八ヶ岳山麓の山荘用地ったって、標高はピンキリ。
標高は600mくらいから2,000m級まである。
我が山荘のある原村の北側には蓼科地区(茅野市)が広がるが、その中にはいくつか特に標高が高い別荘地がある。
原村(長野県諏訪郡)の我が山荘は、標高1,600mの土地に建っている。
この土地を買ったのは21年前の1998年。
山荘が建ったのがちょうど20年前の1999年。
当時「そんな高いところは止めろ。寒すぎる!」と多くの方に言われた。
しかし、どうせ山麓では多くの別荘オーナーが晩秋からGW近くまで薪ストーブを使う。
そして屋外がどんなに寒くても、最近の建物で薪ストーブを使えば屋内の気温をハワイを超える温かさにすることは簡単(笑)で、だったら冬の寒さなんてあまり気にしなくていい。
寒冷期に火を使い屋内を温めるのは古代からの自然な知恵でもある。
しかし暑い時期に屋内の気温を上昇させておいて、それを冷房装置で無理やり低下させるのはかなり不自然な行為であるように私には思え、避暑地の山荘ではできればそれは避けたいと思った。
そして20年前の当時ですら、すでに地球温暖化の傾向は鮮明だった。
そうであれば、自宅から比較的近くて標高がかなり高い土地に、涼しい設計を施した山荘を持ちたいと、私は思ったのだ。
そりゃそうだろう。20年前の当時ですら「異常気象」なんて言われて、暑さの度合いが変わって来ていたし、環境の悪化傾向を考慮すれば、当時の20年後(つまり現在)はもっと暑くなるはずだった。
そして本当にそうなった。
20年前、涼しい設計にした我が山荘では、真夏でも全部の窓を開けっぱなしではいられなかった。そんなことしたら寒くて風邪をひきそうだった。
ところが今は窓全開でも平気だ。
【ナラの若葉】
他人の多くは自分の過去の経験でしかものを語らない。
しかし自分の家の暮らしぶりは築後から始まる数十年間の自分の未来のことだ。他人の言うことはあまり信じない方がいい。
寒冷地で自宅あるいは別荘としての通年利用を考えるなら、屋内の気温を一定に保つため、別のことも考慮しないといけない。
しかし避暑目的として八ヶ岳山麓の山荘を検討し、温暖化が激しいこの時代でも夏に冷房装置なんて使いたくないと思うなら、これからは以下の2点が重要だと思う。
(1)屋外の気温を決定する標高と環境
(2)屋内の気温を異様に上昇させないための建物の設計
【タラの芽】
まず(1)、標高と環境について。
例えばの話、原村と言ったって東西に長く、標高は900mくらいから始まり、私の山荘があるのが1,600m、そしてそこを通り越したら東は2,800m超の阿弥陀岳まである。
気温は原村のどこにいるかで、かなり異なるのだ。
しかし天気予報でただひとこと「原村」と言う時は、その中心部である払沢地区のことを指し、そこは標高1,000m程度である。
************************************************
今回の山荘滞在中のあの日、東京ではアベちゃんのおもてなし外交が展開されていた。
トランプ君とアベちゃんが一緒にゴルフして、相撲を観戦し、炉端焼きを食べたあの日である。
日米同盟の結束の強さとやらを見せつけようと、朝から二人は千葉県でゴルフをしたら、なぜか日本中の気温が急上昇。
日本各地で、特に北海道で気温が上昇し、5月というのにあちこちで猛暑日(気温が摂氏35度以上)を記録した。やはり異常だ。
私の自宅がある鎌倉は海辺の街なので、暑い日の最高気温は、たいてい都内や関東内陸部より低い。
この日は鎌倉の最高気温と原村中心部の最高気温がほとんど変わらなかった。びっくりだ。
鎌倉と原村では標高が大きく異なるが、長野県はこの日暑かったのだ。原村中心部でも30度前後の最高気温。
原村の中心部は建物と畑ばかりなので、標高1,000mと言っても、実は結構暑い。
原村を知らない人は、試しにそこへ真夏に行ってみればいい。
そこから標高で600m程度上がった我が山荘あたりは、その分の標高の違い、そして森の中という環境から、その日の明け方の最低気温がこれくらいだった。
