黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『悲しみを聴く石』アティーク・ラヒーミー(白水社)

2010-04-28 | 読了本(小説、エッセイ等)
内戦の続くアフガニスタン。町が戦場となり、周囲の人々が避難する中で、残された一家。戦場から植物状態となって帰ってきた夫を、その傍らでコーランを唱えつつ看病する妻。娘が二人いるが、やがて彼女の叔母に預け、家には二人きりに。
顔も知らずに結婚して十年。その大半を戦地で過ごしていた彼は、一緒にいたわずかな時間の間でさえも、優しい存在ではなかった。
妻は、快復の兆しのない夫に向かって、自分のこれまで抱えてきた苦悩や悲しみを打ち明け始める……

人の秘密や言葉を吸い取る“サンゲ・サブール”という石の伝説。それが砕けた時、苦しみから解放されるというそれに、植物状態の夫を見立て、彼に向かって秘密を打ち明ける妻の話。
男尊女卑が厳しいイスラム社会の中で、生きる女性の厳しさや悲しさと同時に、その内に秘めたしたたかさも感じました。

<10/4/28>