Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

スマートパーキングメーターでドライブもスマートに

2010-08-09 21:40:50 | Technology

 私の住んでいる岐阜県は、とにかく公共交通機関が貧弱です。よって長距離の移動だと車は欠かせません。県内はほとんどの店舗が無料駐車場を備えていますからお買い物も楽々ですが、いざ県外・・・具体的には名古屋に出ると、とたんに車が足かせになるケースが出てきます。駐車スペースが無いor高いのです。最近では移動の楽さと駐車料金を考えて、ほとんどが電車で移動していますが、それでも最初の駅までのアクセスには車は欠かせない足になっています。

 この都市圏での駐車スペース問題というのは車社会であるアメリカでも問題になっているようでして、日本でも都市部で見かけるパーキングメーターにIT技術を盛り込んだ実証プロジェクトが動いているようです。

空き数に応じて値段を変える、スマートパーキングメーター engadget

ひとつめは、現金のほかにクレジットカード、デビットカードが使えること。利用時間をあらかじめ延長しておくこともできます。とはいえ、これだけでは新型を名乗るほどではありません。面白いのはふたつめ、空き場所の数に応じて価格が変動するという点です。駐車場ごとにセンサーを備えているため、空き場所が増えれば安く、少なければ高く値段を変えることができます。一時間の利用料金は最低で0.25ドル、最高で6ドル。野球の試合があるときなどはそれ以上の価格にもなるということですので、なかなかのスマートぶりです。

 なるほど、パーキングメーターの不便な点として真っ先に思い浮かぶ「100円玉しか使えない」がこれで解消できるわけですね。これもネットとつながっていることで生まれたメリットです。そして、やはり注目すべきは利用状況によって価格が変わること、そして引用中にはありませんが、利用状況をリアルタイムでネットを使って確認できる点にあります。

 この二つを組み合わせることで、利用の多い区画のパーキングメーターは「混雑して高い」という状況を作り出せるわけですから、自ずとネットで「周辺の空いている区画」を探して駐車するという流れが出来ます。これによって、パーキングメーター周辺が混雑する状況を緩和し、また、イベントなどの確定で混雑が予想される場合は、高いパーキングメーターではなく、離れた場所に止めて1区画は安い公共交通機関を利用するなどといった使い方にも誘導しやすくなるでしょう。

 たかがパーキングメーターですが、これがITと組み合わさるだけで、都市の交通網に劇的な改善をもたらすかも知れないと言う話です。今後、今までITとは縁遠かったなにかにどうやってITを結びつけるかに注目が集まるかも・・・ここ数日、何故かそんな記事ばっかり読んでいましたので、なんとなくそんな気がしてきました。


ビル・ゲイツがポットン便所にご執心?

2010-08-08 23:59:59 | Thinkings

 今でこそ会社を離れてしまったけれど、マイクロソフトと聞いて真っ先に(あるいはWindowsの次くらいに)思い浮かべるくらい象徴的な人物と言えばビル・ゲイツ御大その人。彼は「ジョブズやGoogle」から「貧困や病気」に戦う相手をスイッチし、今も日夜働いています。

 そんな御大が今興味津々なのは、「穴」・・・?穴ってなんだ?と元記事のタイトルを見て「実にうまい導入をする」と思った訳ですが、穴は穴でも「くみ取り式のトイレ」の事でした。・・・「掘り込み式」ってのは初めて聞いたなあ。

Bill Gatesは「穴」にとらわれている, そう, 穴ですよ穴! TechCrunch

掘り込みトイレはすばらしい“、とGatesは言った。話し方はややジョークっぽいが、しかし真剣だ。最近は掘り込みトイレに関する本を、たくさん読んだそうだ。”誰も勉強しようとしないが、投資家が見向きもしないものの中では、偉大なものの一つだ“、とGatesは言う。

