CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

魍魎の匣 京極夏彦

2006-09-20 08:39:10 | 読書感想文とか読み物レビウー
魍魎の匣  by京極夏彦

読みました
超有名作家の代表作であります
以前に巷説百話を読んで、もうひとつぴんとこなかったのですが
最高傑作とうわさ高い魍魎の匣を読んだのであります
もう、何が楽しみって、ほら
「みつしり」と「ほう」でございます

さて、あまりにも期待しすぎてというか
散文的な情報しか持ってなかったものですから
とりあえず文庫を見ただけで面食らったのでありますが
なんだこのレンガ、本じゃねぇだろおい
その分厚さに、鈍器を思わせるステキな仕様
読み終わって考えてみるとこの本の形までもが
匣だったのではなかろうかなどと
頭おかしいことこの上ない読後感であります

ともあれ、ミステリーでありSF(少し不思議)であり
読み応えのあった小説です
一思いに読んだのはよいですが、そのあとの
すげぇ疲れっぷりはあまりおすすめできないところ
でありました、さすがレンガ、そして鈍器だわ
頭が鈍い感じがする

で、内容はといいますと
まず、どこで仕入れたわけでもないのですが
わたくし、このお話がてっきり時代劇風というか
江戸以前、室町あたりのお話とか勝手に思って
妖怪が出てくる怪談小説だと思っていたのですが
全然違う
舞台は戦後まもないくらいの昭和中期、でよいのか
ともかくそれくらいのばたばたとした時分
そこで、どうやらお馴染みらしいキャラクタたちが
不可解な事件の真相に迫っていくという
ミステリーな具合でありました

あまりつまんでしまうとネタバレこのうえないことになるので
詳しくは書けないのでありますが、とりあえず期待とのギャップを
まず、「みつしり」と「ほう」について
わたくし、怪談小説だと思ってたので
この言語というか単語が、一番怖いところでぽっと出てきて
読んでいる途中で「きゃーーーっ」などと
少女のような悲鳴をあげられると楽しみにしていたのですが
驚愕の事実、ほとんど出てこねぇ(ぉぃ

もっとも、その独特というか
単語から知れ渡る不気味さと、えもいわれぬ妖艶さは
十分伝わる次第だったのでありますが
猟奇的な部分も含みつつ、ステキな内容でありました
猟奇部分を触れた感じで克明に描くという小説は
見ていて、なんかどす重たいものを感じさせますが
それはそれ、久保先生という人となりが
なんともはや、ステキでありました、ある種ステキ、とてもステキ

ミステリーなので細切れになった
様々なヒントが最後に全て集まって解明という形ですが
意外と序盤からヒントが多くて
さくさくと、ああやっぱり、などと思えたりするのも
読みやすいところであります
ぐいぐいとひきこまれて、その猟奇事件に
うおおお、などと唸っているとなかなか
物語の前後関係がわからなくなって大変ですが
よくよく考えると、時系列にしっかり並べられると
あの事件の真相はとてもよくわかるのでありました
真相というでもないか

ともあれ、読み応えと面白さは抜群で
途中、京極堂と呼ばれる中前寺氏の話がなんというか
しつこい、うっとうしい
などと思ってしまったのですが
あの人はペテンめいたことを、大げさにやってると楽しいのに
説教くさくなるとダメだわなんて
勝手なことを読み手として感じたのです
キャラクタはそれぞれよかったんだが
やっぱり、ヒロインというべきか匣の娘と久保先生
そして、雨宮氏のことが
忘れられない思い出となりそうなのでありました

事件の発端というか
最初の事件と呼ばれているものについて
わたしにはわかりませんが
きっと、年頃の娘さんにはとてもわかりやすいんであろう
あの意識感覚がはかない感じで楽しかった
その後の悲惨な状況もかんがみると
ますますその部分が美しくて
そして、匣の娘との関係が抜群であります

最終的に
鈴のような声で「ほう」とつぶやくのでありますが
ここが、怖いではなく、ただただ
ああ、とてもうらやましいと思える
そういう結末で、わたくしも大変満足したのでありました
ステキ、みつしりだわ、時代わ

と、そんな散文めいた感想文であります
秀作です