Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

PCはニッチに落ちるのか 携帯中心という考え方の危険性

2007-08-12 19:08:39 | Thinkings
 現時点で、ケータイの普及台数は、国内で一億台ほどであるといわれています。要するに、「当たり前の機械」になったと言えます。言ってみればテレビや洗濯機と同じスタンスで語られるものになったのです。
 対して、同じ情報機器であるPCは、普及してきたとは言えケータイと同じ土俵で語られることはまずありません。まだまだ異質な、ちょっと変わった機械なのです。

 単純に、普及率や使用率を考えても、今現在PCはケータイにかないません。ですが・・・それに関連してこういう話が出ると、どうしても違和感が出るのですよ、私は。

ネット利用はケータイが中心になる--モバイルに賭ける起業家たちの未来予想 CNET

 jig.jpの福野氏は、携帯電話ユーザーの方が一般的で、PCユーザーこそがニッチとの持論を明かした。

jig.jp代表取締役社長CEOの福野泰介氏。携帯電話向けフルブラウザ「jigブラウザ」の技術はYahoo!モバイルなどに採用されている 「電車の中でPCを開く人をほとんど見かけない。しかし、携帯電話は1億人が加入しており、ほとんどの人が普通に持っている。PCに比べて携帯電話の方が一般的だとみると、考えるべきことはいろいろあって当然という気がしています」


 私はケータイをW51Hに換えてから、PCサイトビューワー、いわゆるフルブラウザを使う機会が格段にあがりました。暇つぶしにGoogleニュースを眺める日々です。以前の携帯に比べ、ワイドVGAになってから、格段に通常のページが見やすくなったのがその理由。確かに文字はかなり小さいですけれどね。

 しかしながら、ケータイでWebを見ようとすると、まだまだ制約が多すぎる事に改めて思い知らされます。見えないページが多かったり、コンテンツが動かなかったり・・・コピペやカスタマイズの問題もありますね。

 ・・・要するに、携帯電話でPC的なネットの使い方をするのは無理がある、ということが言いたいわけです。

 でも、ケータイでのネット利用は10代を中心に増加が続いており、当の私もモバイルサービスは割と利用しています。
 で、先のPCがニッチになる・・・という話に対して抱いた違和感なんですけれど、つまりPCとケータイでのネット利用というのは全く別物であって、同列に語れる物ではないということです。

 具体的に言えば、「PCは情報中心」のツールであって、携帯は「コンテンツ中心」のツールであるといえます。
 PCは多くの情報を効率的に集める事に適しており、また、このブログのように情報を発信する事にも長けています。また、写真やFlashなどの文字以外の情報も扱いやすい事が上げられます。
 そして、それらの豊富な情報にアクセスするため検索エンジンが発達してきたという土壌があるわけです。
 対してケータイは、黎明期から一貫してコンテンツありきです。「検索エンジン」であるGoogleやYahoo!が最近になってようやく進出してきたことからもわかるように、トップページからのリンクと、コンテンツホルダーがいかに魅力的なサイトを構築するかにかかっていたのです。
 現に、モバゲータウンもEZ GREEもそうですけれど、そのサイト内で完結しています。そういう意味では、コンシューマーゲームに近い、「ソフトウェアを選ぶ」感覚でネットと向き合っていると考えられます。課金ビジネスが多いのも原因かもしれませんけれどね。
 そして、携帯の最大の特徴は、日常的に接する物であるため、特に10代の利用において「検索エンジンをリアルに追い出してしまった」点であると言えます。口コミでコンテンツが選択され、メールや赤外線でそのコンテンツが広まっていくわけです。媒介にネットは挟まれません。「とりあえずGoogle」なPCからすると全く異質です。

 これらの観点から見ると、ケータイは確かにネット接続の手段としては第一勢力になっていくのかもしれませんが、コンテンツはよりニッチな方向に進化せざるを得ないとしか思えません。相手にするコミュニティーが極小なのですから、提供するコンテンツもそれに併せたコミュニケーションツールであらざるを得ないということです。
 対してPCではそのようなコンテンツマーケティング・・・というよりも手軽なコミュニケーションツールははやらないでしょうね。今と同じ路線が続いていくことでしょう。

 以前は、「ケータイがネットの主役になんか・・!」と思っていましたけれど、今はここまで書いてきたとおり、「全く路線が違うんだからそんな話は不毛」という考えです。強みがあるからPCは無くならない・・・とか、販売台数が多いからケータイが強いとか、キーボードとテンキーとかそんな次元の話では無いんでしょーねー。

 まあ、今後も「わかりやすい例」としてモバイル屋さんの話は出てくるとは思いますけれど・・・今のQVGA縦画面Flashナシの携帯ではなく、ノートPC並みの見やすさと表現力を持った携帯が出てくるまでは、そういう議論は時期尚早だと思いますよ、いやホントに。