もうじき、掘り込みトイレの時代が来る“、彼はこう続けた。水洗トイレが世界標準になっているが、あれはまったく効率が悪い。あれを廃止する運動を、興すべきだ。

 水洗トイレ・・・えっと、下水道の事なんでしょうか?だとしたら、ちょっと待ってください。下水道は人口密度が高い都市部では、非常に有効なんです。

 と言いますのは、下水道の理念として「汚水を家庭に貯留させない」そして「一括処理」が挙げられます。人口が密集する都市部において、「各家庭・事業所の管理のもと、地下に汚水を貯留する」ということは、設備の更新や維持管理に大きなばらつきが出ることで、地下水汚染であるとか、外部への周期の漏洩、感染源の点在というリスクを高密度で抱え込むことになります。洪水が発生し水に都市が浸かった場合、糞尿による汚染は都市全体で発生する事にもつながります。また、何らかの形で処理をしなくてはならなくなりますので回収車が走り回ることにもなりますが、ゴミ収集よりも定点数が多く、生半可な形では対応できないでしょう。
 また、処理場、下水道管路にしても人口密度が上がればそれだけ共有率が上がります。一本の管路を1軒で使うより、100軒で共有した方が高効率です。都市部でなくても、ある程度の人口密度が取れるなら、実の所コストパフォーマンスも悪くありません。下水処理場や下水管路の耐用年数は50年・・・はあくまで法律上。経済的な点から回収を15年ごとに行ったとしても、各家庭ごとに合併浄化槽を入れるよりも総投資額が少なくなる場合というのは珍しい事ではありません。

 要は、初期投資がかかるものの、一度作ってしまえば便利に使えるのが下水道。しかしながら、それはあくまで「人口密度がある程度あれば」の話。発展途上国の都市部はともかく、人口密度が低い農村部などでは長大な管路が必要になるためお世辞にも効率が良いとは言えません。・・・日本の山間部とかでも同じ事が言えるんですよねえ・・・だから、一概に下水道が万能とは言えないんですよ、日本の場合でも。

 また、莫大な初期投資額が必要な点も問題です。下水道の処理場は水道に比べ大規模になる事が多く、当然建設費は多額になりますし、維持管理にも毎年金がかかります。それを発展途上国に用意させるのは酷でしょう。また、日本での「下水道が不適切なケース」に使われている合併浄化槽も、維持管理に電気と定期的な管理が不可欠ですから、インフラと世帯収入が整っていない場合はあんまりよろしくありません。長く使って30年くらいで取り替えないとですしね。

 となると、確かにくみ取り式というのは発展途上国で、かつ人口密度が低い場合は理想的なケースになるんですよね。もちろん外部から理想的に隔離されているという前提が必要ですけど、家庭の糞尿を封じ込めることで、臭気源や地下水質汚染源、感染源にしないという効果はきわめて重要です。そのほか、簡易水洗であるとか、貯留槽からの臭気を便器まで揚げないようS字トラップを挟むとかの技術をパッケージにして、郊外型の家庭用設置トイレとして提供するならば、各国の衛生事情は格段に改善するのでは?という期待が確かに持てます。

 以前にこのブログでも取り上げた「世界を救うのと、Facebookアプリを一つ増やすのとどっちが重要?」という問いかけに通じる物がありますが・・・今後はもっと、そういうローテクな部分に日が当たる機会が増えてくれるとうれしいですね。


ネット中立性の落としどころ

2010-08-07 23:59:59 | Thinkings

 ネットの中立性について、普段意識している人というのはほとんどいないでしょう。しかしながら、この原則があるおかげでYouTubeやニコニコ動画で高解像度動画を楽しめたり、グレーなPtoPソフトがガンガン稼働できるのです。

 要は、「使用目的・対象によって、割り当てる通信リソースを区別してはならない」ということです。メールクライアントを使うときでも、英和辞典を使うときでも、YouTubeで動画を見るときでも、観光情報やホテルの予約をするときにでも・・・同じウェブ利用なのだから、同じ環境を割り当てなさい・・・逆に言えば、ISPのサーバーを圧迫しているからと言って、特定サービスに接続する際に帯域制限を行うなんてもってのほか!ということで、現在のISPサービスの大前提となっています。
 帯域制限を行う際に、「使うサービス」例えばYouTubeの高解像度動画を制限するのではなく、「帯域を大量に使っているユーザー」を対象に一律制限するという方法をとっているのは、ここに要因があるのです。PtoPソフトの通信を片っ端から制限してやればいい・・・と「一部のユーザーが通信リソースの大半を占有」というような記事を読む度に思っていたわけですが、それができなかったのもこのためです。

