Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

惑星が増える・・・って言われても

2006-08-17 19:46:38 | Weblog
 子供の頃に覚えた呪文の様な言葉。「すいきんちかもくどてんかいめい」が、もう過去のものになってしまうかもしれません。

 「水金地火木土天海冥」と言えば、太陽系の9つの惑星を、惑星の最初の一文字をとって、太陽に近い方から並べたものです。長らく、具体的には冥王星が発見された1930年から76年間、この呪文は覆されることはありませんでした。

 しかしながら、この「惑星は9つ」という”常識”が揺らいでいます。
 もともと冥王星は、他の惑星に比べてかなり特殊な惑星です。公転軌道が他の惑星の軌道、いわゆる黄道面から傾いており、その形も楕円を描いています。また、大きさも小さく、月よりも小さいのです。
 そして、近年になり、観測技術が上がったことによって、冥王星近傍に新たな小惑星がたくさん発見される事になりました。
 これらはエッジワース・カイパーベルト天体と呼ばれ、昨年には2003 UB313という冥王星よりも大きい天体が見つかったことが大きな話題となりました。
 これらから、冥王星はエッジワース・カイパーベルト天体の一つにすぎないと言う説が決定的となり、かつ冥王星と同じか、それ以上の大きさの天体が存在するという事実が、惑星の定義そのものを見直すきっかけとなったのです。

 現在その定義、数について会議が行われており、その途中経過が報告されました。

「惑星」の定義の原案、公開へ アストロアーツ

8月14日からチェコの首都プラハで行われている国際天文学連合総会で「惑星」の定義の原案が提示され、内容が公表されました。原案では新たに3つの惑星が追加され、太陽系の惑星は合計12個となっています。最終案は24日に再度提示され、同日中に決議されます。

 あくまで原案ですので、今後覆される可能性はありますが、現時点で惑星に”昇格”する天体は3つ。セレス、カロン、2003 UB313です。
 セレスは火星と土星の間にある小惑星帯での最大の天体。カロンは冥王星の衛星。2003 UB313は、昨年発見された冥王星より大きいエッジワース・カイパーベルト天体です。

 では、なぜこれらの天体が、惑星に昇格すると言うのでしょうか。公表された定義の原案は次のようなものです。

(1)惑星とは、(a)十分な質量を持つために自己重力が固体としての力よりも勝る結果、重力平衡(ほとんど球状)の形を持ち、(b)恒星の周りを回る天体で、恒星でも、また衛星でもないものとする。

(2)黄道面上で、ほぼ円軌道を持つ、1900年以前に発見された8つのClassical Planetsと、それ以外の太陽系の天体を区別する。後者は、すべて水星より小さい。また、セレスは上記(1)の定義から惑星であるが、歴史的理由により、他のClassical Planetsと区別するため、Dwarf Planetと呼ぶことを推奨する。

(3)冥王星や、最近発見された1つまたは複数のトランス・ネプチュニアン天体は、上記(1)の定義から、惑星である。Classical Planetsと対比して、これらは典型的に大きく傾いた軌道傾斜と歪んだ楕円軌道を持ち、軌道周期は200年を超えている。われわれは、冥王星が典型例となるこれらの天体群を、新しいカテゴリーとして、Plutonsと呼ぶ。

(4)太陽を回る他のすべての天体は、まとめてSmall Solar System Bodiesと呼ぶこととする。


 (1)の(a)を簡単に要約すれば、「球状であること」。地球の1万分の1以下の質量では、重力が弱すぎて球状にはなれません。また、球状でも、月は地球の衛星ですから、(b)によって惑星に昇格することはありません。
 セレス、2003 UB313は、この(1)に全て合致するため、惑星に昇格となったのです。

 では、冥王星の衛星であるカロンはなぜ惑星に昇格できたのでしょうか?

 実は、カロンは冥王星の衛星ではなく、カロンと冥王星はお互いに相手の周りを回る連星なのです。
 冥王星とカロンの直径比は実に2:1、質量比は7:1と主星と衛星にしてはずいぶんと大きさがちかく、カロンは冥王星の中に公転重心を持つことができません。従って、主星と衛星の関係ではなく、二重惑星であるという結論に至ったのです。

 また、(2)においては冥王星をのぞいた現行の8惑星をClassical Planets・・・古典惑星とでも訳すのですかね・・・とし、これから新たに昇格するであろう新惑星と、明確に区別するようにも提案しています。セレスについてはDwarf Planet、こびと惑星という呼び方を提案しています。今後、小惑星帯からの昇格については、この名称を使うという意図があるのでしょう。

 (3)においては、トランス・ネプチュニアン、つまり海王星より外にある、冥王星を含むエッジワース・カイパーベルト天体の定義について。Classical Palnetsとの大きな差異のあるこれらの天体が惑星に昇格した場合、Plutonsと呼ぶ、としています。
 Plutons、訳すと冥王星群天体とでもなるのでしょうか。ややこしいのは、エッジワース・カイパーベルト天体のカテゴリのなかで、冥王星近傍の軌道に存在する天体を表す「Plutino=冥王星族」ということばがあること。
 冥王星族が小惑星を含む言葉であるのに対し、Plutonsは惑星のみを指す言葉になりそうです。

 ここまで長々と紹介してきましたけれど・・・やっぱりセレスみたいな小さい星まで惑星にするのはどうかなあと思いますね。改めて。
 新たなカテゴリまで作って区別するなら、別に今までどおり小惑星でも良いような気がしますけれどね。

 とにかく、24日に最終稿が提出されるまでまだ時間があります。今回の案のような、「何でも惑星!」という分け方じゃなく、もっと「惑星とは特別なもの」と思えるように修正されると良いなあと、個人的には思うのですけどね。