千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

消え行く”バンカラ校”と”乙女の園”

2012-04-26 22:38:21 | Nonsense
先日、新聞で興味深い記事を読んだ。文部科学省の調査によると、男子高、女子高の男女別学の高校 が激減していて、全国で464校、全体の1割にも満たないそうだ。圧倒的に男女共学 校が多いとは・・・。

共学化にすすんだ理由として、先進国病のような少子化にあるという。ある男子校では生徒数が減り続けて、共学にふみきったところ、受験者数が2倍以上も増加。確かに、女子も受験できるとなると受験資格者も倍になる。受験料は私立高校にとって大事な収入源だ。笑えるのは、女子も入学してくると聞いた男子の入学者も増えたそうだ。乙女たちもくるとなると、学校があかるい雰囲気になるのは確かだ。

しかし、すっかり少数派となった別学には伝統ある難関校で、共学化などしなくても充分に学生を呼べる大学合格実績を誇る。昨年の東大合格者数では、上位7位までは男子校で8位は女子高と別学が連なる。中学・高校と男女の身体、精神面の成長にタイムラグがあることから、男女がともに学ぶのは非効率的という意見もある。そのため、共学でも、授業は別教室という学校もあるそうだ。

私自身はずっと共学に学ぶ乙女だった。
我が母校は創立100年を超え、詩人、政治家、学者、芸術家などを多く輩出している。学制改革に伴い、要するにお上のお達しで男子校から共学化されたようだ。その当時は、伝統ある男子校にスカートをはいた女子がやってくるのは大事件だったそうだが、体育と家庭教師だけは女性教師を配置したと聞く。つまり、私が在学中も、女性教師はたった2人、しかもとても優秀なご婦人で後は全員男性教師だった。女子学生は全体の4分の1しかいなかったため、男子クラスというのがあったのだが、隣から見ていても男子クラスは同じ高校かと思うくらい雰囲気、”匂い”ともに違っていた。まさにバンカラ・パラダイスで破天荒だった。思春期に異性を意識することなく男どもでのびのびと過ごせるためか、3年間、ずっと男子クラスは嫌だけれど、一度は男子クラスを体験したい、というのが男子の都合と願望だった。

大学に進学すると、更に女子学生は少なかった。私が入学した当時の経済学部は特に女子に人気がなく、学部では更に更に女子が少なかった。
私が入った数Ⅲレベルの経済数学が必須のゼミは、ゼミ開設以来、男子のみ。私たち女子がやってくると聞いた先輩やOBの一部は反対したと、後に教授の奥様に聞いた。ゼミの夏合宿では、女性禁止のある場所へ行くのが恒例となっていた伝統?があったのだが、それもとりやめとなるからという事情もあったとか。(その後、10年もたつと女子学生が過半数を占めるようになった。)ただ、地方の女子高出身の友人の話を聞くと、女子高は性別の固定された役割がなく、女子でもクラブ活動や生徒会、行事などでリーダーシップを発揮する機会に恵まれていること、多くの同性のメンターやモデルケースには恵まれていると感じた。恋愛だって、共学でなくてもできるし。一部地方では、県立の進学校ほど別学で県民の強い支持があるとも聞く。伝統の重みが生きている。

そして、現在の勤務先の部署は殆ど女子ばかりの女子高状態。女子限定話で盛り上がったり楽しいノリであかるい職場だと感じることもあるが、けっこう気を使ったりして面倒だと感じることもある。そもそもスイーツや韓国ドラマ、ジャニーズはよくわからないので全くついていけないし、経済や映画、本の話題の方がずっと好きなおやじ系だし。周囲の目を気にしなければいけなかったりと、前の男性軍に囲まれていた時のようにのびのびと働いたり提案したいとも思う。

最後に開成高校の校長の次の言葉を紹介しておきたい。
「同性の先輩を見て、早い段階に自分は何になりたいかと自己確立が可能になり、それに向かってすすむことができる。今ほど、男女別の学校が必要な時代はない。我が校は最後の1校となっても男子校であり続ける」

「第14回チャイコフスキー国際コンクール 優勝者ガラ・コンサート」

2012-04-26 22:36:53 | Classic
昨年の9月にジャパン・アーツ主催で開催された「第14回チャイコフスキー国際コンクークール 優勝者ガラ・コンサート」は大盛況だった。宣伝チラシにある「決定!新スターの誕生」という昭和の芸能界のノリのとおりに、まさしくキラ星のような若き演奏家たちだった。それに気をよくしたのか、追加決定されたのが今夜の優勝者ガラ・コンサート。演奏順はバランスよく、最初にヴァイオリン、チェロ、そして休憩をはさんで最後にピアノだ。