 さて、このネットの中立性と言う概念は、ISPにとっては悩みの種ではある物の、ネットで活動する企業のビジネス公平性や機会均等を保つためには絶対に必要な物でした。それが揺るがされるかもしれない、という報道がなされています。まあ、速攻で否定声明が出されたので、ガセの可能性が高いですが・・・

グーグルがベライゾンとネット中立性イチ抜け? 両社は報道否定 GIZMODO

ニューヨーク・タイムズ(NYT)が今朝付け記事で、グーグルと通信大手ベライゾンがネット中立性を破る方向で内々に話し合いを進めていると報じ、「悪に魂売る気かい」と物議を醸してます

具体的には、

自社サービスやコンテンツの読み込みを高速化したい会社(例:VimeoよりYouTubeをサクサク表示したいグーグル)はISP(例:動画で全体の通信速度が落ちて困ってるベライゾン)にお金を払えば「高速レーン」でビュンビュン通信させてもらえる、という密議ですね。

と言う事なんですが・・・このNYTの報道について、Googleとベライゾンの両者から否定声明が出されたというわけです。

 もし、ネットの中立性が破られることとなれば、動画などの高トラフィックなウェブサービスを扱うようなスタートアップは、ISPにお金を払わないとサービスの立ち上げすら出来ない(速度が遅くて使い物にならないから)というような事態に陥ることは十分に考えられます。「我がISPの標準接続速度は1Mbpsです。それ以上の接続速度をサービス利用ユーザーに提供したい場合は別途契約が必要です」なんて具合に。世界的に展開している企業だと、それこそ対応すべきISPも星の数ほどある訳で・・・・。

 そうでなくても、ISPが「サービス提供会社の生殺与奪の権利を得る」という、とんでもなく大きな力を持つことになってしまいますから、今回の報道には、Googleとベライゾンをやり玉に挙げることで世論をこの問題に注目させる意図があったんではないかとも思われますが、本当のところは分かりません。

 なんにせよ、ユーザーがトラフィックをどう使うかについて、ISPが口出しする問題ではないという話なんですけどね。ただ、高トラフィックのサービスが今後増えていくという現状を鑑みるに、サービス提供者が「お金を出せない」今の状況からすれば、下手すると今後ネットの接続手数料が値上がっていく可能性は十分に考えられますね・・・。


反撃は搦め手で iPhone 4をドコモ回線で使えるSIMカード発売へ

2010-08-06 19:09:22 | Digital Devices

 私の元にiPhoneが届いてはや半月ほど。電池の減りがやけに早いような気がしないでもないですが、iPhone 3Gと比べるとレスポンスが段違いに早くなったため概ね満足しているところです。

 しかしながら、ソフトバンクの回線に関しては、周りでいわれているとおり、あまり満足度自体は高くないというのが・・・振り返ってみれば本当のところかもしれません。と言いますのも、やはり圏外になる頻度が他社と比べると多いような気がするんですよね。私はauの携帯電話も併用しているのですが、違いを感じることがたまにあります。実用上、そんなに不具合は無いのですが、建物内の個室に入っているときに圏外になってしまい、すぐに出るわけにも行かず困った経験があります。

 そんなソフトバンクに比べ、通話エリアの広いのがドコモです。その安定感からユーザーの支持も高く、iPhoneにしてもドコモの回線が使いたいと考えているユーザーが多いとか。

 ドコモ自身もiPhoneやiPadを自社回線で使ってもらうため、あの手この手を講じましたが、今のところソフトバンクへの独占提供は変わりそうにありません。この状況はしばらく変わらないかと思われましたが・・・思わぬ所から伏兵が現れました。

iPhone4、ドコモ回線で利用可能に 日本通信が月内にも 日本経済新聞

 通信ベンチャーの日本通信は米アップルの高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」をNTTドコモの回線で使えるサービスを始める。月内にもドコモ回線に対応した「SIMカード」を発売、輸入したアイフォーン4に差し込んで使う。日本ではソフトバンクモバイルがアイフォーン回線を事実上独占してきたが、日本通信は他社回線での利用ニーズが高いと判断した。
ー中略ー
 国内でもインターネット通販などでSIMフリーのアイフォーン4が販売されているが、日本通信は独立系の携帯電話販売店や輸入会社に呼びかけ、本格的な輸入を促す。将来は輸入会社や家電量販店と組み、カードと端末をセットで販売することも検討する。

