

格差社会の現実を描いた福澤徹三の同名小説を、佐々部清監督が映画化した
作品です。
どこにでもいるごく普通の大学生だった修(中村蒼)は、父親からの学費が未払
になったことにより大学を除籍され、更に父親が借金を抱えて失踪したため、ア
パートも追い出されてしまいます。
修はネットカフェに泊まりながら日払いのバイトで食いつなぎますが、だまされて
入ったホストクラブでホストとして働くことに・・・。
ある日、客として入ってきた質素な看護婦の茜(大塚千弘)と出会い、二人は徐
々に惹かれあいますが、自分に入れ込んで大金をつぎ込む茜に修は戸惑いを
覚え始めるのでした。
そんなことでホストの裏側を見てしまった修はその世界から抜け出すことができ
ず、遂にはホームレスにまで転落してしまい・・・。
主人公を演じる中村蒼は福岡出身の若手俳優で、中々荷の重い役ですが最後
まで結構やり切った感じです。
第一にこの原作を佐々部監督が選んだことは、問題点を見越されていてさすが
と思います。でも内容的に文章の世界だったら想像半分で理解出来る話だと
しても、これが映像となると余程上手くアレンジしないと、非現実な表現になって
しまう恐れがあるのですが、その危惧はやはりというのが率直な私の感想です。
監督には怒られるかも知れませんが、週刊誌記事の切り抜きの羅列のような
挿話が多く、真実味と言うか現実味が希薄になっています。
大塚千弘の抜擢は、本人も一生懸命やってはいるのですが、茜役は荷が重か
ったようです。
それに佐々部監督は濡れ場シーンはあまり得意ではないようですが、その類
を思い切って外し、修はもう少し常識があるにもかかわらず、どこまで落ちても
止らない境遇になることを、もっと視点を加えて描いていれば、より観客動員の
利く問題作になっただろうにと残念に思う次第です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます