CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

剣聖~乱世に生きた五人の兵法者~

2006-11-29 08:45:20 | 読書感想文とか読み物レビウー
久しぶりに小説を読みました
かたわらで、じっくり戦争論を読んでおりますが
さっぱり進まないので、口直しというわけでもないですが
すらり、読んでみたのが時代小説の
オムニバス版、剣聖であります

池波正太郎、津本陽、直木三十五、五味康祐、網淵謙錠
の五人の作家さんの時代短編小説を集めた
ステキなものでありました
題材は、上泉伊勢守、塚原卜伝、宮本武蔵、佐々木小次郎、柳生石舟斎と
これまたビックな剣豪ばかりが揃っていて
もうあれだ、正直これは男子がとりあえず
読んでおくべき娯楽小説でありました

というわけで、事細かにレビウするのも無粋なので
ざらっと表面だけを撫でさせていただきますと

作家さんがそれぞれ違うというのがポイントというか
CDみたいなオムニバス版というのがあるとは
夢にも思わなかったのでありますが
それぞれの作家さんが、それぞれ確立したスタイルで語る
剣豪が五人語られているのも確かでありましたが
小説家が五人競演しているというところも
興味深い一冊でありました

特に池波正太郎の「上泉伊勢守」の話が面白くて
まぁ、収録されてるなかで一番長いのだから
当たり前といえば当たり前なのでありますが
なんともいえぬ、時代小説の息吹というか
言の葉と空気感の妙がステキ
剣客商売とか、ああいったものを
しっかりと読んだことがないので表しがたいのですが
いわゆる時代小説という感じがとてもステキ
会話の文が多い、言うほど多くはないが、ともかく
会話中心で物語はまわりつつ
殺陣のシーンは、やはり一瞬にかけている
これは他の作家も全部そうでしたが、そこまでの
緊迫感がステキでありました
子供とか出生の謎をいくばくかはらませて
剣豪の祖であります、上泉を描いていくのはかなりステキで
私もしっかりした知識ありませんでしたが
これで、上泉最強説を支持できるというものであります
そんな出来でありました

かわって、塚原卜伝のお話でありますが
こちらは秘太刀というのか必殺・一つの太刀について
その開眼とか、研鑽の風景が語られる小説でありました
これもなかなかどうして、短編時代小説として
ステキすぎる出来であります
個人的にこれは高校生くらいに読ませて
練習がどんだけ大切かということを
こんこんと悟らせたい、そういった一遍でありました
もっとも、途中で夢遊病でもないが
神様と対決しだしたりするあたりは
修行のしすぎで頭がどうかしてしまったのではなかろうかと
現代人の考えで思わず、はらはらしたのですが
それはそれ、つらい修行をしたからこそ
幻覚ではなく、本当の神と刀を交えることとなったのであります
と、茶化すのはさておき
実際のところ、一番殺陣がステキな小説で
一つの太刀の凄さというべきか、相手方が
刀とはまったく異なる武器を使うところでの
異種戦で面白すぎた
悟りを開いたというか、開眼した剣豪の強さが
ひしひしとそこに語られたのでありますが
なかなかどうして興味深いものでありました
足の裏で間合いを探るあたりとか、描写も惚れ惚れであります

で、宮本武蔵と佐々木小次郎については
基本的にできるだけ史実に基づこうとしているのか
吉川版を否定するために書かれた
そういった小説家同士の意地が見える作品であります
時代小説というよりも、伝記みたいなものを
読んだのかしらね
そういう感想になりますが、最近ではメジャーになってる
武蔵と小次郎の年齢差についてや
武蔵の理論的な思考とかにこつこつと突撃している
そういう具合で、二人の剣豪が謎に包まれている
それを説明してもらったそんな具合でありました

二天一流が、二刀をもって修行をなして
実践は一刀であるというお話はなるほどでありました
個人的にチャンバラが好きな自分としては
講談師さながらの、二刀でざんばらりんと
敵を蹴散らす様が好きなのでありますが
そんなわけねぇだろうと、静かに否定される
そういう小説でありました、夢がない(ぉぃ
ともあれ、史実に基づきすぎると時代小説は面白くなくなる
そういうお話もつれり書かれておりまして
なかなか興味深いものでありました
そして、謎が多すぎて困る佐々木小次郎についても
初めて聞くようなお話が書かれておりまして
物干し竿を持つようになった見解やら
その生き様について、吉川版の
いわゆる敵役としての小次郎ではなく一人の剣豪として語られるのは
新鮮でもないですが、ステキでありましたとさ

そして最終、柳生のお話
こちらも史実というか資料を洗いなおしている
そういう内容に見えましたが
柳生大好きのわたくしとしては大変楽しめました
ステキ、やっぱり剣豪は柳生に凝縮されるべきよ
上泉を先に読んでいるからこそ
この柳生の話が生きてくる、そういう具合でありましたが
新陰流の起こりから、柳生新陰流の開眼
そして無刀への悟りがステキで、個人的に無刀大好きな身分として
この上なくし合わせな小説でありましたとさ
最終的に活人剣への開眼は無刀より出でるあたり
ステキです、無刀かっこいいなぁ

と、まぁそんなところで
さくさくっと実は数週間前に読み終えていたりしたのでありますが
なかなかどうして、娯楽として堪能できたので
ここに記しておくのでありましたとさ
総括しますと
上泉伊勢守が最強

そういうお話でありました