千の天使がバスケットボールする

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リストラに泣く「第4の男」

2008-12-25 23:26:52 | Nonsense
小林、益川、下村氏に栄誉 ノーベル賞授賞式
【ストックホルム10日共同】2008年のノーベル賞授賞式が10日午後(日本時間11日未明)、ストックホルムのコンサートホールで開かれた。物理学賞の小林誠・高エネルギー加速器研究機構名誉教授(64)、益川敏英・京都大名誉教授(68)、化学賞の下村脩・米ボストン大名誉教授(80)にそれぞれ、カール16世グスタフ国王がメダルと賞状を授与。物理学賞の南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授(87)は授賞式欠席のため、同日、シカゴ大でスウェーデン大使から授与。

物理学賞は南部さん、小林さん、益川さんと日本人が独占。南部さんは物質が質量を持つメカニズムを提唱し、現在の素粒子理論の基盤をつくったと評価された。小林さん、益川さんは、物質の基本粒子「クォーク」が従来考えられていたより多い6種類あるという説を唱え、その後の実験で確認されたことが授賞理由となった。
化学賞は、下村さんとマーティン・チャルフィー米コロンビア大教授(61)、ロジャー・チェン米カリフォルニア大サンディエゴ校教授(56)が共同受賞。下村さんは、オワンクラゲから緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見し、発光の仕組みの解明にも大きく貢献した。(08/12/11 共同通信)

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日本人のノーベル賞受賞の朗報のかげで泣いた不運な男がいた。その人の名前は、ダグラス・プラッシャーさん。
新聞のノーベル賞受賞式の大きなニュースの片隅に掲載されていた不運な男の記事は、友人ともちょっとした話題になった。というのは、友人は現在米国住まいだから。

今年、化学部門で下村脩氏とともにマーティン・チャルフィー氏とロジャー・チェン氏は、「緑色蛍光タンパク質(GFP;Green Fluorescent Protein)の発見と開発」で名誉あるノーベル賞を受賞したが、その緑色蛍光たんぱく質GFPの遺伝子をつきとめた生化学者がプラッシャーさんである。この遺伝子を彼からもらって実験した3人は受賞したが、プラッシャーさんは選考からもれてしまった。今や生命科学分野で欠かせないたんぱく質の動きを見えるようにした道具を開発した功績は大きいが、そもそもGFPの遺伝子の発見がなかったらありえなかった。ノーベル賞の受賞者は3名まで、という枠内からこぼれ落ちてしまった研究者は珍しくないのだが、この「第4の男」に取材が殺到しているのは、なんと彼が2年前に研究職を失って、日系自動車販売店で顧客の送迎をする運転手になっていたからだ。
時給は10ドル!

失業する前の彼は、NASAの契約企業で先端プロジェクトに関わっていた。ところが、2003年のスペースシャトル・コロンビアの事故後、飛行回数の大幅削減を考えていたが、国際宇宙ステーションに実験棟を付設したい日本と欧米の反対にあい、シャトルの安全対策や後継機の開発に巨費をつぎ込んだために、科学プロジェクトをきった。プラッシャーさんたちだけでなく、生命科学系の研究者も大量解雇された。日本では派遣社員切りが話題になっているが、NASAのような外部への委託が多い米国の公的研究機関は、研究計画を時代や要請にあわせてよく言えば柔軟に対応するが、ある意味優秀な頭脳も冷酷に犠牲にする。これぞ、米国流究極のリストラ。

そんな彼に「腹がたつだろう」とは、記者のいじわるな誘導だが、彼はうらやむ気持ちもなく「食うのに困っている時、考えることは職を得ることだけ」と家族を思いやる。時給10ドルではワーキングプワー。米国ではノーベル賞候補に名前があがり優れた業績をあげても、リストラされたら単純作業の生活苦。あまりにも不遇ではないか。プラッシャーさんは現在57歳だが、米国では雇用に年齢差別がなかったはず。
せめてものなぐさめは、ふたりの受賞者が彼もストックホルムの受賞式に招待し、8日のチェン氏の記念講演後に紹介されたプラッシャーさんは会場から万雷の拍手を浴びたと言う。