「月曜日に乾杯」などの名作を出しているオタール・イオセリアーニ監督が、
旧ソ連の一共和国だったグルジアに生まれ、1979年からパリを拠点に活
躍してきた自分自身の体験を基に手がけた半自伝的作品です。
旧ソ連時代のグルジアで、牧歌的な少年時代を過ごして成人したニコは、
映画監督になったものの自分の作品が軒並みに当局によって上映禁止と
なり、このような思想統一や検閲のもとでは自由な映画作りが出来ない
と、表現の自由を求めてフランスに移り住みます。
しかしフランスでは映画の商業性を求めるプロデュサーらと対立するなど、
新たな困難が連続し、なかなか思うように映画製作が出来ない苦難の日々
が・・・。
主役のニコを演じるのは、監督の孫であるダト・タリエラシュヴィリですが、
飄々としたところはいいのですが、この主人公の波乱に満ちた道のりを描
くという役柄は重過ぎと思います。
演出は特に技巧的ではなく、むしろ素朴と言える手法です。
子供時代は結構ユーモアもあって面白いのですが、大人になってからが
いただけません。
主人公が映画監督としてのセンスを見せる描写に欠け、こんな才能がこ
のままだと惜しいと観客に思わしめないのが致命的です。
さらに一人よがりの描写が多く、観客がいることを忘れた演出で私は全く
共感出来ませんでした。
ラストで謎の人魚と一緒に、水中深く消えて行く主人公の描写は、すっと
ぼけたユーモアで面白いと拍手を贈る人もいるでしょう。
でも私はニガい思いで見送りました。
(6/25 KBCシネマ 3日目 12:05の回 10人)
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