 日本通信が当面の間扱うのはSIMカードのみ。つまり、iPhone 4は別口で手に入れる必要があります。今のところ、SIMロックフリー版のiPhone 4は輸入価格で6万円ほど。さらに、SIMが刺さって使えるようになったとしても、ソフトバンクやドコモのメールサービスは使えません。
 ソフトバンクが普通に販売している物に比べてかなり敷居が高くなってしまいますが、それでもドコモの回線で使いたい!というユーザーには、限りなくオフィシャルに近い道が開かれたと言えそうです。

 個人的な感想を言うならば、ここまでするよりもiPod touch+ポケットWiFiではダメなのかなあと思うのですが。とくに、通話無しのデータ通信のみの契約の場合、今後iPhone 4と同じ世代のiPod touchが出るまで待った方が賢いような気がするんですけどね・・・
 素直に、アップルがSIMロックフリー端末を日本でも販売してくれるか、ドコモにもライセンスを与える未来を期待したほうが、色々幸せかも知れません。ムリかも知れませんが。


Google Wave開発中止に最も割を食った男

2010-08-05 21:11:31 | Thinkings

 正直な話、あれ?と少しの間ポカンとしてしまいました。というのは、Google Waveが開発中止になってしまったからです。

 メールやIMに変わる、次世代のコラボレーション・コミュニケーションツールとして、文字入力1文字レベルでのリアルタイム中継機能や、柔軟なグループワーク機能、ドキュメントの履歴保存・自由な書き換え、写真や動画などのインライン表示、APIを自由に追加しての機能拡張・・・例として翻訳APIを挟んでの同時通訳など魅力的な機能が満載のサービスで、Google内部はもとより、外部でも熱狂的なファンが多数誕生していました。

 昨年5月の発表時は話題のみが先行して正直よく分かりませんでしたが、徐々に報道が進むにつれ、その機能性が浸透し初め、今年の5月に招待制から一般開放に移行された矢先・・・です。開発中止の理由としては、ユーザーが思ったほど集まらなかったから。確かに、これまでのメールやIMとは違うインターフェイスやユーザーエクスペリエンスは、新規参入を妨げるのに十分な敷居の高さを持っていましたし、基本的に数人で使うというコラボレーションツールとしての側面がユーザーを遠ざけてしまったのかも知れません。なんにせよ残念です。
 とは言え、Waveで培われた技術のほとんどは、オープンソース資産として公開されているようですから、ムダではなかったといえるでしょう・・・。

 今回の開発中止を受けて、最も悔しいのはGoogle Waveの中の人たちでしょうが、それに負けず劣らず割を食ってしまった人がいます。・・・Google Waveの「解説本」の中の人です。しかも、発売日まで半月残してこれだから、たまらないですよねえ。

「なんという切なさ……」 「Google Wave」開発中止、入門書著者にTwitterで慰めの声 ITmedia

 「涙で前が見えない……」「なんという切なさ……」――「Google Wave」の開発中止を受け、8月22日発売予定の解説書「Google Wave 入門」(日経BP刊)著者のあんどうやすしさん(@technohippy)に、Twitterで哀れみと慰めの声が寄せられている。
ー中略ー
 あんどうさんの心境は複雑のようで、「今日は壁に塗ったペンキが乾くのを一日中眺めていたい気分」「Google Waveが男坂に見える!」などとTwitterへ投稿している。それを見たほかのユーザーから「泣いた」「切なすぐる」などとコメントが寄せられている。

 準備や執筆などの長い時間をかけて書いた本が、発売前にして使い物にならなくなっているというのはなんとも涙を誘います。なんでも、このような憂き目にあったのはあんどうさんだけでなく、Alexander Benker氏、Martin Klinke氏、Kerstin Simmer氏共著のドイツ語の本もあったようで、ここに至るまで、いかにGoogle Waveが期待されていたかを物語るエピソードになりそうです。

 私の個人的な思いからすれば、Google Waveについてはコラボレーションツールであるという点で、「そんなに共同作業とかしないし」という理由から今まで直接触れずにここまで来ました。将来的にもパーソナルユースではまず使わないだろうと思っていましたが、グループウェアに統合されたりしたら面白いかもしれないと思っていただけに、ここでの開発中止は単純に残念です。
 それにしても、Googleの見切りは本当に早いなあ・・・一般開放からわずか2ヶ月なんて。せめて1年くらい様子を見ることは出来なかったのでしょうか?それとも、その余裕すらないくらい、閑散としていたんですかねえ・・・?