まずは、ヴァイオリン部門で2位(1位なし)で聴衆賞を受賞したセルゲイ・ドガージン君が登場する。
彼はロシア人にしては小柄だが、全身黒づくめの衣装とステージマナーは洗練された印象を与える。年齢から言えば、大学卒業した新人社員なのだが、まるで何年もステージ活動を続けてきたプロのような堂々とした物腰で、その分初々しさはに欠ける。選んだ曲は、モーツァルトが19歳の時にザルツブルグで作曲したヴァイオリン協奏曲第3番。昨年のチャイコフスキーVn協奏曲で自分の音楽観を披露した演奏スタイルとは異なり、モーツァルトの純粋な才能と音楽に心を自然にそわせて、繊細な音がきらめくように実に美しい。そして彼の音楽性はこの音楽のもつ初々しさを春から初夏へかわる新緑のように映している。思わずため息がでたのだが、演奏がおわってみれば、何の事もない、それが彼流の”説得力ある演奏”に説得されていたことに気がついた。

お次のナレク・アフナジャリャン君は、チェロの名曲中の名曲ドヴォルザークのコンチェルト。すべてにおいてバランスのよく、オールマイティな演奏家だと感じている彼の楽器は、ダヴィッド・テヒラー。勿論、貸与である。ドヴォルザークが1892年、アメリカ滞在中に作曲されたこの曲は、ボヘミア民族舞曲が反映されたナショナリズムと望郷があり、一方で黒人霊歌の影響も受けており、情熱のほとばしりの中にも溌剌とした新らしさも感じられる。彼の祖国、アルメリア共和国は複雑な歴史をもつが、彼自身はモスクワ音楽院に進みムスティスラフ・ロストロポーヴィチ財団から奨学金を授与されていて、実力をのばして栄冠を手にした。そんなこととは別に、のびやかに彼のチェロは歌う、ある時は情熱のほとばしるままに、そして悲しげに。高音が美しく、まるでヴァイオリンかと思った。演奏後の拍手を背に、舞台に設置されたチェリスト用の台から、チェロを片手に長い脚で軽やかにひょいと降りたナレフ君。大きな楽器が、彼の長身の中では可愛らしさすら感じる。大器の熟成が楽しみだ。

いよいよ、ダニール・トリフォノフ君の登場。何度も聴いて来て、いささか食傷気味のショパンのピアノ協奏曲第1番、、、だったはずだが、彼の演奏する音楽は全く違う。この曲って、こんなに素敵だったの。思わず集中して、一音も聴きのがしたくないと真剣になる。音の一粒一粒に、彼の考える、彼の感じるショパンが宿り輝いている。繊細で美しいのに、大きな音楽となっている。写真集でアイドル並みの売り出し方に疑問を感じるのだが、彼の音楽は本当に素晴らしいのだ。それにも関わらず、モクスワ交響楽団の演奏はさえなかったのが、とても残念。

最後にアンコール曲について。
セルゲイ・ドガージン君は端整なモーツァルトの協奏曲第3番を演奏したのだが、この曲は技術的には難しくない。小学生でも発表会で弾いているくらいだ。しかし、単に弾くことと演奏することは別の次元で、逆に、だから難しい部分があるのだが、それは兎も角、アンコールで選らんだのは超絶技巧のパガニーニ「ラ・モリアーナ」!抜群の技巧を披露しながら、決して荒れずに音が美しい。拍手喝采。観客の受けをよく計算した抜群な選曲だったと思う。
チェリストのセルゲイ・ドガージン君は、すべてピチカートで奏でる「ツィンツァーゼ:リョングリ」。粋で、あかるい音楽性が映える。なかなかやるもんだ。
・・・とくれば、ダニール・トリフォノフ君は何を演奏するか気になるところ。彼が弾き始めたのは定番中の定番、ショパンの「華麗なる大円舞曲」だった。まるで着メロのようなこの曲も、彼は自分の音楽観で個性的な誰も演奏したこともない、素晴らしい音楽をうむ。彼はピアニストではなく、作曲家の心をもった音楽家としてショパンを演奏しているのだった。

総じて3人とも、選ばれるべくして選ばれた覇者だということがよくわかった。覇者という言い方は好きではないが、これを踏み台にダニール君はウィーン・フィルとすでに初共演している。しかし、彼らは国際的なコンクールで優勝したのだが、免許皆伝で自らの音楽性を育てていくという旧来のタイプではなく、どのような師匠に指導されようと自らの音楽性と個性をすでにもっていて立っている。ピアニストの中村紘子さんが世界で活躍できる日本人音楽家を育てるには、若い頃から演奏経験を積む必要があると牛田智大君をバックアップしていることの真意がよくわかった演奏会でもあった。完璧な演奏ではなく、プロとしての音楽性が求められている。

--------------------------- 4月26日 サントリーホール --------------------------------------

・モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調
・ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調
・ショパン:ピアノ協奏曲第1番 

■アンコール
・パガニーニ:ラ・モリナーラ
・ツィンツァーゼ:リョングリ
・ショパン :華麗なる大円舞曲
・チャイコフスキー :田舎のエコー


指揮 :アンドレイ・ヤコヴレフ
出演 :セルゲイ・ドガージン(Vn)、ナレク・アフナジャリャ(Vc)、 ダニール・トリフォノフ(Pf)、
演奏 :モスクワ交響楽団

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