
大映時代に新作品の九州キャンペーンは色々やりましたが、中でも忘れられないのは、昭和44年(1969)の「人斬り」で、フジテレビと勝プロが共同で製作し、大映が配給する形を取った作品です。
幕末時代に動乱の京都でその名を轟かせた土佐の剣士・岡田以蔵の半生を描いた作品で、勝新太郎が岡田以蔵を、武市瑞山・仲代達矢、坂本龍馬・石原裕次郎、それに以蔵と対局した人斬り新兵衛には三島由紀夫が出演しました。それに倍賞美津子・新條多久美・中谷昇・田中邦衛・萩本欽一・坂上二郎・辰巳柳太郎と多士済々、脚本・橋本忍、監督・五社英雄と豪華そのものでした。
この作品こそ九州で大がかりな記者会見をやろうと決めた私は、本社宣伝部と根気良く交渉して実現、他支社には行かず九州にやってきた顔ぶれは、五社監督・勝新太郎・仲代達矢・倍賞美津子・新條多久美に、なんと三島由紀夫先生までもが来てくださることになりました。
当時も楯の会などで話題の渦中にあった三島先生ですが、地元マスコミから三島先生に特別取材をしたいと申し入れが殺到、先生に相談したのですが「今回は映画の宣伝役に徹したいのでお断りして欲しい・・・」とのことでマスコミに納得して貰った経緯もありました。
記者会見で勝ちゃんのおしゃべりも面白かったけど、三島先生の話も含蓄があって興味深々でした。先生は映画の中で切腹して果てるという鮮烈な死の場面がありますが、この翌年にご自身が壮絶な死を遂げられることとなり、ただ豪華なキャンペーンだったという思い出以上に、それこそ強烈な印象を残したキャンペーンだったのです。

