Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

アメリカの携帯技術、歴史的な「停滞」命令

2007-08-07 22:36:16 | Technology
 日本の携帯電話を見てみると、DocomoはFOMA、auはWIN、そしてSoftBankは直球のWCDMAという通信技術を使っている物がほとんどです。

 これらの通信方式は、以前のCDMA方式から一歩進んだ「3rd Generation(第三世代)」通信方式、略して「3G」というやつです。日本においては、Docomoがi-modeや着うたなどで攻勢をかけたため、高速移動体通信の需要が高まったという背景に押され、破竹の勢いで市場を席巻していきました。
 これは、iPhoneですら2Gであるアメリカ市場とは雲泥の差の普及速度です。

 4Gの普及がまだまだ先になりそうな情勢の中、3Gの携帯電話を普及させることは、通信網の点からも、またサービスの需要を探る上でも、携帯インフラ全体の底上げにつながる重要な事項です・・・が。

 現在、3G通信の中核を担う企業に米クアルコムが上げられます。特許等の関係で、事実上、この企業のチップなしでは3G携帯は生産できません。この企業の作っているチップが「前面輸入禁止」なんて事になってしまうと、要するに、「3G携帯電話が販売できなくなってしまう」のです。
 そして、その事態がお膝元のアメリカで起こってしまいました。

QUALCOMMチップ搭載携帯端末の輸入禁止、ブッシュ政権が是認 ITmedia

 この是正措置の決定を受けて、米国の携帯各社が異議を唱えていたが、今回の政府の決定はそうした反論を却下し、Broadcomに勝利をもたらす結果となった。この決定により、今後一部の通信キャリアは最新の携帯電話技術を備えた携帯端末を投入できないことになる。ただし、既存の機種は今後も輸入できる。この輸入禁止命令は8月7日付で施行される。

 アメリカの市場から、携帯の最新機種が消える・・・何というか本当に冗談みたいな決定です。
 原告のBroadcom社と提携した企業の製品は購入できるようですけれど、現在一社だけということで、まだまだ事態は流動的。

 こうした決定で、アメリカの携帯電話市場は経済的な面でも時間的な面でも大きな打撃を被ると思いますけれど、これも独占であるが故の悲劇というやつでしょうかね。
 売り上げに直接的な影響を受ける携帯キャリア各社は、

「公共安全のために必要となる通信機器まで奪うことになり、携帯電話業界全体にマイナスの影響を及ぼしかねない」

という反対声明を出しています。

 正直なところ、輸入禁止命令は行き過ぎではないかと思います。公共安全にも関連しますけれど、アメリカ全体で携帯電話の入手性が一気に下がる事になりますし、旧世代技術の余命延長にもつながりかねませんから、マイナス影響は計り知れないでしょう。

 技術的にも市場的にも最先端を行くアメリカですが・・・訴訟の最先端は、どうやら少し歪になってきているようですね。