旅倶楽部「こま通信」日記

これまで3500日以上世界を旅してきた小松が、より実り多い旅の実現と豊かな日常の為に主催する旅行クラブです。

アルタミラ博物館

2019-04-27 10:20:15 | スペイン
レプリカだが見に行く価値があった↓

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標高八百メートルを超えるブルゴスはすっきりとした青空の朝だったが

北のカンタブリア海との境にあたる山脈が見えてくると空の様子がかわってきた↓

三日前に降ったという雪がまだ残っている。

山脈のトンネルを抜けると雨になった。
アルタミラはその名前のとおり、少し高い(アルタ)見晴らす(ミラ)丘にある。
立派な博物館ができていた↓

無料のスペースは充実している。
1879年に発見した伯爵とその娘についてのバックグラウンド解説

アマチュア考古学者で、前年に訪れたパリの万博の展示品を見て「自分のところの洞窟にもあるのではないか」と探検をはじめた。暗い洞窟で地面を掘っていた時、一緒にいた五歳の娘が「パパ、牛だよ」と天井を指さした。下ばかり見ている人には見えなかったのですな。
↓二人の記念碑がある↓


地元のガイドさんとお会いして、見学スタート。
まずは三分ほどの簡単なビデオを見る。
一万八千年以上前と推察されている「彼ら」の暮らしを理解して次の部屋に進むと・・・

↑立派な洞窟が再現されていた。

1879年に発見された時、洞窟の入り口は落石でふさがっていた。
ここに再現されているのは落石でふさがる前の洞窟の姿。
つまり、ホンモノを見てもけっして感じることができない「当時」の姿である。

ひとくちに「レプリカ」と言っても、マドリッドの考古学博物館前にあるものとはスケールが違う。あちらは洞窟の絵の部分だけだったが、こちらは二万年前の様子と19世紀末の発掘の様子とを同時に理解させてくれる。


↑使われている色は黒と赤のみ。簡単に言えば黒は木炭、赤は錆。
これしかなかったのだけれど、結果的に二万年も残る最強の顔料だったのだ。

絵画としての表現力は、現代人とまったく同じレベル。いや、彼らのほうが上なのではないかとさえ感じる。

↑これは鹿ですね。
冒頭の絵は「牛」ではなく、今では絶滅してしまった野生の「ヨーロッパ・バイソン」。
岩が盛り上がっている場所をえらんで、3Dに見えるように描いてあった。

岩の凹凸を利用して描くスタイルはもっとも古いと推察される部分にも見つかっている↓

何を意味しているのか分からない抽象的に見える図形も多く見つかっている。
面白いのはそういった抽象図形が周辺の多くの洞窟にも描かれていたこと。
文字は発明されていなくても、共通の何かを現す図形が認識されていたということだ。

↓描いた人のものと思われる手のカタチ↓

手を置いてそこに炭を吹きつけるという手法をつかっている

描かれている天井がけっこう高いので「これ、どうやって描いていたんでしょうね」と質問があった。
ガイドさんの答えにびっくりした↓
「もとの天井は身長ぐらいの高さだったので手をあげれば描けたようです。この見学ルートの高さは1960年代に観光客が押し寄せるようになって地面を掘り下げたのですよ」
そうか、当時は現場保存とかまったく気にしていなかったということか。
19世紀後半から20世紀のヨーロッパはとにかく見学しやすい観光地にすることが最優先だったのだ。

**↓こちらは19世紀末からフランスの考古学者の手によって発掘されていった時の様子↓

伯爵自身は自分の発表した説を当時の権威であるフランス考古学会に徹底的に否定されて失意のうちに亡くなったのだが、数年してフランス人たちは「やっぱりその説が正しかったみたいですね」と言いだして発掘をはじめた。

描いた時に使ったと思われる、獣脂を器に詰めた「マロウ・ランプ?(そう発音したようにきこえたのですがよくわかりません」が見つかった。

+++
みっちり一時間以上ガイドしていただいてから、ホンモのの洞窟入口を見学しに屋外にでる↓

↑地図上で左の上がその場所


↓小さな入り口、近くにさえ行かせてくれない


本物をどうしても見たい人に、一応チャンスが用意されている。
金曜日の10:30に希望する人が名前を書いて箱に入れ、そこから五人だけが当選するのだそうです(^.^)



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