まず最初にはっきりとさせておきますが、私はPCが好きです。なぜなら、自由だから。スタンドアロンでも使い物になるし、何より「手段」がたくさん用意されており、様々な方法で情報を管理できるのはすばらしい事だと考えているからです。
だけど、その自由さがすべてにおいて有利に働くわけではないと言う事も、ここ数年の間に分かってきたのも事実です。
その豊富な手段によって、様々な方法でデータを自分の思うとおりに作り替えられる・・・要するにオフィスワークをこなしたり、写真や動画を編集したり、それらを組み合わせてデザインしたり、さらにはプログラミングで新たな「手段」を創り出したり・・・そう、PCは創造やそれに伴う管理など、いわゆるクリエイティブワークに向いていると言えます。
逆に言えば、そういう目的で使う必要にない物、携帯電話やサブで使う為のモバイルマシン、電子ブックリーダーにはそのような豊富な手段は必要ないと言えます。その事は携帯電話が徐々に実証をしていったわけですが、近頃急速に世の中に広まってきたiPhoneやiPad、各種Android端末がさらにそれを確固たる物にしつつあり・・・そして、それを如実に表す現象が、これです。
PCメーカーの注文が「崖から墜ちるように急減」 Market Hack
JPモルガンは「台湾からの注文が崖から落ちるかのように急減している」とコメントしています。「PCメーカーからのオーダーのプッシュアウト(先送り)がサプライチェインのいたるところで起こっている」のだそうです。
この台湾からの注文が急減したのはご存じ「インテル」と「AMD」。対してDRAMの需要は積み上がっているという記述もありまして・・・要するに、「x86を使ったPCの需要が落ち込んでいるけど、それ以外のチップのデバイスは好調である」ということ。具体的にはiPhone系とAndroid勢でしょうね。
これは、今までPCが担ってきた「クリエイティブ・ワーク」とか「管理」以外の部分について、その他のデバイスに急速に取って代わられているということ。要は「閲覧」を担う部分に各種特化されたデバイスが現れたことを意味します。電子ブックリーダーしかり、メディアプレイヤーしかり、ネット閲覧は全部とは言えないけれど・・・それらの用途に使われていたPCと言えばネットブックやそれに準ずるローエンドですから、これまで粗製濫造とも言える勢いで作られていたそれらの需要が一気に冷え込むことで、供給に歯止めがかかったというわけです。
「ネットブック・バブル」というのがまさにぴったりな状況でしたから、それが落ち着いたことで、PC市場も本来の姿を取り戻すのではないでしょうか。今後、PCの価格は緩やかに上昇し、元の水準・・・とまでは行かないでしょうが、5万円以下で買えるのはほんの一握りになると思いますよ。
また、モバイル特化とPCとの間にはこれまで以上に強い棲み分けが生まれることでしょう。PC以外のモバイル機器はより「閲覧」に特化し、PCはますます仕事や管理のための道具となっていくでしょうね。・・・少なくとも、仕事の現場から物理キーボードの無いPCが姿を消すというのは、ちょっと想像できないですから。