Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

パテントフリーの世界でテクノロジーが出来ること

2010-08-02 22:17:41 | Thinkings

 正直な話、意外でした。と言うよりも、完全に見誤ったという方が近いです。

パテントフリーゾーンに潜むチャンス TechCrunch

殆どの人が新興国におけるもう一つの利点に気付いていない。先進経済で作られた実証済みの知的財産を、タダで活用できるのだ。米国、ヨーロッパ以外の殆どの国々はパテントフリーゾーンである ― 企業が特許を申請する際、自社製品の市場がないと考えて申請しない国々のことだ。その結果その知的財産は、これらの国で使い道を見つけた人誰でもが利用できる。

 特許というのは、国ごとに存在し、自国の特許は申請しなければ他国では主張は出来ません。要するに、アフリカとかでは市場が小さすぎて商売にならないから、特許申請をしていない企業がほとんど。と言う事は、アメリカや日本を初めとする先進国の特許を自由に使って技術開発が出来るということです。
 私は、それらの特許を使って作った新興国向けの製品で新たにビジネスを起こそう、という記事だと思っていたのですが・・・元記事の筆者の意図は別の方向を向いていたようです。

例えば脱塩技術では、GEが世界最大級の会社である。GEは同社の脱塩事業の一部を買収するために$4.1B(41億ドル)以上費した。しかし、開始から 10年たっても、脱塩を低価格で維持可能なものにすることからは、ほど遠い。GEの発展は同社が所有する特許にかかっている。2009年にGEは、この分野の米国特許832件のうち、47件を発明した ― わずか5.6%、20分の1をわずかに上回るだけだ。もしGEが、〈保有していない〉特許 ― その数は多い ― のいくつかでも利用できた時、同社がどれほど進展するか想像してほしい。

 私が感銘というか衝撃を受けたのは、例としてあげられていたのが「金になりにくいが世界の為になること」つまり「先進国向けじゃない技術」だったことで、記事の内容もそちらに向けられていることに他なりません。

 発展途上国の問題を解決することは、ひいては先進国の課題を見直すことにもつながります。今すぐには金にならないけれど、将来の生活や環境を支える上では非常に意味深いことです。そのことを前提として、現在の起業家・知的ビジネスの状況を踏まえた次の筆者の言葉を読むと、何とも言えない気分になるのです。

世界を救うのと、Facebookアプリを一つ増やすのとどっちが重要?

 確かに、情報はインターネットのおかげで素早く流通するようになったし、ビジネスの判断にもスピードが最重要視されるようになってきて、世界は変わったような気がします。でも、起業家だとか研究者、政治の世界まで「結果」に対してスピードを求めているような現在の状況は、きっと健全じゃあないでしょう。今の世の中の経済の衰退は10年先、20年先を見据えた動きが失われつつあることと無関係じゃないのでは。

 たとえば、パテントフリーの世界で思う存分に特許技術を使って研究し、ものになった物だけを買い取るという手だってある訳ですよ。環境であるとか、新興国向けの技術を研究している企業や研究機関において、そのような動きが出てくる事を期待します。