また午後1時の最高気温もこれくらいで済んだ。
しかしこれが真夏になると、原村中心部でも猛暑日に近い最高気温も時々記録するわけだ。
だからこの山荘のあたりだって、屋外の最高気温は25度と30度の間のどこかまで上昇することになる。
もはや環境的には冷房が要らないギリギリだ。
ということで、山荘を建てる土地の標高と環境は、そこの屋外の気温を決定してしまう。
まずはその選定が重要だ。涼しいところがお好きなら、それに必要な場所を選定しましょう。
****************************************
次に(2)の屋内の気温を異常に上げないための設計について書く。
じゃあ、標高1,600mなんてところに山荘を建てないといけないか?というと、そうではないのである。
標高がすべてを決定するわけではない。周囲に森があるかどうか、つまり環境で屋外の気温はずいぶん違う。
さらに屋外が暑いからと言って、屋内も暑くなるわけではない。建物の設計上、採光と通風を考えれば、屋外気温より屋内気温はかなり低くなるからだ。
だから土地の標高は低いが、建物内は涼しいという状況は可能だ。
しかし多くの建物の設計が、屋外の日影の気温よりも屋内の気温が高くなるようなつくりになっているように思われる。
1.天気予報で「原村の最高気温は30度」なんていう時の気温は、もちろん原村中心部の「日影で」測定された気温だ。
2.同じ原村中心部でも、照り返しが厳しくコンクリートに囲まれたところの実際の気温はもっと高い。
山荘の設計によっては、屋内の気温が、1.を超えて 2.前後になることも十分ありうる。
涼しい設計のポイントは、この2点に集約できるだろう。
(a) 室内にあまり直接的な光が入らないようにすること。
(b) 雨が降っても窓を開けて通風を確保できるようなつくりにすること。
この2点を厳守すれば、涼しい山荘が手に入る。
これは建物の基本で、日本の昔の建物のルールでもある(ところがガラスを使い密閉度が高いアルミサッシが誕生して、それは完全に変わってしまった)。
(a)は簡単で、1.開口部の大きさと、2.開口部の方角と、3.その上にどの程度の軒や庇があるかという3点で、おおよそが決まる。
(b)も簡単で、(a)から2.を取り除けばいい。
アルミサッシがあるからと言って、屋外が暑いのにこの2点が守らなければ屋内も暑くなり、最も暑い時間帯に屋内に直接大量の日光が射しこみ、雨が降れば窓を閉めなければならず、通風もなにもなくなる。
したがってエアコンによる空気の冷却が必要になる。
嫌でしょ?
設計上のポイントとして、昔から日本の家屋がそうであったように、多くの窓の上になるべく軒や庇が出るように設計することは重要だ。
これにより、窓を通した直射日光の屋内への侵入の調整が可能になる。
どんな大きな開口部が真南に向いて設置されていても、その直上に巨大な軒があれば、直射日光は屋内に入らない。
またちゃんとした軒や庇が窓のすぐ上にあれば、雨天時でも窓を開放したまま、通風を確保することも可能になる。
この軒(あるいは庇)と開口部の大きさや位置の関係をつかえば、採光の調整はどんなにでも、好きに出来る。
特に上下に動かす方式の窓は上半分だけを開けることも可能で便利だ。
その上に軒や庇があれば、それが大きな窓であっても上半分だけを開けておくことが可能で、通風を確保しながら雨天時の雨の吹込みも避けられる。
一方気温も湿度も高い雨天時に、窓を全部閉めなきゃいけない設計の建物は、冷房を多用せざるを得ない。
軒や庇のない家を設計しそこにやたら大きな開口部を設けるのは、現代の密閉度が高いアルミサッシが出来てから、初めて可能になったことだ。
そして温暖化傾向が厳しくなる中、屋内に直射日光をますます熱心に取り入れ、屋内の気温を上昇させている。
原村でも「昼間暑くて昼寝もできない」と、エアコンを導入する別荘が増えていると聞く。
よくわからんなぁ・・・と私は思うのでした。
