【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

フレッド・ジンネマン監督「地上(ここ)より永遠(とわ)に(From Here to Eternity)」アメリカ,1953年

2018-05-17 21:04:29 | 映画


第二次世界大戦の最中,軍隊の階級制度と個人との関係をとおして,アメリカの軍隊生活の過酷な生活の告発をテーマとし,軍隊内部の非人間性を暴いた作品。

 ジェームス・ジョーンズのベスト・セラー小説の映画化。この映画化は「アメリカ人がアメリカの『聖戦』に複雑に相反する感情を示していた朝鮮戦争のさなかに行なわれたこともあって,軍隊機構の非人間的な愚劣さを批判的に描いた内容が大きな反響をよんだ」。波に洗われて,浜辺で抱き合う水着姿の男女の熱いラブシーンも話題になった。

 舞台は太平洋戦争直前(1941年)のハワイ・スコフィード兵営。転属されたラッパの名手であるプルーことリー・プリューイット(モンゴメリー・クリフト)は,ボクシングの練習中に友達を失明させた過去をもち,二度とボクシングをしないと決めていた。兵営の中隊長であるホームズ大尉はボクシング狂で,ボクシングは精神教育に効果的であり,自分のチーム強化のためにプルーにも誘いの声をかけた。しかし,彼は過去の経緯があるので,これに応じない。

 隊内のまとめ役で小銃隊のウォーデン曹長(バート・ランカスター)は厳しいが公明正大に物事を判断する人と慕われているが,プルーは彼のボクシングへの勧誘をも頑なに拒否した。訓練中のプルーの気心が分かり,味方となってくれるのはアンジェロ二等兵(フランク・シナトラ)だけであった。

 中隊長のご機嫌取りの分隊長ガロヴィッチ軍曹は,言うことをきかないプルーを徹底的にしごいた。アンジェロは営倉主任シャドソン(アーネスト・ボーグナイン)にからまれ,ある日,衛兵義務を怠り,職務放棄をしたとの口実で営倉にぶち込まれた。上官の思い通りにならない少数派に対しては,陰湿な徹底的したヤキが入る,それが軍隊であった。

 プルーに対するガロヴィッチの苛めは続いたが,ある日,作業中の故意の邪魔だてに怒ったプルーは彼と殴り合いの喧嘩になり,大騒ぎとなった。毎日のように主任シャドソンに殴られているアンジェロは,脱走を計画。最終的に彼はトラックで脱走に成功したが,荷台のドアが開いて転落し,息絶えた。このとき,プルーはアンジェロを追悼するラッパを涙しながら吹くが,ここはラッパの音色とともに美しい場面である。

 プルーはアンジェロに徹底的な暴力をはたらいたシャドソンに果し合いを挑み,彼をナイフで殺してしまったが自分も大ケガをし,恋人であるロリーン(ドナ・リード)の家に身を隠した。これら一連の不祥事件を理由として,検閲総監部はホームズ大尉に対して,プルーにボクシングを無理じいし,不当に虐待したとして有罪と審判し,解任した(実際には軍の規定にしたがって辞表を書き軍隊を離れる)。ガロヴィッチは,軍曹から上等兵に格下げ措置がとられた。

 中隊長には女性関係があり,妻カリン(デボラ・カー)とは冷えた関係にあった。結婚して二年間だまされ続け,妊娠で希望を持ったが子どもを死産,今はもう子どもを産めない体になっていた彼女は,夫婦関係の不満から何人かの男との付き合いがあった。そんな彼女は,現在はウォーデン曹長と密通していた。過去をうちあけ,悩みを語り,心をひらいた彼女は,曹長に将校になってもらって,夫と別れ,本土で結婚したいと考えていた。しかし,曹長には軍隊を離れる気もちはなく,別れがくる。

 一方,プルーはアンジェロに紹介されたクラブでロリーンという女性を知り,恋に落ちた。クラブで働くロリーンは,プルーに惹かれ,彼のプロポーズを受けるが,「軍人とは結婚したくない。貯金をため,家をたて,母と住む」ことを夢見ていた。「マトモな職業の,マトモな人と結婚し,マトモな妻になって,マトモな家庭を築きたい」,それが彼女の願いであった。プルーは結局,自分が軍隊で働くしかできないと考えていて,ロリーンの夢との間に矛盾を感じるのであった。

 運命の12月7日未明(日本では8日)。日本の真珠湾攻撃。ロリーンのところで隠れていたプルーは,軍隊に戻らないように懇願する彼女をふりきり,決意して隊に戻ろうとしたが,その途中で彼を不審に思った味方の兵隊に射たれ,あっけなく死んでしまった。駆けつけたウェーデン曹長は死んだプルーに「要領の悪い奴だった,ボクシングさえすればよかったのに。皮肉にも今年は試合が中止になったんだが」と語りかけた。

 最後のシーン,ハワイから本土への船の甲板でアロハ・オエのメロディの流れるなか,お互いに面識のないカリンとロリーンが並び,短い会話をかわした。ロリーンは十二月七日に亡くなったプルーの名前を口にし,その時カリンは彼女が誰であるかということに気づくのだった。
 第26回(1953年度)アカデミー賞作品賞,監督賞。助演男優賞を受賞したフランク・シナトラは最初からこの役の獲得に強い執念を燃やし,受賞したことで人気を回復した。