1980円の「更新無料セキュリティソフト」は魅力的か

2010-08-04 23:59:59 | PC

 私が使っているセキュリティソフトは、トレンドマイクロのウイルスバスター。はっきり言ってド定番の選択肢です。以前はノートンを使っていた時期もありましたが、数年前に乗り換えてから今のところ落ち着いています。後は、フレッツ光プレミアムに付いてきたウイルスバスターのOEMなど、我が家としては全体的に無難な構成となっています。

 ところで、2006年にある意味衝撃的なデビューを果たしたセキュリティソフトを覚えているでしょうか?未だにコンビニや量販店の店頭でよく見かける、ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」がそれです。他社が1年ごとに更新料、もしくはソフトウェアのバージョンアップを迫るビジネスモデルをとっている中、一度購入すればずっと、正確にはWindows公式サポート中は更新料無料という破格の条件を提示したことにあります。
 あれから4年。当初は3980円で提供されていた同ソリューションを、今度は1980円で発売するという発表がなされました。

ソースネクスト、更新料なしのセキュリティソフトを1980円で発売 ITmedia

 ソースネクストは8月4日、更新料無料のセキュリティソフト「ウイルスセキュリティZERO 1,980円」を発表、同日より販売を開始した。同社はこれまで最も安いラインアップとして1ライセンスのCD-ROM版を3990円で販売してきたが、さらに価格を下げるとともに、USBメモリでソフトウェアを提供する「Uメモ」形態を採用した。

 確かに安いのは魅力的ですが、当時とはいささか状況が違ってきています。と言いますのは、マイクロソフトの提供するSecurity Essentials等の無料ソフトという究極の選択肢が出てきてしまっていることです。いくら安くても無料には勝てませんし、マイクロソフトはWindowsそのものの提供元ということもあり、知名度的にも劣る物ではありません。マイクロソフトが本格的な広報戦略に打って出た場合(その可能性は少ないけれど)、安さを売りにしているこのようなセキュリティソフトは一気に苦境に立たされるでしょう。

 対して、同じ有料でも、ウイルスバスターやノートン、マカフィーやカスペルスキーは立場が違います。
 更新有効期間が長くなることで確かに以前よりはずっと安くはなりましたが、初期投資額は5千円~1万円とそんなに変わっていません。つまり、マーケティング的にはある程度の金額を提示することで、ブランドイメージの低下を防いでいると言えます。要するに、消費者はそれらのセキュリティソフトにある程度の金額という「付加価値」を求めていると見ているわけです。

 ある程度高い方が良いというのは変な話かも知れませんが、「安かろう悪かろう」と言う言葉が示すように、あまりにも安い物に対してユーザーの信頼度が落ちるというのはマーケティングの常識です。今回ソースネクストがとった大幅な値下げというやり方は、市場の相場に対しては大幅に安いし、かといって無料でもないという、中途半端な印象を与えかねない「諸刃の剣」的な方策ではないかと思えて仕方がありません。

 少なくとも、自分は選択肢に入らないですね・・・。今後ウイルスバスターのライセンスが切れたら、これまで通りブランドという信頼性に金を払うか、マイクロソフトの傘下に下るかの選択を迫られそうです。


ドコモも海外パケット定額サービス開始へ

2010-08-03 20:36:55 | Thinkings

 携帯電話でのパケット通信が定額になる前、出会い系等の大量のパケットをやりとりするサービスにはまっていた友人が、困ったような、それでいて少し誇らしげに支払い明細を見せてくれたことがありました。支払額は8万くらい。当時、携帯からのネット接続なんてメールくらいで、月々の支払料金が数千円だった私にとっては、何とも衝撃的な値段でした。