【つづく】
標高は600mくらいから2,000m級まである。
我が山荘のある原村の北側には蓼科地区(茅野市)が広がるが、その中にはいくつか特に標高が高い別荘地がある。
原村(長野県諏訪郡)の我が山荘は、標高1,600mの土地に建っている。
この土地を買ったのは21年前の1998年。
山荘が建ったのがちょうど20年前の1999年。
当時「そんな高いところは止めろ。寒すぎる!」と多くの方に言われた。
しかし、どうせ山麓では多くの別荘オーナーが晩秋からGW近くまで薪ストーブを使う。
そして屋外がどんなに寒くても、最近の建物で薪ストーブを使えば屋内の気温をハワイを超える温かさにすることは簡単(笑)で、だったら冬の寒さなんてあまり気にしなくていい。
寒冷期に火を使い屋内を温めるのは古代からの自然な知恵でもある。
しかし暑い時期に屋内の気温を上昇させておいて、それを冷房装置で無理やり低下させるのはかなり不自然な行為であるように私には思え、避暑地の山荘ではできればそれは避けたいと思った。
そして20年前の当時ですら、すでに地球温暖化の傾向は鮮明だった。
そうであれば、自宅から比較的近くて標高がかなり高い土地に、涼しい設計を施した山荘を持ちたいと、私は思ったのだ。
そりゃそうだろう。20年前の当時ですら「異常気象」なんて言われて、暑さの度合いが変わって来ていたし、環境の悪化傾向を考慮すれば、当時の20年後(つまり現在)はもっと暑くなるはずだった。
そして本当にそうなった。
20年前、涼しい設計にした我が山荘では、真夏でも全部の窓を開けっぱなしではいられなかった。そんなことしたら寒くて風邪をひきそうだった。
ところが今は窓全開でも平気だ。
【ナラの若葉】
他人の多くは自分の過去の経験でしかものを語らない。
しかし自分の家の暮らしぶりは築後から始まる数十年間の自分の未来のことだ。他人の言うことはあまり信じない方がいい。
寒冷地で自宅あるいは別荘としての通年利用を考えるなら、屋内の気温を一定に保つため、別のことも考慮しないといけない。
しかし避暑目的として八ヶ岳山麓の山荘を検討し、温暖化が激しいこの時代でも夏に冷房装置なんて使いたくないと思うなら、これからは以下の2点が重要だと思う。
(1)屋外の気温を決定する標高と環境
(2)屋内の気温を異様に上昇させないための建物の設計
【タラの芽】
まず(1)、標高と環境について。
例えばの話、原村と言ったって東西に長く、標高は900mくらいから始まり、私の山荘があるのが1,600m、そしてそこを通り越したら東は2,800m超の阿弥陀岳まである。
気温は原村のどこにいるかで、かなり異なるのだ。
しかし天気予報でただひとこと「原村」と言う時は、その中心部である払沢地区のことを指し、そこは標高1,000m程度である。
************************************************
今回の山荘滞在中のあの日、東京ではアベちゃんのおもてなし外交が展開されていた。
トランプ君とアベちゃんが一緒にゴルフして、相撲を観戦し、炉端焼きを食べたあの日である。
日米同盟の結束の強さとやらを見せつけようと、朝から二人は千葉県でゴルフをしたら、なぜか日本中の気温が急上昇。
日本各地で、特に北海道で気温が上昇し、5月というのにあちこちで猛暑日(気温が摂氏35度以上)を記録した。やはり異常だ。
私の自宅がある鎌倉は海辺の街なので、暑い日の最高気温は、たいてい都内や関東内陸部より低い。
この日は鎌倉の最高気温と原村中心部の最高気温がほとんど変わらなかった。びっくりだ。
鎌倉と原村では標高が大きく異なるが、長野県はこの日暑かったのだ。原村中心部でも30度前後の最高気温。
原村の中心部は建物と畑ばかりなので、標高1,000mと言っても、実は結構暑い。
原村を知らない人は、試しにそこへ真夏に行ってみればいい。
そこから標高で600m程度上がった我が山荘あたりは、その分の標高の違い、そして森の中という環境から、その日の明け方の最低気温がこれくらいだった。
