黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『円朝の女』松井今朝子(文藝春秋)

2009-12-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
旗本田中家の令嬢・千尋。女でなく男として生まれていたらどんなによかったかといわれた彼女。
父である殿様が贔屓で、たびたび円朝一門を屋敷に招いていたのが縁で、千尋も円朝を可愛がり、円朝はそんな彼女を高嶺の花として憧れを抱いていた。
元治元年、矢部専次郎という旗本の次男坊との縁談がまとまった千尋。しかし矢部は、祝言を前に長州征伐に出、その間に殿様は亡くなってしまう。慶応四年、専次郎は戻ったものの……“其ノ一 惜身の女”、
円朝二十五歳の頃。贔屓の薬種問屋・境屋の旦那が、彼を吉原の大籬、彦太楼に誘った。同業の加賀屋の若旦那と偽り、座敷に上がった円朝は、江戸の吉原が生んだ最後の花魁・長門大夫と出逢う。
その二、三ヶ月後に、芸人として揚屋町の寄席に呼ばれた彼には、彼女から“若旦那様へ”と書かれた祝い幕が届けられた。
玄人うけした彼には、他に一、二歳上の名妓・美代治姐さんにも惚れられていた。ある時、羽織など衣裳一式を彼女から贈られ、それに着替えて長門太夫のもとに出かけた円朝は……“其ノ二 玄人の女”、
円朝の不肖の息子・朝太郎を産んだ母、お里。
同朋衆(茶坊主の親玉)の娘に生まれた彼女と関係を持った円朝。子を成したものの、わがままなお嬢さんの性格のままだった彼女を家へ迎え入れることはしなかった円朝……“其ノ三 すれ違う女”、
円朝と所帯を持ったお幸。江戸柳橋の売れっ子芸者だった彼女は、井上公にも贔屓にされていたほどで、かつては女形・沢村田之助に嫁いでいた彼女は、二度目の結婚。
非の打ち所のない彼女だったが、子は出来ず……“其ノ四 時をつくる女”
円朝は息子と、養女にした二人の娘の他、万年亭亀助という芸人の娘・せつを引き取っていた。女中代わりに働いて恩返しすると、身の程をわきまえ働いていた彼女。
やがて円朝お抱えの車夫、善蔵と親しくなったせつだったが、やがて彼は軍夫として戦地へ赴くことに……“其ノ五 円朝の娘”を収録。

江戸末期から明治にかけて活躍した落語家・三遊亭円朝と、その周辺の女たちの姿を、彼の古い門弟であり五厘(マネージャー的存在?)になった男が語るお話。語り口調が軽妙で読み易いです。
円朝は名前くらいしか知りませんでしたが、この作品を読むと本人より女性たちの方が魅力的な感じが…。逆にそんな女性たちに支えられているからこその<名人>なのかな、という気もします。

<09/12/2>