2010年の第144回芥川賞を受賞した西村賢太の同名小説を「マイ・バック・ページ」
「天然コケっッコー」の山下敦弘監督が映画化しました。
原作者の自伝と思われる部分が多いのですが、昭和の終わりの酒と風俗におぼ
れる日雇い労働者の青年を通して、孤独や窮乏、生きる力について描いて行くも
ので、色々な意味で楽しみにしていた作品でした。
中卒で19歳の北村貫多(森山未来)は、日当5500円の日雇い労働者でその日暮
らしの生活を続けています。
生来の素行の悪さに加えて、性犯罪者だった父を持つ引け目から、友人も恋人も
いない貫多でしたが、あるとき専門学校生の日下部正二(高良健吾)や、古本屋で
働く桜井康子(前田敦子)との出会いによって少しづつ変化して行くのでした・・・。
この映画で一番の収穫は、バブル真っ只中の80年代に、学歴がないためあらゆる
事をひねくれた目で見て行動して行く主人公役の森山未来で、前作の「モテギ」と
は打って変わった役柄ですが好演しています。
山下監督は肝心の脚本がいま一つ上手く纏まっていないこともあって、持てる力
を発揮していない感です。
完成した作品を巡って原作者と監督の軋轢があると仄聞しますが、この映画に描
かれた主人公は世間から完全に嫌われ、更生の余地など全くないと思われる主人
公になっています。
原作者はそんな人生から這い上がって文筆の道に入るのですから、作品の画面上
でそれを予知させる描写が欲しかったのだろうと推察します。この映画では救いが
ないし後味も良くありません。映画を見た私が不満を持った箇所もそれでした。
前田敦子の役は原作には登場しませんが、可もなし不可もなしでしょう。
監督もキャストも今年有数の問題作になる筈と思って力投したでしょうが、上手く表
現出来なかったと思いやる部分が多く、とても残念です。
(7/20 T・ジョイ博多 7日目 14:00の回 16人)
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