分女の子としてイケテルと思うけどネ、そもそもレディは並べてその花の生涯閉じる時まで無垢な少女の心を胸に秘め生きてくものなのですヨ。」
刻んだチョコをボールに入れ湯煎にしながら始終話し掛けて来るナミさんに俺も相槌を返す。
・・成る程、さっきのはにかみ様は、『女の子なのに男にお菓子の作り方を教わるなんて恥かしいワ』な気持ちから来たもんだったんデスネ、ナミさん・・フフフ・・期待が外れてちょっとだけメロリンショボン・・。
ま、まぁしかし・・お陰でこうしてナミさんと2人、キッチンに並んで調理をするなんて、まるで新婚夫婦の様な夢の光景を実現出来た訳だからして。
嗚呼ナミさん、俺の傍でオレンジのエプロンを纏いしその姿、正しく貴女はお嫁に来て欲しい女性№1。
エプロンの下が肌も露なキャミ&ミニスカというのがポイント高い、前から見ればふくよかなバストを強調しつつも清楚なサマードレス風、だがしかし後から見れば大きく覗ける肩や背中や腕や太腿の抜ける様な白さが眩く裸エプロンにも似た興奮を覚えさせる。
調理の邪魔にならぬ様、頭上に留めたオレンジの髪は汗を吸ってしっとり湿り、露出した項そして愛らしい顔は外気の熱にのぼせて湯浴みした後が如くにほんのりピンクで艶っぽい、誠に素晴らしきかな常夏熱帯気候わんだほー!
嘗て、ナミさんと俺がこんなにも長い時間密着出来た事が有っただろうか?いや無い。
まったくもって聖バレンタイン万々歳だ!

チョコを手作りするのは調理に慣れてない人間には至難の業だ。
溶かすにしたってただ直火に掛けりゃ良いってもんじゃねぇっつかそんな事したら油脂分が分離してツヤは無くなるわ上手く形にならないわで謎の物体Xと化しちまう。
チョコを美しく仕上げる為には1にも2にも『テンパリング』、温度調節に気を遣わねば。
このテンパリング、言うは易く行うは難しで、溶かしたチョコの温度を先ず45~50度Cにし、続いて26~27度Cまで下げたら、今度は30~32度Cまで上げて保つという、とにかくアップダウン忙しなく大いに手間の懸かる作業なのだ。
特に今日みたいな高温多湿な室内環境は、チョコを製作するにゃ不適応極まりなく、俺はアルミラップや氷やドライアイスまで動員して何とか外気に影響されぬ様ナミさんのチョコ作りをサポートしたのだった。

テンパリングしたチョコレートに蜜柑を1房づつ潜らせ、冷蔵庫で冷やし固めたナミさん手製の蜜柑チョコは、如何にも『手作り』らしい見栄えではあったが、それ故製作中の一生懸命さが透けて見える様な、微笑ましい完成具合だった。
「はァ~やぁっと完成~♪んもう、チョコって要は溶かして固めるだけだってのに、どしてこんなに手間懸けなきゃいけないんだかっ!」

・・・そうか、今日は2/14日聖バレンタインデー・・全世界のレディ達が切なく胸に秘めた心を甘く蕩けるチョコに忍ばせ愛する男に贈る日・・そして手作りチョコといえば・・・紛うかたなき大本命にあげる物と相場が決まっている。
・・・・ってぇ事はだ、このチョコは・・・ナミさんの大本命・・・意中の男に渡される物・・・?
・・だ、誰だ!そんなドリームジャンボ宝くじ大当たり並にクソお幸せな野郎はっっ!?
「・・くん、サンジくーん??」
「うはぁっっ!はははいいっっ!!?」
ふと我に返ると、ナミさんが俺の眼前で手をひらひらさせながら覗き込んでいた。
「どしたの?そんな腕組して難しい顔で考え込んじゃって?」
「いいいいや、ちょっと頭がトリップしてスリップしてストリップしちゃってたみたいで・・・ハハハ・・で、何?」
「はいっ♪1つ、味見して貰えるかなァ?」
ナミさんはそう言うと、完成した蜜柑チョコの中から1粒摘み上げて、俺の手の平にそっと乗せてくれた。
「どう?・・ちょこっと甘過ぎたかな?」
「ん、いや、俺はこれ位甘い方が、中の蜜柑の酸っぱさも生きてて好みだな。」
「良かったァ!・・やっぱりあげる人の好みに合せるのが1番だもんね!」

え・・・?ナミさん・・・今何て言っ・・・

―バターン!!!

「美味そうな菓子の匂いがするぞぉぉぉ!!?」
「チョコの匂いだァ~!!」
「何だぁ?この白い煙??・・まさか火事じゃねぇだろうなぁ~!?」
「ルフィ!チョッパー!ウソップ!・・んもう現れたわね三馬鹿ァ!・・あんた達には関係無い事なんだから、大人しく出て行きなさい!!」
「何だよナミィ!!おやつ独り占めなんてズリィぞぉ!?」
「オレもおやつ食いたいぞォ~!!」
「い、いや、俺はただ火事かと心配して駆け付けてだなぁ・・!」
「あんたと一緒にしないでルフィ!あれはおやつじゃないのよチョッパー!ウソップ、あの白い煙はドライアイスを焚いたからであって火事じゃないの!解ったら3人とも早く出てけ!!」
「ああっっナミさん!!さっきの台詞、どういう意味で・・!?」
「ごめんサンジ君!私、ちょっとこいつら外に引き摺り出すから、チョコの保管とか後片付けお願いね!」

―バタン・・!!


『やっぱりあげる人の好みに合せるのが1番だもんね1番だもんね1番だもんねもんね・・・』


・・俺1人残されて、静寂に包まれたキッチン内に、先程のナミさんの台詞がエコー掛けて甦る。
眩暈に襲われ立って居られなくなりテーブルに手を付くと、ナミさん手製の蜜柑チョコが目に入った。
・・そうだ、早く冷蔵庫に戻さなければ、この南国トロピカルな室温にやられておしゃかになっちまう。
1ヶづつ丁寧に素早く、俺はチョコをトレイに並べてラップを被せ、冷蔵庫の奥深くに仕舞い込んだ。

全ての後片付けを終えて・・考えを纏めようと、椅子に腰掛け煙草を吹かす俺。
ふう、と吐くと、見事に煙がハート型になって宙に浮かんだ。

ナミさんは俺に味見をさせた・・・それはあげる人の好みに合うから・・・あげる人・・・チョコをあげる人・
・・即ちチョコをあげる人とは俺の事・・・?手作りチョコは大本命に渡されると相場が決まっている・・・という事は、まさか・・・?

ナミさんの大本命で意中の男とは、つまりは俺の事・・・!?

幻覚だろうか・・?目の前に春のお花畑が広がっているように見える。
幻聴だろうか・・?バックからヴィヴァルディの『四季―第1番ホ短調、春』が流れて来るように聞える。

春だ・・春が来たのだ・・脳味噌が沸騰する程の陽気であろうとも、バケツ10杯分は汗を流してんじゃねぇかと思えても、俺は今、この身に確かに春を感じている。

温かな日差しの下、花々はパステルカラーに咲き誇り、薄絹を纏った美しい女神達が樹々を縫う様に戯れ舞踊る・・。

そんな・・・そんな『俺の春』がやって来たのだ・・・!!





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