Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

音楽と「出会う」新しい方法

2006-08-03 23:38:27 | Weblog
 私は割と音楽を聴きます。デスクトップのiTunesに入っている楽曲は3,000を超えていて、ジャンルも様々。ポップスにパンク、メロコア、ジャズピアノにボサノヴァ、クラシック、映画のサントラなど、あまり選り好みとかは無く、シャッフル若しくはその時の気分で適当に聞くことが多いです。

 しかしながら、私が新しく音楽を仕入れる時に得る情報は、ずいぶんと限られています。
 まずラジオで流れていた曲。たまたま入った店の有線で聞いた曲。テレビ番組で使われたBGM。友達に勧められたアーティスト。アマゾンやiTunesMusicStoreでのランキング。好きなアーティストの新譜。そして、レコードショップでのジャケ買い・・・これだけ聞くと多いように思えますけれど、それらがすべて購入に至るかと言いますと、そうでもありません。

 ラジオや有線、テレビは、そもそも曲名がわからないか、聞いても覚えていないことが多いですし、アマゾンやiTunes、ジャケ買いは全く知らないアーティストのCDを買うのには抵抗があります。
 となると、結局は既存のジャンルやすでに知っているアーティストとなってしまい、全く新しい出会いとなると、なかなか機会が限られてしまいます。

 AmazonやiTunesでも、曲を探す場合、まず曲名を知っているかアーティストを知っていることが前提となることが多いですので、全く知らないジャンル、アーティストを開拓するには自ずと限界が出てくるところです。

 このように感じている人は案外多いのかもしれません。既存のサービスでは難しい、新しい音楽と「出会う」場について、新たな提案を掲げたサービスが紹介されていました。
音楽と人の“出会い系” 「monstar.fm」

 「monstar.fm」を運営するベンチャー企業、モンスター・ラボ(東京・小金井市)は「色」と「キーワード」を媒介に、インディーズの楽曲と人とのマッチングを試みる。楽曲のダウンロード販売は、MP3形式でDRMフリー。価格はリスナーが決める。「多様な音楽を多様な人に届け、自由に聞いてほしい」――サービスからそんな思いがにじむ。
「ニッチな市場でも、必ず自分の音楽を求める人はいる」
「私が求める音楽はメジャーなものとは少しずれている」
 この二つの符号がぴったり合わさっていたときに、出会えないのは双方にとって不幸なことです。
 しかし、現在の「マスコミ主導」である音楽との出会いでは、悲しいかな、よほどの幸運が味方しない限り、両者が出会うことは無いでしょう。インディーズは元々露出が少ないし、CDでの流通量もかぎられているからです。

 しかし、monstar.fmでの「色」と「キーワード」を頼りに探していく出会いの場ならば、少なくともアーティストの知名度やプロモーションの金額に左右されずに、純粋に音楽の中身で、必要な人に必要な音楽を届けられるのではないか・・・そんな予感がするサービスです。

 これらのキーワードや色の登録は、リスナーが実際に楽曲を試聴して登録するもので、このあたりはAmazonのコメントとにている部分もあるけれど、それを検索対象にしてしまったところは実にWeb的ではないでしょうか。
 また、色を登録できるというのも、私はものすごく魅力的なことだと思います。
 音楽を言葉で表現しようとすると、どうしても抽象的にならざるを得ない。つまり難しいんです。でも、同じ抽象的な表現でも、”色”なら簡潔かつわかりやすい。何より、登録するのも簡単です。
 色は、確かに他人とのイメージの相違を招きやすいかもしれませんが、微妙な感覚を言葉で伝えきれない時、また感覚をより直感的に共有したいときに便利な表現です。キーワードと組み合わせて使うことで、検索の大きな武器になるのでは、と将来の可能性を感じさせるものだと思います。

 monstar.fmの取り組みは、「いかにして欲しい人に音楽を届けるか」を、需要と供給の双方から真剣に考えた、という努力がにじみ出ている用に思います。
 今後、音楽がどのようにリスナーに供給されていくか、オンライン販売が拡大の一途をたどっている昨今、メジャーも含めて未来がどうなっていくか予測が難しい状況です。
 そんななかmonstar.fmの取り組みが広がっていくにしろ、沈んでしまうにしろ、新たな音楽販売の試金石の一つとして、次の世代の糧になることを祈っています。

