前回、芝生を刈って化成肥料をやったことを書いた。どうも化成肥料をやりすぎ、かつ最後の水遣りの時に撒いた水の量が少なかったらしい。芝のあちこちが黄色くなって来てしまった(上の画像)。いわゆる「肥料焼け」である。芝生は難しい。私には芝生に関して先輩がいる。M氏である。M氏は芝生にかけてはかなりの経験の持ち主で、私はM氏から芝生についてのノウハウを時々頂戴している。M夫妻は庭いじりが大好きらしい。M氏は芝生で、奥様はバラが好きと聞く。なんだか英国貴族のようだ。
M氏の生家は日本酒造りを家業とする名家である。私にしてみれば、なんとも羨ましい環境にお生まれになり、お育ちになったわけだ。毎日飲んだくれていようと思えば飲んだくれていられる家系なのである。ところが心がけが違うM氏は学校を卒業するなりお酒とは無関係な仕事に就き、今では英国系企業の日本代表を務めておられる。私と同業であり、私はいろいろと仕事上お世話になっている。
週末になるとM氏は横浜のご自宅で庭仕事に精を出すだけでなく、しばしば御殿場方面へゴルフにお出かけになる。今年はポーランドへも遠征しようとお考えのようだ。やはりやることが違う。ポーランドという国に、普通の日本人はなかなか行かない。まだお若いのに「庭で虫が動くのをじぃ~っと見ながら、気づいたら自分が死んでたなんて最高だなぁ」とか、常人には訳のわからないことをおっしゃる。自分の生活スタイルを確立し、優雅なることやはり貴族的である。
優雅なM氏のもうひとつの優雅な趣味は油絵である。このあたり英国の貴族であり、首相も務めたSir Winston S. Churchillと同じである。ご自分と通じるものを感じられたのか、M氏はChurchillの生家である屋敷を訪問し、Churchillの著書Painting as a Pastimeの古書を買い求められた。M氏は何度も私にその古書のことをお話しになるので、私も対抗心を燃やし、ついに買うことにした。英国の古書店に注文したのである(上の画像)。しかし優雅なM氏の生活に対する私の対抗心はそれでは収まらなかった。生活のほんの一部分でM氏に追いついたに過ぎないからだ。
物事を深く考えることではM氏にそれほど劣っているわけではないと勝手に自負している私が考えたのは、この本は所詮素人画家のChurchill自身が書いたPaintingに関する薄っぺらい本であり、それではこの歴史上の大人物の絵と人格を理解するには不十分であるということだ。
自分の性格を自分で理解出来ない人は多い。それと同様Churchillの絵及び人格を理解するにはChurchill自身の著書を読むだけでなく、彼の絵を数多く見なければならないし、彼を客観的に理解する材料が必要だ。とまあ、そうした深遠な計略のもとに私が追加的に同じ古書店に注文した本がDavid Coombs、Minnie Churchill著、Sir Winston Churchill: His Life and His Paintings(上の画像)である。Churchillの描いた油彩画が網羅され、様々な解説が付く分厚い豪華本である。古書なら安いし、休日にちらちら眺めるにはちょうど良いものである。