Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

AOLが支払うツケ

2006-08-04 19:02:20 | PC
 America On Lineというと、あまりピンとこないかもしれません。しかし、AOLならほとんどのPCを使っている人が、デスクトップで見たことがあったり、タイムワーナーとの絡みで聞いたことがあるのではないでしょうか。

 そのAOLの業績が低下の一途をたどっています。原因としてあげられるのはブロードバンドへの対応の遅れです。
 日本では、ダイヤルアップの使用者が、ADSLやCATV、光の影響で、すっかり隅に追いやられてしまった感がありますが、アメリカではまだまだメインストリームの一角を形成しているようです。
 とはいえ、あくまで「一角」。アメリカにおいても、インターネット回線のブロードバンドへのシフトが進んでおり、ダイヤルアップに注力するあまりに、ブロードバンドへの対応が後手に回ってしまったAOLは、ユーザーの大幅な減少という窮地に立たされています。

 AOLは倒れたままなのか。
 状況を打開するためにAOLが採った戦略は、広告収入へのシフトと無料サービスの拡充という”お決まり”のものでした。

AOL、電子メールやIMサービスを無償で提供へ CNET Japan

 AOLを傘下に持つTime Warnerは米国時間8月2日、オンライン広告の売り上げを伸ばすために、高速インターネット利用者に電子メールなどの同社ウェブサービスを無料で提供する予定であることを発表した。

-中略-

 AOLの転換は9月初めに完了する見込みである。無料で提供されるサービスには電子メール、インスタントメッセージング、無制限の着信通話が可能でセキュリティ機能を備えた市内電話サービスが含まれる。AOLは、ダイヤルアップインターネット接続を提供し続けるが、同サービスを積極的に販売し続けるつもりはないと述べている。


 Yahoo!やGoogleを追いかける形での最後初として、AOLに課せられたのはそれらを超える無料サービスでした。
 結果としてAOLは、続けざまに次の一手も打つことになります。

米AOL、5Gバイトの無料オンラインストレージを提供 ITmedia News

 米AOLは8月3日、5Gバイトのオンラインストレージを無償提供すると発表した。9月初めにスタートの予定。

 Xdrive Serviceの技術を採用したもので、Webに接続できるPC、PDAからアクセスでき、写真、ドキュメント、音楽、ビデオなどさまざまなファイルの保存に利用できる。

 自動バックアップ、ファイルおよびフォルダのパーミッション設定、メール添付書類の自動アップロードも可能。アップロード、ダウンロードのいずれにも料金はかからない。


 先のメールやIMなどと、XDriveを併せることで、ほぼ.Macと同じようなサービスを無料で提供することになります。
  ユーザーにしてみると、5Gというほぼ無制限に使え、写真等の制限の無いオンラインストレージは大変魅力的です。今までGmailやYahoo!メールをストレージ代わりに使っていたユーザーがずいぶん流れるかもしれません。

 このAOLの新サービスは、同様のISP及びポータルサイト競合他社にとっても脅威ですが、AOL自身に対しても、多大な負荷を課すことになることは明白です。
 最大のセールスポイントであるXDriveは、月額10ドル弱で提供していたサービスをすべて広告収入で補うことになり、さらに無料化によってユーザーが爆発的に増える事が予想されるからです。

 以前、Blog市場が拡大し続けているとき、Blogの負荷が思った以上にサーバーに負担をかけ、さらに無料であるために、ふくらみ続ける管理費の補填が難しいという記事を書いたことがあります。
 今回のAOLのサービスは、一度にやりとりされる情報量がBlogの比ではなく、また管理するユーザースペースが膨大なことから、サーバーの規模も肥大化せざるを得ません。ある程度広告収入のめどが付くまでは、大変苦しい運営が予想されます。

 これ以上の顧客離れを防ぐため、ポータルとしての失地回復のため、AOLが支払わなければならないツケは、消費者にとっては魅力的でも、AOLにはずいぶんと大きなものになりそうです。しかしながら、これを乗り越えることができなければ、AOLは過去のISP、ポータルとして、表舞台から姿を消していくことになるでしょう。