また午後1時の最高気温もこれくらいで済んだ。
しかしこれが真夏になると、原村中心部でも猛暑日に近い最高気温も時々記録するわけだ。
だからこの山荘のあたりだって、屋外の最高気温は25度と30度の間のどこかまで上昇することになる。
もはや環境的には冷房が要らないギリギリだ。
ということで、山荘を建てる土地の標高と環境は、そこの屋外の気温を決定してしまう。
まずはその選定が重要だ。涼しいところがお好きなら、それに必要な場所を選定しましょう。
****************************************
次に(2)の屋内の気温を異常に上げないための設計について書く。
じゃあ、標高1,600mなんてところに山荘を建てないといけないか?というと、そうではないのである。
標高がすべてを決定するわけではない。周囲に森があるかどうか、つまり環境で屋外の気温はずいぶん違う。
さらに屋外が暑いからと言って、屋内も暑くなるわけではない。建物の設計上、採光と通風を考えれば、屋外気温より屋内気温はかなり低くなるからだ。
だから土地の標高は低いが、建物内は涼しいという状況は可能だ。
しかし多くの建物の設計が、屋外の日影の気温よりも屋内の気温が高くなるようなつくりになっているように思われる。
1.天気予報で「原村の最高気温は30度」なんていう時の気温は、もちろん原村中心部の「日影で」測定された気温だ。
2.同じ原村中心部でも、照り返しが厳しくコンクリートに囲まれたところの実際の気温はもっと高い。
山荘の設計によっては、屋内の気温が、1.を超えて 2.前後になることも十分ありうる。
涼しい設計のポイントは、この2点に集約できるだろう。
(a) 室内にあまり直接的な光が入らないようにすること。
(b) 雨が降っても窓を開けて通風を確保できるようなつくりにすること。
この2点を厳守すれば、涼しい山荘が手に入る。
これは建物の基本で、日本の昔の建物のルールでもある(ところがガラスを使い密閉度が高いアルミサッシが誕生して、それは完全に変わってしまった)。
(a)は簡単で、1.開口部の大きさと、2.開口部の方角と、3.その上にどの程度の軒や庇があるかという3点で、おおよそが決まる。
(b)も簡単で、(a)から2.を取り除けばいい。
アルミサッシがあるからと言って、屋外が暑いのにこの2点が守らなければ屋内も暑くなり、最も暑い時間帯に屋内に直接大量の日光が射しこみ、雨が降れば窓を閉めなければならず、通風もなにもなくなる。
したがってエアコンによる空気の冷却が必要になる。
嫌でしょ?
設計上のポイントとして、昔から日本の家屋がそうであったように、多くの窓の上になるべく軒や庇が出るように設計することは重要だ。
これにより、窓を通した直射日光の屋内への侵入の調整が可能になる。
どんな大きな開口部が真南に向いて設置されていても、その直上に巨大な軒があれば、直射日光は屋内に入らない。
またちゃんとした軒や庇が窓のすぐ上にあれば、雨天時でも窓を開放したまま、通風を確保することも可能になる。
この軒(あるいは庇)と開口部の大きさや位置の関係をつかえば、採光の調整はどんなにでも、好きに出来る。
特に上下に動かす方式の窓は上半分だけを開けることも可能で便利だ。
その上に軒や庇があれば、それが大きな窓であっても上半分だけを開けておくことが可能で、通風を確保しながら雨天時の雨の吹込みも避けられる。
一方気温も湿度も高い雨天時に、窓を全部閉めなきゃいけない設計の建物は、冷房を多用せざるを得ない。
軒や庇のない家を設計しそこにやたら大きな開口部を設けるのは、現代の密閉度が高いアルミサッシが出来てから、初めて可能になったことだ。
そして温暖化傾向が厳しくなる中、屋内に直射日光をますます熱心に取り入れ、屋内の気温を上昇させている。
原村でも「昼間暑くて昼寝もできない」と、エアコンを導入する別荘が増えていると聞く。
よくわからんなぁ・・・と私は思うのでした。
【つづく】