Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

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IntelがMcAfeeを買収したのは組み込みの為だろう

2010-08-20 23:59:59 | Thinkings

 IntelがMcAfeeを買収するために最終段階に入りました。すでに協議は済んでおり、後は手続きのみと言う状態に来ています。

Intel、セキュリティ大手McAfeeを76億8000万ドルで買収 ITmedia

 米Intelは8月19日(現地時間)、セキュリティ大手の米McAfeeを買収することで合意に達したと発表した。買収は1株当たり48ドルの現金で行われ、総額は76億8000万ドルに上る。Intelにとって過去最大規模の買収となる。取引は両社取締役会の承認を受けており、株主の同意や規制当局の承認などの条件が整い次第完了する。

 この買収劇がもたらす影響について、ネットニュースには様々な分析・推測記事が載りましたが、概ね共通しているのは組み込み分野の強化に関する内容です。例えば、Intelが最近買収したケーブルモデム事業にセキュリティを組み込むとか、組み込み向けのプラットフォームにチップセットレベルでセキュリティー対策を施すとか・・・様々な考察がされていますが、私はMcAfee買収でハードウェアレベルでのセキュリティを期待できるというのは全くナンセンスだと思うのです。セキュリティ分野は常に流動的であり、ソフトウェアアップデートでの迅速な対応が不可欠でしょう。

 となると、考えられるのが「インテルの組み込みCPUのみに対応する組み込み向けセキュリティスイート」が一番ありそうな展開では無いでしょうか?

 Intelの様な企業が、本業に関連する企業買収を行う場合、真っ先に考えなければいけないのがシナジー効果による本業の売り上げ増を見込めるかということ。これについてはIntel自身でも、

IntelのMcAfee買収に一部アナリストは疑念も ITmedia

 「われわれがマイクロプロセッサを販売するあらゆる分野で、一緒にセキュリティソフトを売るチャンスがある」とオッテリーニ氏。「一緒に売る機会だけではなく、当社製品のアーキテクチャにセキュリティソフトを深く統合する機会でもある」

という声明を出していますが、本業であるプロセッサアーキテクチャ及びセキュリティスイート両面での囲い込みについて、統合は悪い選択肢ではありません。

 モバイル、個人向けサーバーを含めた組み込み分野において、これまでは「標的になりにくい」という理由のみで、PCに比べて圧倒的にセキュリティが軽視されてきている現実があります。例えばAppleの各種製品およびAndroidの現状を見れば火を見るよりも明らかでしょう。

 すでにAndroidでは兆候が出ていますが、そのような状況はいずれ破綻すると考えられます。となると、セキュリティをセールスポイントにした組み込み用アーキテクチャが出て来ることは容易に想像できます。

 ここで一つ思い出していただきたいのは、マイクロソフトがARMのライセンスを取得したと言うニュースです。マイクロソフトは組み込み向けのOSも数多く手がけていますし、何よりWindows Phone 7という大物が控えています。そして、忘れてはいけないのが、マイクロソフトが「Microsoft Security Essentials」を初めとするセキュリティ製品を数多く有する企業だということ。自社性のARMプロセッサで最大限の効果を発揮するセキュリティソフトなんていう構想も十分可能な力を有しているわけです。・・・Windows Phone 7などのOSそのものに組み込んでしまうと思いますけど。

 それと同じように、Intelはネットブック用アーキテクチャとしてMeeGoを開発していますが、それと自社製セキュリティスイートを組み合わせることでセキュアなインターネットコンパニオンを作るとか、自社でAndroidをカスタマイズしてスマートフォンやモデム・スイッチに載せるという展開が考えられます。

 いずれにしても、Intelの動きいかんによって、組み込み向けのセキュリティスイートについての大きな転換が起きるかも知れませんね。