以前、「増税、増税、また増税」というタイトルで記事を書いたのですが、コメント欄が長くなってきたので、もう一度記事を書くことにします。
ぴえとろ氏とのやりとりの中で、私自身いろいろと思うところもあったので、その辺のフォローも含めて私の税金に対する考え方をまとめて書き記しておきたいと思います。そんなわけで、考え方に対して以前と相違する点もあるかと思いますが、そのあたりはご容赦下さい。
まずは、最も基本的なスタンスについて。
・税金の公平性は課税に対してであって、それぞれの「生活レベル」「収入」を公平にする物ではない
・税金は、あくまで国、地方の収入源である。そしてその使い道は自治体に委ねられる
・公平性は崩れる場合がある
1番目。税金に対して公平性は重要です。しかし、原則としてあるのは「同じ収入レベルで公平な課税」「収入に応じた段階的比率の課税による収入格差の吸収」。前者はそこそこ納得できますが、後者に関しては累進課税、もしくは固定資産税などの資産にかかる税金になりますので、累進課税に関しては収入1千万を境に機能が鈍くなり、資産に関しては現金で運用されたときに機能しなくなると言うことは明白です。
先の所得税、固定資産税のように、受益者を名指しで来る税金を直接税と言います。簡単に言えば、直接税は万人に対して公平ではないと言うことです。しかしながら、資本主義を柱とする国家としては、これはさしておかしな事ではありません。
生活レベル、収入レベルを公平にするために、最大限に税制が機能するならば、それは社会主義国家とさして変わらないでしょう。努力した分だけの対価を税金で持って行かれるのなら、結果は同じですから。
それに対し、万人に公平なのが間接税です。これは明確に、「受益者が商品を買ったときに値段に含まれ、強制的に徴収される」税金です。受益者ではなく、物を売った販売者が納税の義務を負うため間接税と呼ばれます。
先の直接税のうち固定資産税もそうですが、私の持っている税金のかけ方の基本理念としては、
「税金は受益者が負担するもの」
というものがあります。自動車重量税を例に挙げると、「重い車ほど道路を良く傷ませる」から「道路の補修費を払うべきだ」となります。つまり、受益を得たものが、税金という形で益に還元するというものです。
しかしそれが怪しい例もあります。
2番目は明快ですね。前半は。しかし後半は問題です。
税金を大きく分けると、「目的税」と「それ以外」に分けることができます。
目的税とは、使用目的が明確に決められている税金です。例を挙げると、「地方道路税」「電源開発促進税」「水利地益税」「自動車取得税」「軽油引取税」「入猟税」そして「国民健康保険税」もそれに当たります。
それ以外とは、かみ砕いて言えば、「自由に使い道を選べる税金」です。これには「所得税」を始め、「固定資産税」「ガソリン税」「酒税」「消費税」などが含まれます。ですから、「消費税の半分は福祉目的に使われます」というのは、実は明確に法で決まっていることではなく、あくまでポーズであると考えることもできます。
と言うことは、例えばガソリン税を医療目的に使うこともできるし(実際にはほとんど道路建設に使われますけど)、固定資産税を国民宿舎の建設に使うこともできるのです。これは大きな問題です。
今回の増税を例に取ると、酒税として税金を取得しておいて、これを道路建設に使うこともできるし、国家公務員給与に当てることもできるわけです。本来なら、酒税は酒に関すること、こと医療関係に使われるのが適当かと思うのですが・・・そう言う訳にはいかないのが現状です。
つまり、これらの目的税以外の税金は”使途の不明瞭性”をはらんでいるのです。
さらに、先の公平性と絡んでですが、実は目的税以外は「根拠が法律だけ」で「何故税金をかける必要があるのか?」についてはまったく説明が為されていない場合が多いのです。つまり、税収をあげるためだけに訳も分からず税金を払わされている場合が多いと言うわけです。
このページで片鱗が感じされるかも知れません。
「たばこ税」「酒税」に関しても同様で、明確な根拠という物は存在しません。しかしながら、
このページ等によると
・生活必需品ではない
・適量以上の消費は飲む人の健康や社会一般に悪影響を与える
と言った点が考えられるそうです。この大義名分から「取りやすいところから取る」税金であるとよく言われているようです。そのほか、生活必需品でないという考え方の元、税金を賦課された物にはゴルフクラブ(ホールの方)利用税などがあります。
とは言え、生活必需品の個人個人の考え方はそれぞれであり、どこで線引きをするかも明確には規定されていません。また、酒税、たばこ税それぞれについても段階を設けてある根拠も明確ではありません。
線引きが明確でないと言うことは、自由に範囲を広げることができることと同意です。今時「生活必需品でない」とこじつけることができるものはいくらでもありますので、「若者の社会進出を困難にする」と大義名分をつけて、エロゲーに税金をかけたりできるわけです。
また、段階については、同じ酒なんだからまずもって分けることがおかしい。そして、分けてあるのにそれを有効利用しようとすると、理由を明確にしないまま税率を上げる事がある。これは何ともおかしな話です。
