黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『Fの記憶』吉永南央(角川書店)

2009-12-04 | 読了本(小説、エッセイ等)
泥臭いやり方で建築解体会社・高永興業を経営するまでにのし上がった、嶽澤悦史。
彼が高校時代に捕まえては痛めつけていた同級生“F”が姿を消す前にいった“おまえの右手が、おまえの人生をぶっ壊しますように”という呪いのような言葉が不意に思い出される。
そんな中、請け負いたかった仕事を、商売敵のエフステージに金額ではなく質で負け、おまけに若い社員・西尾は問題を起こし……“第一話 右手 嶽澤悦史の場合”、
靴の製造販売を手がけるイマオカに勤めて21年が経つ、社員・関口容子。彼女の所属する総務部相談課に、内部告発文書が届いた。それは、人気商品である子供用の運動靴の欠陥を指摘するものだった。そしてその文書の扱いを巡り、社内で議論が繰り広げられることに。
そんな彼女は、小学1年の時、黒く塗ったチューリップを周囲に咎められた悔しさを代弁するかのように行動してくれた、Fの存在がずっと心に焼き付いていた……“第二話 黒いチューリップ 関口容子の場合”、
老舗の茶商・谷川園の六代目社長である谷川有輔。
母を厭い、彼女を殺さなければ自分の未来もないと思い詰めていた、25年前の高校一年の頃。追いつめられていた彼を救ったのは、家を出たほうがいいと助言してくれた2年先輩のFの言葉だった。
その後、自由への衝動を押さえ込んで家業に専心してきた彼だったが……“第三話 夜明け前に 谷川有輔の場合”、
定住せず、全国を働きながら放浪していた男・中谷晶。
一年前から勤めていたスーパーで、店長から誰かひとりやめてほしいと切り出され、手を挙げた。
そんな彼は保険の効く間に歯の治療をすることにし、“ひなこデンタルクリニック”を受診する。そのクリニックに近所の老人・岸がたびたび乗り込んでは、言いがかりをつけてくるという。たまたまその場に居合わせ、撃退した彼は、女医・高井陽菜子をはじめとする関係者から用心棒を頼まれて……“最終話 時 Fより”を収録。

かつて“F”というあだ名で呼ばれていた男の言動が、本人も意図しないところでさまざまな人の心に根差し、影響をもたらす…という『再生』のお話。
最初はちょとホラー?とか思いましたが、最後は後味の良い感じでまとまって、ほっとしました。

<09/12/4>