これは.Macからの警鐘ではないのか

2006-08-03 01:05:02 | Weblog
 AppleはOS9から移行する際、それまでのカーネルをばっさり捨て、UNIXベースのOS Xを採用しました。そして、OS Xと「Macの再生」のアピールのため、OS9までのクラシック環境ではなく、OS Xネイティブで動く新しいソフトウェア群を構築しました。
 そのソフトウェア群は、個人ユースに必要十分な機能+αを備え、ネットワーク時代の新たなPCの使い方の提案、OS Xへの移行の推進、そして新たな顧客の取り込みを狙うため、革新的な機能と、スタイリッシュなインターフェイス、そしてリーズナブルな価格を高い次元で融合させるという命題を持っていました。
 そのために用意されたソリューションが、iLifeと.Macです。

 iLifeは単体で使っても大変有用なソフトウェア群でしたが、.Macとの組み合わせは実に使い勝手がよく、iLifeのデータを.Macで提供されるiDriveオンラインストレージに自動でバックアップを取るなど、ネットワークとのシームレスな連携を実現したものでした。

 私たちWindowsユーザーも、ローカルのデータと、オンライン上のストアを同じ感覚で扱えるiTunes等のアプリケーションによって、「ローカルとオンラインとのシームレスなインターフェイス」が如何に便利であるか体験しています。
 iLifeと.Macは、正に次世代のPCの使い方を体験できる環境の一つといえるでしょう。

 しかし、この便利さが如何に危うい物であるか、Appleとその顧客は身をもって実感していることでしょう。

サービス停止に見舞われた「.Mac」ユーザー、アップルの新スローガンに怒りあらわ CNET Japan

 ここ4日間にわたり、.Macのパブリッシング機能「iWeb」とこれに関連するファイル共有機能「iDisk」が停止し、ユーザーに影響を及ぼしている。Appleのサイトに設置された掲示板に寄せられたユーザーの意見を見ると、サービス停止が長期化していることばかりでなく、.Macテクニカルサポートチームの対応の遅れにも不満が噴出しているようだ。

 オンラインストレージであるiDiskがビジネスにおいてもパーソナルにおいても最も有効な機能であることは疑う余地がなく、今回の不具合は致命的といえます。さらにサポート及び復旧の遅延が、ユーザーの怒りに拍車をかけているようです。

 ちなみに.Macの不具合について、アップルの日本語及び英語ページでは報告、および言及はありませんでした。不具合報告の最終日付は7月25日となっていましたので、現在もまだ調査中であるようですね。

 今回の件は、シェアにして僅か5%の世界での出来事です。しかしながら、今後のPCにおけるネットワーク依存度はますます高くなるでしょう。また、次世代コンシューマーゲームプラットフォーム、PS3、XBOX360、Wiiはいずれもネットワーク機能を持っており、 決してMacだけで終わる話ではないのです。
 今後、ネットワークを「前提」とするサービスやアプリケーションはどんどん増えてくるでしょう。しかし、今までの「売ったら終わり」という販売形態ではなく、「売って管理」という形になったときの難しさを、今回の.Macは、オンラインゲーム以外での大規模な前例の一つとして、今後のサービスに向かって警鐘を鳴らしているのです。是非アップル側には今回の事件の詳細を明らかにし、今後の参考としていただきたいところです。

 ところで、怒りを買ったAppleの新しいスローガンとは何だったかと言いますと、

「It just works(とにかく使える)」

ですって。皮肉なことに、この5日間で、Apple自らが”だいなし”にしてしまいましたね。