Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

ビル・ゲイツがポットン便所にご執心?

2010-08-08 23:59:59 | Thinkings

 今でこそ会社を離れてしまったけれど、マイクロソフトと聞いて真っ先に(あるいはWindowsの次くらいに)思い浮かべるくらい象徴的な人物と言えばビル・ゲイツ御大その人。彼は「ジョブズやGoogle」から「貧困や病気」に戦う相手をスイッチし、今も日夜働いています。

 そんな御大が今興味津々なのは、「穴」・・・?穴ってなんだ?と元記事のタイトルを見て「実にうまい導入をする」と思った訳ですが、穴は穴でも「くみ取り式のトイレ」の事でした。・・・「掘り込み式」ってのは初めて聞いたなあ。

Bill Gatesは「穴」にとらわれている, そう, 穴ですよ穴! TechCrunch

掘り込みトイレはすばらしい“、とGatesは言った。話し方はややジョークっぽいが、しかし真剣だ。最近は掘り込みトイレに関する本を、たくさん読んだそうだ。”誰も勉強しようとしないが、投資家が見向きもしないものの中では、偉大なものの一つだ“、とGatesは言う。

もうじき、掘り込みトイレの時代が来る“、彼はこう続けた。水洗トイレが世界標準になっているが、あれはまったく効率が悪い。あれを廃止する運動を、興すべきだ。

 水洗トイレ・・・えっと、下水道の事なんでしょうか?だとしたら、ちょっと待ってください。下水道は人口密度が高い都市部では、非常に有効なんです。

 と言いますのは、下水道の理念として「汚水を家庭に貯留させない」そして「一括処理」が挙げられます。人口が密集する都市部において、「各家庭・事業所の管理のもと、地下に汚水を貯留する」ということは、設備の更新や維持管理に大きなばらつきが出ることで、地下水汚染であるとか、外部への周期の漏洩、感染源の点在というリスクを高密度で抱え込むことになります。洪水が発生し水に都市が浸かった場合、糞尿による汚染は都市全体で発生する事にもつながります。また、何らかの形で処理をしなくてはならなくなりますので回収車が走り回ることにもなりますが、ゴミ収集よりも定点数が多く、生半可な形では対応できないでしょう。
 また、処理場、下水道管路にしても人口密度が上がればそれだけ共有率が上がります。一本の管路を1軒で使うより、100軒で共有した方が高効率です。都市部でなくても、ある程度の人口密度が取れるなら、実の所コストパフォーマンスも悪くありません。下水処理場や下水管路の耐用年数は50年・・・はあくまで法律上。経済的な点から回収を15年ごとに行ったとしても、各家庭ごとに合併浄化槽を入れるよりも総投資額が少なくなる場合というのは珍しい事ではありません。

 要は、初期投資がかかるものの、一度作ってしまえば便利に使えるのが下水道。しかしながら、それはあくまで「人口密度がある程度あれば」の話。発展途上国の都市部はともかく、人口密度が低い農村部などでは長大な管路が必要になるためお世辞にも効率が良いとは言えません。・・・日本の山間部とかでも同じ事が言えるんですよねえ・・・だから、一概に下水道が万能とは言えないんですよ、日本の場合でも。

 また、莫大な初期投資額が必要な点も問題です。下水道の処理場は水道に比べ大規模になる事が多く、当然建設費は多額になりますし、維持管理にも毎年金がかかります。それを発展途上国に用意させるのは酷でしょう。また、日本での「下水道が不適切なケース」に使われている合併浄化槽も、維持管理に電気と定期的な管理が不可欠ですから、インフラと世帯収入が整っていない場合はあんまりよろしくありません。長く使って30年くらいで取り替えないとですしね。

 となると、確かにくみ取り式というのは発展途上国で、かつ人口密度が低い場合は理想的なケースになるんですよね。もちろん外部から理想的に隔離されているという前提が必要ですけど、家庭の糞尿を封じ込めることで、臭気源や地下水質汚染源、感染源にしないという効果はきわめて重要です。そのほか、簡易水洗であるとか、貯留槽からの臭気を便器まで揚げないようS字トラップを挟むとかの技術をパッケージにして、郊外型の家庭用設置トイレとして提供するならば、各国の衛生事情は格段に改善するのでは?という期待が確かに持てます。

 以前にこのブログでも取り上げた「世界を救うのと、Facebookアプリを一つ増やすのとどっちが重要?」という問いかけに通じる物がありますが・・・今後はもっと、そういうローテクな部分に日が当たる機会が増えてくれるとうれしいですね。