Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

ネット中立性の落としどころ

2010-08-07 23:59:59 | Thinkings

 ネットの中立性について、普段意識している人というのはほとんどいないでしょう。しかしながら、この原則があるおかげでYouTubeやニコニコ動画で高解像度動画を楽しめたり、グレーなPtoPソフトがガンガン稼働できるのです。

 要は、「使用目的・対象によって、割り当てる通信リソースを区別してはならない」ということです。メールクライアントを使うときでも、英和辞典を使うときでも、YouTubeで動画を見るときでも、観光情報やホテルの予約をするときにでも・・・同じウェブ利用なのだから、同じ環境を割り当てなさい・・・逆に言えば、ISPのサーバーを圧迫しているからと言って、特定サービスに接続する際に帯域制限を行うなんてもってのほか!ということで、現在のISPサービスの大前提となっています。
 帯域制限を行う際に、「使うサービス」例えばYouTubeの高解像度動画を制限するのではなく、「帯域を大量に使っているユーザー」を対象に一律制限するという方法をとっているのは、ここに要因があるのです。PtoPソフトの通信を片っ端から制限してやればいい・・・と「一部のユーザーが通信リソースの大半を占有」というような記事を読む度に思っていたわけですが、それができなかったのもこのためです。

 さて、このネットの中立性と言う概念は、ISPにとっては悩みの種ではある物の、ネットで活動する企業のビジネス公平性や機会均等を保つためには絶対に必要な物でした。それが揺るがされるかもしれない、という報道がなされています。まあ、速攻で否定声明が出されたので、ガセの可能性が高いですが・・・

グーグルがベライゾンとネット中立性イチ抜け? 両社は報道否定 GIZMODO

ニューヨーク・タイムズ(NYT)が今朝付け記事で、グーグルと通信大手ベライゾンがネット中立性を破る方向で内々に話し合いを進めていると報じ、「悪に魂売る気かい」と物議を醸してます

具体的には、

自社サービスやコンテンツの読み込みを高速化したい会社(例:VimeoよりYouTubeをサクサク表示したいグーグル)はISP(例:動画で全体の通信速度が落ちて困ってるベライゾン)にお金を払えば「高速レーン」でビュンビュン通信させてもらえる、という密議ですね。

と言う事なんですが・・・このNYTの報道について、Googleとベライゾンの両者から否定声明が出されたというわけです。

 もし、ネットの中立性が破られることとなれば、動画などの高トラフィックなウェブサービスを扱うようなスタートアップは、ISPにお金を払わないとサービスの立ち上げすら出来ない(速度が遅くて使い物にならないから)というような事態に陥ることは十分に考えられます。「我がISPの標準接続速度は1Mbpsです。それ以上の接続速度をサービス利用ユーザーに提供したい場合は別途契約が必要です」なんて具合に。世界的に展開している企業だと、それこそ対応すべきISPも星の数ほどある訳で・・・・。

 そうでなくても、ISPが「サービス提供会社の生殺与奪の権利を得る」という、とんでもなく大きな力を持つことになってしまいますから、今回の報道には、Googleとベライゾンをやり玉に挙げることで世論をこの問題に注目させる意図があったんではないかとも思われますが、本当のところは分かりません。

 なんにせよ、ユーザーがトラフィックをどう使うかについて、ISPが口出しする問題ではないという話なんですけどね。ただ、高トラフィックのサービスが今後増えていくという現状を鑑みるに、サービス提供者が「お金を出せない」今の状況からすれば、下手すると今後ネットの接続手数料が値上がっていく可能性は十分に考えられますね・・・。