本書は、3年ほど前にでた本。
森浩一さんという、ベテラン考古学者による本。
永年の研究成果を、新聞に連載したものを、新書にまとめた本。
とにかくその情熱に驚く。それこそ、戦前から考古学に興味を持ち、原書からスタートし、関連する地域を実際見て回る。
80歳を越えられているのに、自分のことを”ぼく”と呼ぶ。この感覚が、研究への情熱の秘訣なのか。
オープンな議論を好む方のようで、著名な考古学者のみならず、松本清張さんらとも交流があり、是々非々の議論をされている。
本書を読むと改めて感じるのは、対馬から始まる北部九州の重要性と(改めて言うまでもないが)、韓国とのつながり。
そして、実際に現場に行くことによる発見。銅矛を掲げる祭りなどもまだ残っているのだという。
それと、漢字の読み方の研究。感じは、古来の日本語への当て字だから、その読み方から研究を進めると、見落としていたことが、ふっと見つかることがある。
倭人伝の時代から、当時の簡体字があったということも初めて知った。漢字は、当時の人にとっても、難しかったのだ。ただ、それで、意味を取り違えることになっては、元も子もない。
これらを踏まえて、倭人伝を読むと、相当リアルに描かれていることがわかる。特に、北九州より、北の地域の説明。逆にいうと、その先は、伝聞による記述の可能性が高くなる。
本書には、倭人伝原文が掲載されているが、結構驚く。ずいぶん長いし、注目されている邪馬台国の場所を示す部分以外にも、ずいぶん読み解くヒントが隠されている。
その解釈の仕方についてのバリエーションも幅広いし、句読点の打ち方一つで、ずいぶん意味が変わってくることも、本書は、教えてくれる。
森さんの渾身の一冊。もう一回読み直したい。