CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

氷塊 大久保利通

2011-11-11 20:27:04 | 読書感想文とか読み物レビウー
氷塊 大久保利通  作:秋山香乃

面白かった
いま、まさに読み終わって書いております次第
前々から気になっていたというか、にわか知識で
幕末をあれこれさらいだしてから十年、
ずっと佐幕のほうばかりを歩いておりましたが、
一度、薩摩の、それも西郷ではないところを見たい
そう思って、何年か前の篤姫の記憶を頼りに
いろいろ保管しておりましたが
今回、この小説に出会って、一気に補完できた
そんな満足感があるのでした
あってるかどうかは知らないが、
そうか、これが大久保利通という人かという
なんか、よい読後感が心地よいのであります

内容は、大久保の伝記といった内容であります
いかにして藩政にかかわり、そして栄達や挫折をしたか
どのような想いであったかといったことを
小説として読めるのでありました
当然、主役で苦悩を描いているものの、大久保からの目線のため、
様々な角度からみると、贔屓目に書きすぎていると
とられるんでなかろうかと思わなくもないのですが、
この本でステキだと思われたのが、
完全に薩摩をよしとしていて、龍馬はほとんど出てこないうえに
土佐という藩を外から描いた、山内公がどういう人であったか
それがなかなか、薩摩の敵として描かれているのが
個人的にとても新鮮でありました

最近は、幕末に薩摩悪しという感じで、
まぁ、いろいろと描かれていることが多いように感じておりましたが
薩摩を思いっきりひいきにするというのも
読んでみると面白いなぁと感心しきり、
これであとは長州あたりのをなんか読んだら
だいたい、幕末のそれこれ、面白いところが見えたかもなぁと
思ったり感じたりしてしまうのであります

また、この本のよかったところは
倒幕とか、そのあたりの戦争ではなく、政争部分を
ひたすらそれこれと書きなぐっていて、
政敵としての慶喜だとか、江藤だとか、桂だとかが
見事な感じでありまして大変面白かった
これで作者が女性というのに、また驚かされたのでありますが
別段、戦を行わなくても、というと間違いでありますが、
こういう舌戦であったり、裏工作であったりといった
政治闘争による、戦争状態というのは
読んでいて面白いなぁと感服したのであります

また、必要以上に重苦しくないというのもよくて
内容とテーマからすると相当にヘビーなんですが、
読んでみるとわかりやすく簡潔で、あしざまではない、
それによって、読んでいて疲れないというのがいいなぁと
ほとほと感心であります
ぜんぜん知らない作者さんでありましたが、
どうやらいくつも幕末ものを書いておられるとのことで
もう数冊読んでみたい
そんなふうに思わされて、なんとも
面白い体験をできた、そんな優れた小説であったと
メモっておくのでありますとさ

志が高いというのは、こうやって描くんだなぁと
幕末の一番面白いところが描かれていると
思ったり考えたりするのであります
さりげなくもないですが、今読むと、あらゆる政治批判に見えることが
当時もいっぱい起こっていたし、そうではない人もいたとか
そんなことも考えさせられますが
なんともかんとも、面白いと思ったのでありました