安永五年。暮れも押し迫り、残り数日。
佐々木道場の改築工事が進む中、道場の敷地内から古い甕が二つ現れた。小さい甕には室町時代に入ってきた物らしい唐の古銭がはいっており、大きい甕には大小二振りの太刀がはいっていた。長い間湿気を帯びたところに入っていたため錆び付いていたものの、立派なものだった。
一方、縫箔屋の江三郎親方への職人奉公を望んだものの、体ができるまでという理由で、一時的に今津屋に奉公していたおそめも、年をあければ早一年。おそめのことを気に入ったお佐紀は、おそめさえその気ならばこのまま今津屋で奉公させたいと考えているという。
そこで坂崎磐音はおこんとともに、おそめの意志を改めて確認することになったが、おそめの職人奉公を望む意志の強さを再確認し、今津屋にもその旨を伝える。
翌日三十日、宮戸川での今年最後の仕事を終え、品川柳次郎の元へ年の瀬の挨拶に寄った磐音。そこには竹村武左衛門がおり、飲み屋へのつけの支払いを融通して欲しいと懇願。幾代にけんもほろろにあしらわれ、三人で、地蔵の親分の店に、一日早い年越し蕎麦を食べにいくことに。ところが、亀戸村の不動院で大賭博の手入れをするという、笹塚孫一、木下一郎太らの手伝いをすることなり……“第一章 土中の甕”、
大晦日。どさくさにまぎれ、賭博の金をねこばばしようとした武左衛門が、南町奉行所でお灸をすえられた後、釈放。迎えに出た磐音たちだったが、武左衛門の相変わらずな様子にあきれる始末。
その後今津屋へ年の瀬の挨拶に寄った磐音たち。その後柳次郎たちは帰宅、夜半の店じまいまで今津屋にいることにした磐音。
伝通院近くの旗本・池田左衛門尉の屋敷まで、出かけるという支配人の和七の用心棒として一緒に出かけることに。数日前に届けられるはずの返金が届かなかったために、受取にいくことになったのだが、実入りの少ない山田奉行の職に就任するというのにその借財を全額返すという……“第二章 おこぼれ侍”、
年が明けて、安永六年。正月を長屋で過ごした磐音とおこんは、長屋の人々に見つかり、格好のネタにされる。
翌二日。早朝おこんを今津屋まで送り、佐々木道場の仮道場のある丹波亀山藩松平家へとやってきた磐音。
その後、本多鐘四郎、門弟たちらと湯島天神から神田明神にお参りに行った昼下がり。料理茶屋で狼藉を働く大身旗本の倅らしき若侍と武家娘に遭遇。そこに割って入った鐘四郎が中心となって撃退する。
それから数日後、道場にその娘と父が礼を言いにやってきた。父は西の丸御納戸組頭依田新左衛門で、娘はお市。そんな彼らの様子から、どうやら依田は鐘四郎をお市の婿に迎えたいのでは、と推察した磐音。その読み通り、後日依田家から文が届き、婿入りの申し出が。
その話を進めるにあたり、鐘四郎は磐音に本多家の秘密を打ち明け、さらにひとつ確かめたいことがあるのだという。彼がかつてほのかに思いを寄せていた、彼の祖父と同じ御番衆篠原多左衛門の孫・お千代の幸せを確認したいのだと……“第三章 鐘四郎の恋”、
二月に入ったある日、磐音とおこんは、おそめを連れて縫箔の名人江三郎親方を呉服町に訪ねた。正式におそめが弟子入りする意思があることを伝え、それを承諾した親方。しかし住み込みの部屋の準備やいろいろと受け入れ準備が必要なことから、弥生半ばから弟子入りをすると話が決まる。
その帰り、宮戸川に鰻を食べに来た三人。久しぶりにおそめに再会した幸吉は、弟子入りの決まった彼女に励ましの言葉を贈る。
そこへ木下一郎太が磐音を呼びにやってきた。奇妙な殺しが三件ばかり続いているというのだ。いずれも腕の立つ剣術家ばかりが狙い撃ちされ、しかも刀傷ではなく強い打撃が加えられた様子だった……“第四章 履と剣”、
江戸を数日に渡って騒がせた唐人偉陽明の辻斬り事件も無事決着。
鐘四郎の婿入り話も進行していた。過去の感傷にも決別した鐘四郎だったが、磐音と共に面影橋を渡ったところで、お千代と亭主の後藤助太郎たちが現れ、襲いかかってきた……“第五章 面影橋の蕾桜”を収録。
シリーズ第十八弾。おそめの奉公話本格化と、鐘四郎の婿入り話がメイン。
ここ2~3巻で、磐音や奈緒たちに変化がありましたが、他の人々にもそれぞれに身辺に変化が。まだまだこの動きは続きそうかな?
<10/10/6>