kotoba日記                     小久保圭介

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言葉の風

2019年08月20日 | 生活詩
    



めずらしくャXトに
葉書が届いていた



「秋きぬと目にはさやかにみえねども」



と青いペンできれいな文字が
書かれていた
しなやかな言葉の始まりに
内容の素敵を予感した
それは的中した
葉書を一つの作品のように
何度も読んだ


葉書をバッグに入れて
傘をさし
森へ散歩に出る


森に霧がかかり
秋の虫が鳴いている
蝉はもう鳴いていない
夏の終わりと
秋の始まりの
真ん中を
ゆっくり歩いてゆく


言葉は人を助けたり
救ったりするだけじゃない
もちろん
傷つけたりするだけじゃない


言葉は生きる美しささえ
あらわすことができるのだ
見る目のありようさえ
変えることができるのだ
葉書の内容は言葉の力だけではない
その人の生き方のありようだ




「秋きぬと目にはさかやにみえねども」




の歌にはあとに続く言葉がある




「風の音にぞおどろかれぬる」




森の中で
まだ秋の風の音は聞こえない
けれど
わたしの胸の中には
その人の言葉がさやかに
涼しく吹いていた
風は出口を探していた
わたしの胸に小さな風穴があいて
そこから
その人の言葉の風が通り抜けていった


言葉の風は森を漂い
見えなくなった
言葉の風のわずかが
胸にひっかかりとどまっては
秋の香りを胸に広げた


わたしは歩く
傘をさして
森を分け入って
まっすぐ歩いてゆく
その人の
言葉の香りとともに
歩いてゆく


コメント
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