黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『竜が最後に帰る場所』恒川光太郎(講談社)

2010-10-05 | 読了本(小説、エッセイ等)
学生時代、印刷会社でアルバイトをしていたぼく。バイト先の上司・山田は、ぼくを苛めたが、そんな中で唯一、社員の高尾とだけ、何かと親しくしていた。結局解雇されそのバイトを辞めた後、高尾のガールフレンドらしいマミという女性から電話がかかってきた。その後も彼女からしつこい程に電話がかかってきたが、無視で対応したぼく。そんな彼女とひさしぶりに電話で話した折、彼女から恨んだ相手を殺せる力を持っている、という話を聞く……『風を放つ』、
クニミツは、実父が七歳で亡くし、母・マサ子と暮らしていたが、やがて母は宗岡という男と付き合いはじめる。
しかし彼は何かとすぐに怒っては暴力を振るうDV男。それが高じてマサ子は殺害され、宗岡は逮捕。クニミツは、隣県の母方の実家に預けられ、育った。
その後成長するにつれ、死刑になっていたと聞かされていた宗岡が、実は懲役二十年でしかなく、しかも彼には本妻がおり、母は愛人であったと知る。その本妻・喜嶋カキコと話をしたクニミツは、彼女にはユキという娘がいて、ひきこもりだという話を聞く。後にユキが、コオリユキという名で『月猫』という漫画を発表したのを読み、深い感銘を受ける……『迷走のオルネラ』、
十二月の真夜中。鈴のような音と、雪を踏む音、人が通る気配を感じたぼくは、祖母がかつて言っていた<夜行様>だと思った。それを探し求め、夜の町を歩き、件の謎の集団に合流したぼくは、皆と一緒に町から町へと渡り歩いていたが……『夜行の冬』、
電子ピアノを買いに出かけた宏は、そこでアサノという青年に声をかけられる。妙に彼に近づこうとするアサノを不審に思い、真意を問うと、自分には子供の頃からある生物が集合体となり、別な形に擬装しているのを見抜き、“解放”する能力があるのだという。宏が買ったそのピアノがその“擬装集合体”だというのだが……『鸚鵡幻想曲』、
水中で生まれたひとつの個体。過酷な生存競争の中から生き残り、進化を遂げてゆく中で、翼の生えた巨獣・シンと出会い、ゴロンドと名付けられたが……『ゴロンド』の5編収録の短編集。

どちらかというとファンタジー色の強い一冊でした(トータル的なテーマは“解放”?)。
個人的には『夜行~』と『鸚鵡~』あたりの雰囲気が好きかな。

<10/10/5>