 しばらくしてパケット定額が始まると、今度問題になったのはPCのモデムとして使った際のデータ通信料。iモードやEzモバイルとは比べものにならないくらいPCでのデータ通信量は桁違いに多いので、数十万から100万円台の支払いが発生してしばしばニュースになっていたものです。

 歴史は繰り返すのか、出る杭は打たれるといいますか・・・今度問題になったのは海外でのパケット使用料。海外ローミングが必要になった場合、パケット定額が外れてしまうため、結果的にとんでもない額が請求されてしまうという仕組みです。

 最近は携帯は通話とEメールがメインというよりは、ネット接続用端末としての側面がむしろ他社との差別点として強調されている関係上、これはあんまりよろしくないと考えたんでしょうね。特にiPhoneを擁し、海外ローミングにも力を入れているソフトバンクが海外でのパケット定額を開始したことで大きなニュースになりましたが・・・最近は一社が新たなサービスや値下げを発表すれば、すぐに他社が追従するのが常です。その例に漏れず、今度はドコモが海外パケット定額プランを発表しました。

ドコモ、「海外パケ・ホーダイ」を9月1日に開始――3月末まで日額最大1480円 ITmedia

 海外パケ・ホーダイでは、国際ローミング中の利用が20万パケットまでは日額最大1980円、20万パケット以上は日額最大2980円で利用できる。なお、2011年3月31日までは日額最大1480円で海外のパケット通信を利用できる。対象となる通信は、iモード通信、iモードフルブラウザ通信、スマートフォンを利用した通信、PCなどと接続したデータ通信など、すべてのパケット通信が含まれる。ソフトバンクモバイルの「海外パケットし放題」はデータ通信は対象外なので、ここは大きな違いだ。

 サービス内容・提供金額はほぼソフトバンクと一緒ですが、後発の利点としてPCでのデータ通信に関しても定額に含められる点が大きなアドバンテージとなっています。これによって、海外でこそ使いたいiPhoneを初めとするスマートフォンを、パケット料金を気にすることなく活用できるキャリアが一つ増えました。特にメールのやりとりを頻繁に行う必要があったり、グループウェアにアクセスしなければならないビジネス用途での利用において、もともとビジネスに強いと言われるドコモがソフトバンクの先行を許さない姿勢を示す事は、大きな意味があったと思われます。

 これによって、取り残されているのはauですが・・・こればっかりは、海外のキャリアとの折衝もありますので、すぐに追従できるかは分かりません。スマートフォンの対応も最後発でしたし、ビジネス面での弱さをこれ以上強調しないためにも、早めに手を打った方が良いと思うのですが。

 これらの海外パケット定額プランは、2社とも「申し込み不要」という非常に重要かつユーザーにとって使い勝手の良いサービスになっています。これにau陣営が加わることで、日本においての「パケ死」が事実上根絶できるかも知れませんね。


パテントフリーの世界でテクノロジーが出来ること

2010-08-02 22:17:41 | Thinkings

 正直な話、意外でした。と言うよりも、完全に見誤ったという方が近いです。

パテントフリーゾーンに潜むチャンス TechCrunch

殆どの人が新興国におけるもう一つの利点に気付いていない。先進経済で作られた実証済みの知的財産を、タダで活用できるのだ。米国、ヨーロッパ以外の殆どの国々はパテントフリーゾーンである ― 企業が特許を申請する際、自社製品の市場がないと考えて申請しない国々のことだ。その結果その知的財産は、これらの国で使い道を見つけた人誰でもが利用できる。

 特許というのは、国ごとに存在し、自国の特許は申請しなければ他国では主張は出来ません。要するに、アフリカとかでは市場が小さすぎて商売にならないから、特許申請をしていない企業がほとんど。と言う事は、アメリカや日本を初めとする先進国の特許を自由に使って技術開発が出来るということです。
 私は、それらの特許を使って作った新興国向けの製品で新たにビジネスを起こそう、という記事だと思っていたのですが・・・元記事の筆者の意図は別の方向を向いていたようです。