これでは受益者がどうこう言うよりもまず、「何故税金をかけるのか」という問題があり、「同じようにお金を使っているのに、税金のかかりかたが全く違う」という不公平性を生みます。
さて、ではここらでまとめていきましょう。
ここまでのポイントは、
・税金には使途が不明瞭な部分が多々ある
・税金にはその掛かり方の根拠が無いものも多数ある
です。先に、「税金は受益者が負担する」と言いました。私はこれが全く自然な形であると考えますが、受益者が負担するまではいいですが、その還元の仕方が全くなっていないと考えています。
ここであげた2つのポイントは実は表裏一体です。
根拠が無いから、目的を不明瞭にできると考えればわかりやすいでしょう。たばこ税を受益者から取っていっても、大義名分のとおり健康被害や周囲へのケアのためにつかうならいいのですが、それを道路をはじめとする公共事業につぎ込んでいくならば、受益の対価としては実に不適当です。ですが、あくまでそれは大義名分であり、法律上は根拠をうたっていないので、何に使おうが問題ありません。
これは誠に都合のいい解釈ですが、現在の税制ではこれがまかり通っています。
この使い道というのが問題で、先の橋梁談合問題しかり、鈴木宗男しかり、こと公共事業に関しては事業の正当性に疑問符が浮かびます。また、一般会計だけでは見えてきませんが、特殊法人への補助金に関しても実に4兆円強の支出があります。
日本には現在700兆円の負債がありますが、それだけの負債を負っているという自覚を持った経営を行っているとはとても考えられません。例えば、
ここに公共工事への投資額の推移のデータがありますが、ピーク時の6割だとか言っていますが、アレはバブル期です。冷静な見方をすれば、緩やかに下降程度に収まっています。
国債発行残高(つまり借金)は加速度的に増え続け、しかも恐ろしいことに、
新規発行額はむしろ上がっているという状況です。
つまり、現在の税金の使途をどうにかしようとは極力考えず、増税、費用負担増によって乗り切ろうと考える国の政策は私に取って理解し難く、税金の「資源の再配布」という公平性という面からも著しく反することだと考えます。
歳出を減らすことをせず、安易に税収を増やす事はとうてい許容できることではありません。
確かに、公共事業も必要でしょう。(高速作る金があるならもっと有効な道路整備も検討しなさいとか云々はあるが)しかし、現在国がやらなくてはいけないことは債権の償還であり、新たに借金をすることではない。景気の回復のための方策であり、特殊法人に金を落とし、天下り役人を肥えさせることではない。
借金を償還するためにはまず、新たな借金をしないことだし、そのためには現在行われている公共工事やその他の事業を見直す事も重要でしょう。
景気を回復させるためには、末端の消費を促進するために減税を行うことも有効であるはずです。
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今回の酒税の増税によって税収は結果的に減る可能性が高いでしょう。価格の上昇によって、消費者の買い控えが増えることが予想されます。ですが、発泡酒、ビールから第3のビールへと流れ、その分の税収が落ち込むことを考えるならば、下がり幅は小幅に抑えることができるはずです。
この改正案の主な目的は「ビール類の税制格差の均衡化」が筆頭とされますが、税収減に歯止めをかけることが一番の目的であることは明確です。
私は、酒税が目的税であった場合ならば、使用用途が明確であるため何も問題は無いと考えます。また、酒税自体に関しても、大義名分が共通認識として広まっている以上は正当性があると考えます。
しかし、酒税は目的税ではありません。ならば、税金という形で還元をしなくても、一般消費という形で市場経済への還元をした方がいいとも考えられませんか?そう言う意味で、酒税が減収になっても私は一向にかまわないと考えます。
ちなみに、国民健康保険は目的税ですので、医療負担用途に使われます。酒税が医者にかかったときの医療負担に直接使われることはありません。
(正確に言うと、難病治療や乳幼児医療など、特殊なケースにおいて、一般税の一部として使われることはあります。ガンは不可)
様々な方策がある中で、「企業努力を踏みにじり、末端消費を抑制させる」という点で、先の酒税は容認できません。さらに言えば、これは明らかに「特定の企業、業種」をねらい打ちにしたものであり、「その他酒類の増税が無い」ことを考えると「明らかに公平性を欠く」と思われますがどうでしょうか。
ちなみに清酒は政治家の支持基盤に酒蔵が多くあるため、ワインはブドウ農家と外圧という政治的問題で回避・・・何ですかそれ?
こと税制は制度自体が複雑で、且つ影響範囲が多岐にわたるため、個人個人異なる意見を持つのは自然だと思います。と言うよりも、これが正解というかけ方なんて、これからずっと出てこないでしょうし、何か改正される度にごたごたが起こるのでしょうな。
・・・まとめるとは言ったが、長くなったのとぶっつけで書いているのでかなり読みにくい文章になってしまいました。趣旨が伝わりづらいかも知れませんが、ちょっと疲れました・・・