例えば脱塩技術では、GEが世界最大級の会社である。GEは同社の脱塩事業の一部を買収するために$4.1B(41億ドル)以上費した。しかし、開始から 10年たっても、脱塩を低価格で維持可能なものにすることからは、ほど遠い。GEの発展は同社が所有する特許にかかっている。2009年にGEは、この分野の米国特許832件のうち、47件を発明した ― わずか5.6%、20分の1をわずかに上回るだけだ。もしGEが、〈保有していない〉特許 ― その数は多い ― のいくつかでも利用できた時、同社がどれほど進展するか想像してほしい。

 私が感銘というか衝撃を受けたのは、例としてあげられていたのが「金になりにくいが世界の為になること」つまり「先進国向けじゃない技術」だったことで、記事の内容もそちらに向けられていることに他なりません。

 発展途上国の問題を解決することは、ひいては先進国の課題を見直すことにもつながります。今すぐには金にならないけれど、将来の生活や環境を支える上では非常に意味深いことです。そのことを前提として、現在の起業家・知的ビジネスの状況を踏まえた次の筆者の言葉を読むと、何とも言えない気分になるのです。

世界を救うのと、Facebookアプリを一つ増やすのとどっちが重要?

 確かに、情報はインターネットのおかげで素早く流通するようになったし、ビジネスの判断にもスピードが最重要視されるようになってきて、世界は変わったような気がします。でも、起業家だとか研究者、政治の世界まで「結果」に対してスピードを求めているような現在の状況は、きっと健全じゃあないでしょう。今の世の中の経済の衰退は10年先、20年先を見据えた動きが失われつつあることと無関係じゃないのでは。

 たとえば、パテントフリーの世界で思う存分に特許技術を使って研究し、ものになった物だけを買い取るという手だってある訳ですよ。環境であるとか、新興国向けの技術を研究している企業や研究機関において、そのような動きが出てくる事を期待します。


情報の託し方に待った クラウドコンピューティング・EUの場合

2010-08-01 22:34:18 | Thinkings

 「ビジネスはクラウド」という風潮がかなり大きな波になり始めて1年くらいが経ちました。コスト縮減であるとか、ソフトウェアアップデートの即時性、データ共有の簡便さ、仕事の「場所」の問題やデータセンターの管理の一括委託といったメリットをひっさげて、新たな市場を開こうと躍起になっている所ですが、今のところ、世界的に大きなプレイヤーとしてはAmazon、Google、マイクロソフト、Salesforceといったアメリカの企業がひしめいています。

 日本においては、それらのアメリカ企業に加え、国内企業である日立、NEC、富士通、NTTといった従来からのビッグプレイヤーが顧客獲得に動いている所ですが、欧州においては状況はずいぶんと異なるようです。

クラウドコンピューティングで規則簡素化を-米ハイテク大手がEUに要求 ウォール・ストリート・ジャーナル

マイクロソフト、グーグルなど米国のハイテク大手は、従来以上に遠隔からのコンピューティング、データ蓄積サービスを提供できるよう、欧州諸国のプライバシー関係規則を簡素化させようと圧力を掛けている。

 EUは元々フランスやイタリアなどのヨーロッパ諸国が加盟する「国家連合」ですから、細かな法律の差違はあって当然です。ですが、それがクラウドビジネスをEU全土に渡って提供する場合、各国ごとのルールに合わせたサービス提供を行わなければならないなど、大きな障害になっていると言うのです。

 この問題については、

しかし欧州の一部諸国の政府は、民間企業、とりわけ米国の企業がそれほど膨大なEU域内市民情報を牛耳ることを嫌っており、ルールを統一する動きに抵抗している。ドイツはこの抵抗勢力の先鋒で、国としての厳しい基準を課す権利維持を主張している。

という考え方が背景にあるようです。現在の経済活動において、情報というのは何にも勝る武器となります。そのマーケティング上の重要なデータを他国の企業に牛耳られるというのは、国内企業にとって、そして国自体にとっても大きな損失であると考えられなくもありません。
 その点では日本は危機感が足らないように思えてしまいますね。・・・クラウド化が今後進むとして、国内企業の重要データをどこまで海外企業に託すことが出来るのか、データセンターが国内にあるのと海外にあるのとでどれくらいリスク管理の形が変わってくるのか、1企業にどれだけの情報を蓄積させても良いのか等の点について、政府も含めた立ち入った議論が必要になるかもしれませんね。